第59話 煽り1
「徹、あいつは、俺に相手をさせてくれ」
そうバレットがライ(仮)を指差していったが
「いや、そしたら、僕が残りの人全員と戦う必要ありますよね。無理ですよ。僕の攻撃出来る範囲は劇的に狭いので」
バレットさんの復讐心とかそういうのは、一度置いておいて、僕のスキルは一対一ではまあまあ強い、まあバグってるような状態だが、ただ、複数人敵がいると普通にタコ殴りで終わる。
「………ふう、それも、そうか。分かった。それで、バレットさん、多少、手荒な真似をしても大丈夫ですよね。」
まあ剣で斬ることはしなくてもぶん殴るぐらいはしないと止まらない。
「俺が許可する、大丈夫だ、獣人族は、タフだ。」
それは大丈夫なのだろうか?だって相手が強いってことでもあるし………
「さて、皆さん、私のためにそこの二人を殺してくださいね。」
そうライ(仮)がいうと一気に獣人族の人々が襲ってきた。真っすぐ突っ込んできた。あれ?なんか動きが単調な気がする。罠か?
僕は軽く避けて、一発殴ってみた。獣人族の人物は横に吹き飛んだ。
「………うん?」
「えっ?」
「あっ?」
なんか弱い。こんだけ人数がいてもなんか動きが単調な人が多くて、
「いや、弱すぎませんか?バレットさん」
「俺も、今驚いている。いつもの10分の1の強さだ。」
「………ああ、もうやっぱり私が動かしたら大したことが出来ませんね。仕方ないですね、私が戦いましょう。ああ、もう邪魔だからみんな寝ていてください。」
そうライ(仮)がいうと一斉に獣人族が倒れた。
「バレットさん、正々堂々と2対1で戦いましょう。」
「…………分かった。行くぞ。徹。」
そうバレットが叫んだ。僕は剣を抜いた。聞きたいことがあるから殺しはしないが、軽くぶった切ってやりたいとは思う。
僕とバレットはタイミングを合わせて地面を蹴った。僕は相手の右から、バレットさんは相手の左から同時に剣を振るった。彼女は余裕で笑いながらそうつぶやいた。
「私の身体能力を1000倍に増幅。」
バレットさんの振るった剣が砕け散った。僕の剣は、僕のスキルのおかげで折れることなかったが、ああ、これはやばい。
「剣なんて、野蛮なものを麗しい乙女に振るわないでくださいよ。」
そして次の瞬間、ライは何かをした。何をしたかは分からない。見えないのだから。
気が付いたら木に叩きつけられていた。
「バレット」
そう、僕は地面を蹴ってライ(仮)に近づいた。
「あら、徹、後で相手してあげますからそんなに焦らなくてもいいですよ。」
僕の目には血まみれのバレットが見えた。単純な身体能力の高さというのは厄介である。恐らく目の前の敵は剣術を学んだ分けでもなければこれと言った武術をやっていたわけではないだろう、ただスキルで身体能力を跳ね上げているだけだ。気が付けば、今度は神殿に叩きつけられていた。
「強すぎでしょ。」
…………でもなんで最初からこれをしていない?今は、そこはどっちでもよい。早くしないとバレットが死ぬ。
バレットさんは既に血まみれで、二発で限界に近いのにもう一回殴られると多分、持たない。
「うんうん、この状態の攻撃を2回耐えるなんて厄介でしたよ。バレットさん。」
そうライは笑いながらバレットさんに近づいていった。僕は地面を蹴り叫びながら近づいた。
「ライさんが言うあの方っていうのはどのぐらい素晴らしい人なんですか?」
イチかバチかの賭けである。そんなことをしないとどうしようもないぐらいピンチに速攻でなっているのは問題だが、仕方ない。ライとかいう人は、誰かの為にこれをしているらしい。こう言うタイプの人は尊敬する人を聞かれると意気揚々と話し出すか、キレるかのどちらかな気がする。
「分かってますね。バレットさん、そうなんです、あの方は素晴らしいです。」
ライの攻撃は止まった。危なかった。ギリギリの賭けに勝った。
「どんな風に素晴らしいですか?」
僕は落ち着いた口調でそう尋ねた。時間を一秒でも長く稼げ、僕。どうにかして勝つ方法とか弱点を探せ。
「まず、あの方は美しいです。素晴らしく美しくて、私の理想の姿を体現したような姿なんです。バレットさん、あなたもお姿を見れば、分かりますよ。」
上機嫌でそう語っていた。全くどんな人物か分からないが、とりあえず、時間は稼げる。弱点も倒し方も分からないけど時間を稼ぐしかない。
「それは、是非一度お目にかけたいものですね。それで、どうしてこの里を支配しようと」
ふう、いつどこで急に攻撃を始めるか分からないので緊張しながら声をかけ続けた。
「それは、あの方に頼まれたんです。そのうち必要になるから、生贄になる人を残しながら、世界樹の近くの街を支配したいだけど、手伝ってくれるって?」
なるほど、全く分からない。ただ、なんかやばいってことは分かった。そして、この人をどうにかする方法も分からない。てか、名前を聞けば、あの方がどのかたか少しは分かるのでは
「それで、あの方のお名前は」
そう聞くと気が付けば、腹部を殴られていた。なんで?
「あの方は、あの方なんです。名前は教えて貰わえなくても、私に援軍として、謎の怪物を送ってくださいましたしだから、だから」
ああ、地雷踏んだよ。てか、あの人=委員長の可能性が出てきたけど、でも、思っている人物像と合わない気もする。まあ、僕にキレたなら、それはそれで好都合か。
「信用されてないんですね。ハハハハ。」
そう言ってとりあえず、笑っておいた。結局、いつもの煽り大作戦である。
「殺すぞ、徹。」
みんな煽り態勢なさすぎでしょ、まあ時間を稼ぐことができるから今は好都合か。
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