第35話 マウイ島1

 10月17日

 マウイ島に向けて出発。小型飛行機に乗るのは初めてだ。遊覧飛行のような気分である。空から見下ろすワイキキビーチ、ダイヤモンドヘッドは美しい。

 程なく、カフルイ空港に到着。空港の観光案内所で嘘情報を教えられ、カフルイの町に来てみたがレンタ・バイシクルはなく、やむなくキヘイに移動したが、当てにしていたホテル迄はかなり距離があった。


 キヘイの町で安いホテルを探してみたが、軒並み素泊まり40~50ドルでバックパッカーには高過ぎる。カナダでもアメリカ本土でも20ドル以上の宿には殆ど宿泊したことがない。贅沢は敵である。

 そこで、一度やってみたいと思っていたので良い機会であると捉え、野宿をする事にした。カナダでキャンプした時はテントがあったが、今回は寝袋のみであり真の野宿である。幸い、ビーチのすぐ近くに公園があり、園内の芝の上で横になる。星、月、椰子の樹を見上げながら、且つ波の音を子守歌に、なかなかの南洋の島旅気分である。バックパックは念のため真横に置いて抱えるようにして…。あ~、遠くで狼の遠吠えが聞こえる…ような(たぶん、ただの野犬)。


 朝方4時頃、目が覚めたら空模様が怪しくなってきていた。星も月も既にお隠れしている。東屋があったのでそちらに移動したら先客が居るではないか。中央が広いテ-ブルになっていたので、その上に上がり先客から離れて寝所を確保した。傍から見ると乞食の2人連れに見えるだろうが、まあいいや。実は、1か月前に、プリンスエドワード島の宿にヒゲソリを置き忘れてからずっと、ヒゲは伸ばしっぱなしである。

 先客は周りが白んできたら静かに去って行った。


 7時頃起き、朝食後レンタバイクを借りてハナに行く事にした。ホノルルで入手した日本語の広報紙にはライセンス不要と書かれていたので、レンタルショップを訪ねた。念の為確認したが、ショップのおやじさんは首を縦に振りながらも何となく不審そうな表情をしていたのが引っかかる。


 ハナまでのドライブは快適であった。適当なカーブやアップダウンがあり、なかなか心地良い。この頃は車にもバイクにも無知で、下り坂はニュートラルが燃費効率が良いと考え、そのように走行してたら、ハナの手前でポリスの白バイに追跡されて停車させられた。どうやら、”原付のライセンス不要” はオアフ島だけか、少々以前の事のようだ。


 ポリスオフィスに連行され、国際バイクライセンス不所持で26ドルの罰金を取られた。日本円で5100円ぐらいだが、私の場合は6500円ぐらいに相当する。しかしまあ、常夏の島の住人らしく、数名の警察官はみんな陽気な連中だった。


 応対していた一人が、ナハに何しに来たのかなどとふざけた事を訊くので、

”I came here to see beautiful Sights. I didn't come here to see your Face." 

と言ったら、陽気なポリさん、大声で笑っていた。

 まあ、仕事熱心な警察官であり、如何にもアメリカ人らしい陽気な男で好感が持てた。


 やがて、警察官から連絡を受けたレンタルショップの店員がやって来た。私の顔を見るなり、いきなり笑顔で握手を求めてきたのには困惑した。先ずは私への謝罪が先だと思うのだが…。彼はバイクを引き取ってさっさと帰って行った。


 陽気なポリさん、私に

「もう帰って良いがこれからどうする?」

 そう訊かれたが、思わぬ展開だが罰金払ってすぐ帰る訳にはいかない。そこで急遽、

「一泊して明日帰るから、アンタの家に泊めてくれんか?」

と冗談で言ったところ、笑いながら

「それはできないが近くに親切な日本人がコテージを持っているので紹介する」

と言われた。

 何だか又、面白くなりそうな予感がしてきた。


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