20. 魔法の使い方

20. 魔法の使い方




 ついに新入生魔法競技大会が始まった。とりあえずまずはあの大木まで歩いて向かわないとな。


 最初の星のボーダーは2個。つまり必ず1人は倒すか、説得するかしないといけないということだよな。


「ふむ。せっかくだからここで一応魔法を使っておこう。ぶっつけ本番とか失敗したらヤバイからな……」


 オレは今までのルーティ先生の授業を参考にして魔法を使うことにする。まずは魔法陣だな。右手で疾風(ゲイル)の魔法陣を描き発動するが風の魔力が拡散してしまう。


「あれ?もっとこう閉じ込めないと……」


 さらに集中する。すると今度は魔力を上手く循環させながら魔法を発動することができたが、魔力を放出できない。


「……どうする?これじゃ右手に魔力が溜まってるだけなんだが?」


 そんなことをしていると1人の生徒と遭遇する。


「見つけたぞグレン様のためにお前の星を渡せ!ステラ=シルフィード!」


「ん?あのゴリラの仲間か」


「くらえファイアボー……」


「待て待て!こっちの準備があるだろ!」


 オレは咄嗟に走りだし、そいつが詠唱を終える前に右手の拳を突き出すと、その拳が当たった瞬間すごい勢いで吹き飛んだ。その生徒はそのまま木に激突し気絶してしまった。


 マジ?すごい威力だったんだが……ちょっとやりすぎたかな。


「いや……大丈夫か?これはわざとじゃないから。とりあえず星をもらっとくか。」


 今のは右手に溜まってる風の魔力が当たった途端に放出されたってことだよな。もしかしたら、オレは風の魔力をそのまま放出する攻撃魔法より、この使い方のほうが向いてるかもしれない。ある意味補助魔法だ。


 ただまだコントロールが難しいな。そしてオレはとりあえずカトレアたちと合流するために目的の大木に向かって歩き出した。


 その後も何人かと遭遇し、戦った者。オレがステラ=シルフィードと分かると星を置いて逃げ出す者。なぜか決闘を申し込んでくる者など様々だったが、なんとか大木の近くまでたどり着いた。


「あともう少しだな。みんな無事だといいけどな」


 その時だった。木の上から突然声をかけられる。


「おやおやステラ=シルフィードさん。まさかあなたと会うとは思いませんでしたよ」


 そこにはあの茶髪糸目の腹黒男がいた。そのまま飛び降り、オレの目の前に現れる。


「……ラスター=アースランド」


「どう?星集めは順調かい?ボクはもう20個ほど集めたよ」


「自慢かしら?趣味悪いわねあなた」


 まずいな……まさかここで四大に遭遇するとは。今のオレが勝てる可能性なんて微塵もないしな……どうするか。


「それにしても……ボクは運が悪いなぁ~」


 そう言ってラスターはオレに小袋を投げ渡してくる。


「……何の真似かしら?」


「それ、星の半分。さすがに土属性のボクが風属性の君を相手に勝てる保証がないからさ。交渉だよ。見逃してくれないかな?まだまだ新入生魔法競技大会を楽しみたいからさ」


 そうか。四元の法則か。確かに本物のステラ=シルフィードならあいつにとってオレは天敵だよな。


「……そうね。ここで脱落されても面白くないものね?」


「ふーん。君って意外に物分かりが良かったんだね?てっきり格好の獲物を前にして、倒しに来ると思ったからさ?」


「……無駄な争いはしないと決めたの。もしあなたと戦って疲弊したところにあのグレン=フレイザードが襲ってきたら本末転倒でしょ?」


「そりゃそうか。お互い牽制しとくのが一番だろうな。どうせ最後の時間は拮抗が崩れるだろうし……でも、それをするのは君だとボクは思っているのさ。だからその時、出来ればボクを狙わないようにそれも譲歩してもらいたくてね?」


 なんてずる賢いやつなんだ。オレはその小袋を拾うと、そのまま歩きだす。そして振り返りラスターに言う。


「これはこれ。それはそれですわ?今は見逃してあげるけど、ラスター=アースランド覚悟しておきなさい」


「へぇ……怖い怖い。じゃあまた会おうか」


 オレは四元の法則のおかげで何とかこの場を切り抜けることに成功した。早くみんなと合流しなければ。もし今出会ったのがあのゴリラだったら間違いなくゲームオーバーだからな……。

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