第22話 ダンジョン4
それから数日間の迷子を経て大きな扉の前にたどり着いた。
死ぬかと思った。いや、死ぬ可能性があるのは僕ではなくて、ルナさんのほうだが。
「徹、先に言っておきます。このボスには私の攻撃は通じないので、足手まといです。」
ルナさんは何かが吹っ切れたのかそうドヤ顔で言っていた。
「まあ、とりあえず、ボスに挑んでみますか。サポートよろしくお願いしますよ。」
立ち止まっていても何も変わらない。とりあえず、ボスに挑もう。どんなに死ぬほど攻撃を食らっても死ぬほど痛いだけでどうせ僕は死なないし。てか死ねないし。
「では、私は撤退の用意をしておきますね。心置きなく、デスアタックを仕掛けてください。まあ、まあ肉体に物理的ダメージを受けない徹は、デスアタックではないですね。」
ルナさんはそう言って笑っていた。
そんな風に軽口をたたいて緊張をほぐしつつ、扉を押した。
「ギャア、グァアアア」
扉を開けるとともに大きな唸り声とともに、風圧がこちらに向かってやってきた。
そして目の前にはドラゴンがいた。ドラゴンだ、ファンタジーとかでよくいたドラゴンがいた。大きさは細かくは分からないが、少なくとも高さが10メートルはありそうだった。まあ、大きさは良くわからないぐらい大きい、足一本が、僕より大きい。牙も鋭く目つきも悪かった。翼もあり、空も飛びそうだ。
「はは、」
そう軽く乾いた笑いを浮かべつつ、刀のような剣を抜いた。
まあ、まともに攻撃しても無駄だし、とりあえず、目を狙うか、足を狙うか、翼を狙うか。そのどれかだな。まあ飛ばれたら攻撃が届かなくなるし。翼かな?
そう思って、僕はドラゴン目掛けて走り出した。これで飛んでもドラゴンの背中に届くかは微妙か。
「ルナさん、ドラゴンの背中に飛びたいので足場を」
まあ、ルナさんは魔法凄いし、(魔法はよくわからないけど)なんとかタイミング合わせてくれるでしょ。
「ルナお姉さんでしょ。足場はドラゴンが触れると無効化されて消えるから注意してくださいね。」
少し遠くからそんな声が聞こえるとともに地面が少しずつせり上がり、スロープのように変化していった。これなら。僕はルナさんが魔法で作った土台を駆け上がり、そのまま、ドラゴンの背に飛んだ。飛びながら、
「ルナお姉さん、一瞬動き止めれますか、ドラゴンの」
そう叫んだ。
「魔法が無効かされるまでのタイムラグがあるからその間なら止めれます。」
流石すぎる。
僕は動き回るドラゴンの背に飛び乗り、ドラゴンの動きが止まるのを背にしがみつきながら待った。
「凍れ、地面」
ルナさんの適当すぎる、そのまんま過ぎる名前の魔法で地面は凍っていき、そしてドラゴンの足元が氷、動きが止まった。その瞬間に僕はドラゴンの背で立ち上がり、両手で剣を持ち、右の翼に向けて思いっきり振るった。
「硬いな…………でも」
歯を食いしばり、全身全霊で剣を振り切った。
ズシャっという音と、「ギャア、グァアアア」というドラゴンの咆哮ともにドラゴンの右の翼が切れた。
しかし、ルナさんの魔法も原理は不明だが、無効化されて、ドラゴンが暴れだした。
それで、僕は地面に振り落とされた。
「これで、多分飛べないでしょう。」
そういいつつ、一度、下がって距離を取ろうと思ったが、ドラゴンは普通に飛んだ。片翼になったドラゴンは普通に飛び上がった。
「徹、翼を切ってもドラゴンは飛ぶよ。だって、魔力でドラゴンは飛んでいるので。」
ルナさんの遅すぎる助言をもらった。後方に下がりつつ、宙に浮くドラゴンの様子を見つつ、
「じゃあ、無駄なことをしていたってことです?」
そう叫んだ。宙にずっといるなら、話が変わってくる。
「無駄ではないと思いますよ。魔法で飛びますけど、翼で補助しているので、飛ぶ時間は減ると思いますよ。」
ああ、いや待って
「ルナさんも飛べるんですかもしかして?」
「…………徹、今じゃなくてもいいでしょ。その話。………まあ飛べますけど。飛ぼうと思えば。ほら集中して、てか避けて……避けなくてもいいかもだけど。」
そう必死に叫ぶルナさんがなぜ必死だったかは、その言葉を聞いたとほぼ同時に理解した。ドラゴンが僕に向かって炎のブレス攻撃のようなものを仕掛けてきており、それが直撃した。
「熱いな。」
熱量は凄まじく熱いが、まあ意識は保てるから大丈夫だろう。ドラゴンに殺されることはなさそうだが、現状倒せそうになかった。翼であの硬さなら、鱗を切るのはかなり難しいだろう。
とりあえず、目を潰しにいこう。卑怯で卑劣だが、そんなことなんか言ってられないし、てか、そういう強者の余裕的なものはない、生物の弱点や欠点を狙って何が悪い。
「徹、次はどうするとかありますか?」
ルナさんの言葉を聞きつつ、どのようにして目をつぶすか考えていた。手っ取り早いのは目を切り裂くってことだが、まあ近づくのは難しいだろうな。正面から飛び移るのは、さっき見たいな攻撃があるし、だからと言って、後ろから登っても、ドラゴンが暴れるからどうせたどり着けないし。
人間だったら適当に砂を投げるだけでも目つぶし出来るのに、あの大きさだと砂の量が足りないしな。
「一回、戻って作戦を立てましょう。それと情報を整理しましょう。」
とりあえず、何も思いつかないので撤退することにした。
「了解しましたよ。徹。」
ルナさんがそう言って、指を鳴らすと扉の前に戻っていた。
「おおすごい。」
そう僕ががつぶやくとどや顔でルナさんは
「このぐらいの距離なら転送出来るんですよ。用意しておけば。仕組み聞きます?」
ルナさんは魔法のことを喋りたさすぎるが、理解できないので少し辞めてほしいと思う。
「まあ、それは、後で聞くので、少し作戦を考えましょ。」
ルナさんの長話を回避しつつ作戦を立てることにした。
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