狭山丘陵のアケボノゾウ 🐘

上月くるを

狭山丘陵のアケボノゾウ 🐘





 ♫ ゾウさん ゾウさん お鼻が 長いのね~

   そうよ しまい場所に 困るのよ~ (笑)




 いまから150万年ほど前、まだ縄文人も現われていない、大むかしのことです。

 そんな童謡がうたわれたかどうかはともかく(笑)アケボノゾウが実在しました。


 少なくとも南北朝時代には「武蔵河越茶」栽培の記録がのこる狭山市のあたりに。

 地味ゆたかな台地に人が住み着くはるか前、海岸が間近に迫っていた時代に……。


 アケボノゾウは大陸のコウガゾウとほぼ同時期のミエゾウの小型化と言われる日本固有種のゾウで、関東地方では入間市や昭島市でも化石が発見されているそうです。

 

 小柄で牙が長い特徴をもつアケボノゾウはメタセコイア(アケボノスギ 落葉樹で秋に結実)の森に住み、植物の草や根、木の葉、種子、果実などを食べていました。

 

 


      🌅




 ねえ、かあさん、見てみて~、海に沈む夕日がほら、あんなに真っ赤に大きいよ。

 ほんとね~、まるで海獣に引っ張られているみたいに、ぐんぐん沈んでいくわね。


 大丈夫かな、あんなに引っ張られちゃって、あしたの朝、ちゃんと昇ってくれる?

 ふふふふ、心配ないわよ、ぼうや、お日さまは必ず東の空に昇ってくださるわよ。




      🌳




 あ、とうさんだ! お帰りなさい、美味しい木の実、いっぱい採って来てくれた?

 おお、ぼうず、お利口にしていたか? 団栗や、椎や栃の実がたくさんあったぞ。


 やった~! 今夜はごちそうだね!!(^^♪

 お腹がポンポンにふくれちまうぞ~。('◇')


 じゃあみんなで夕日に感謝しましょうか、神さま、きょうも一日ありがとうって。

 美味しいものをどっさりくださる、気前のいい神さまにサンキューだね。(^_-)-☆


 ぼうず、牙のあいだに鼻を入れられなかったら、外へ出しておいてもいいんだぞ。

 うん、分かった~! ぼうも大人になったら、きっと上手にしまいこめるよね~。




      🌠




 それから幾星霜を経て、いまはおもに人類が武蔵野に住まわせてもらっています。

 そのことを忘れないよう、わたしたち、アケボノ人と自称してもいいかもね。😉

 




※参考文献

青木俊直「アトム子ちゃん 武蔵野を行く」(『武蔵野樹林』VOL.2)

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