第38話 監獄3

外がしばらく騒がしくなってから、まあ、僕を監視する人がいなくなったから、外でなんかあったのだろう。

するとバレットさんが帰ってきた。


「おい、貴様、寺坂 徹。貴様と一緒にいたあのエルフは何がしたい?」

どうやら、ルナが近くに来ているっぽい、そして問題を起こして目立ってるらしい。まあ、なんかルナは脳筋っぽいからな、仕方ないな。


「まあ、僕を助けたいんじゃないですか?それで、何をしたんですか?」

ルナさんが何をしているのかは知らないが、まあ口調は呆れているというか、理解出来ないっぽいから、なんか直接的な被害はないのだろう。


「あのエルフは、初めは門番をしていたサリを誘拐して、その後で無傷で何故かリサを帰して、その後で、門に再び現れて……また逃げて現れてを繰り返してる、あれは何がしたい。」


何がしたいのだろうか?うーん、僕がいる場所を門番の子から聞き出したいとか?まあ、そのうち助けにくるか。だから、気になった別のことでも聞いてみよう。


「まあ、僕にも何がしたいかは分かりません。そういえば、思ったんですけど、族長って殺す以外に変える方法ないんですか?」

あまりにも野蛮すぎる気がしたのだ。


「貴様?急に何を…………」

混乱しているバレットさんの横にやってきた妹のアインさんが


「3つありますよ。族長になる方法は、一つはこの前話しましたけど、あの二つは、今の族長が指名するか、族長に決闘で勝つがですね。そうですね、勝てれば良かったんですけどね。」

なるほど、それなら、僕が言葉を発する前に牢屋のある部屋に人がやって来た。


その人物は、今まで見ていた、獣人族の人たちとは違った、どう違うかというと耳はあるが、なんというか、体形が、運動していない感じの動けない感じの、まあ全体的に筋肉質のこの里の人々と違う感じの青年だった。


それと同時に目の前の二人から強烈な殺気のようなものが放たれた。

「お前ら、俺様は族長の息子だぞ。その目つきでこちらを見るのをやめろ。」

ああ、バカ息子か。


「…………」

「…………」

二人は黙っていた。


「お前ら、頭を下げろ、頭を垂れろ、ははは俺様は偉い。パパに勝てないゴミどもは地面を這いつくばえば良い。」

最悪かよこいつ、バカ息子最悪かよ。


「…………貴様」

バレットさんはそう言いながら唇を嚙んでいた。


「なんだ?バレット、俺様に文句でもあるのか?文句があるなら言ってみろよ。そしたら、この里の住人がどうなるか分かってるのか?」

最低だよ、最悪だよ。本当に


「………何でもないです。」

ただ、バレットさんはそう唇を嚙みながら呟いていた。


「ならいい。それで、俺様は、アインに用事があってきた。俺の嫁にしてやる光栄に思え、お前らがいう、里の掟?でももう結婚できるだろ、もちろん拒否したら分かってるよな。」

…………キモ。


「………分かりました。はい。」

そうアインは唇を噛みしめながら呟いた。


「アイン…………」

そう叫ぶバレットさんにアインさんは


「大丈夫だよ、兄」

とそう涙目で呟いていた。ああ、僕はまあ、僕は多分偽善者である。でも、そう思って両腕に力を入れた。


「それから、そこの人間。お前は今日から、俺様の奴隷だ。」

そうそのバカ息子は更に呟いた。意味不明である、何だろうか。


そのドラ息子のセリフに

「貴様………ふう、騎士団で捉えた人物は騎士団の管轄で」

そうバレットが言いかけた。なるほど、どうやらここはまあまあ安全地帯だったのか、そうか。


「じゃあ、俺様がもう一人のエルフの女を捕えたら、俺様の自由だよな。」

そうバカ息子が言ったときに、僕の覚悟は決まった。まあもともと決まってはいた気もする。騒ぎを起こすなとか、力加減とか、ルナにはそういう事を言った時期もあったが、後で訂正して謝罪しよう。


僕は、腕の鎖を、少し痛いが無理あり力でちぎり、それから、少し脆くなっている牢獄の折を蹴っ飛ばして、脱獄した。あの盾よりは、脆かった。監獄の折が壊れるときに凄まじい金属音がして、そして、その瞬間その場を支配した。


「「えっ?」」

そんな兄妹の声と


「俺様を何故、睨む、お前、俺様はこの里の族長の息子だぞ。俺様は偉いんだぞ。」

そういうバカ息子に僕はゆっくりと近づいて行った。


「おい、お前ら、騎士団だろ。止めろよ。俺様は偉いんだから守れよ、俺の嫁にしてやるんだぞ、アイン、俺様を守れよ。」

そう、ビビりながらバカ息子は騒いでいた。


僕は拳をギュッと握りしめながら一歩ずつ近づいた。

「バレットさん、アインさん。ここに僕が来た目的、今決まりました。ムカつくこいつをぶっ飛ばすためです。」

そう宣言した。二人はこの状況に固まっていた。


「だから、お前ら、何をやっているこの失礼な奴を止めろ、俺様は俺様はこの里の族長の息子だぞ。そこの人間分かってるのか?分かってるのか俺様は」

そう見苦しく叫ぶ、バカ息子に僕はにこやかな笑顔で


「僕はこの里の人間じゃないので、知ったこっちゃないですよ。」

そう言って、全身の身体能力を最大限まで引き出し、渾身の一撃を、バカ息子の腹部めがけて僕の右手の拳をぶつけた。

バカ息子は、ドアの方に飛んでいき、そして壁に激突した。そしてそのまま、バカ息子は意識を失った。



「…………な、な何をしてるんです。…………これで、私たちの里の誰かが……私が、私が犠牲になれば。」

そう言うアインさんと


「貴様…………感謝する。」

そう言うバレットさんがいた。だから、僕は


「仕方がないので、責任を持って族長を倒してきます。これで解決ですよね。まあ、ルナがいればなんとか、なるでしょ。では、」

そう言い残して脱獄して走り出した。

とりあえず、走り出してみたは良いものの、何処に何があるかも分からないし、どうやってルナと合流するかも分からない。さてどうしたものか。

そんなことを考えながら走り始めた。


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