第25話
「価値2億ですって?!そんな人が存在するなんて初耳ですわ!貴方、一体何者なんですの?」
アンネが喚く。そこでボスは一息付いてから、アンネに俺がこっちに来た経緯や、その後の数々の行動を説明してくれる。どうせアンネは制約で俺のことは他言出来ないので話しても問題はない。
それよりも価値2億はもう良く分からない。王家の血を引き、その中でも稀に発現するレアジョブ持ちのアンネの、7倍の価値が俺には有るようだ。
サバイバーの時点で既にアンネと並んでいたのだが…。ナイショね…。
「まああれだ、怪我せずしっかりと働いてくれな?とりあえず夕飯にしよう」
それを合図に皆で食堂へと移動する。解放されたミアが、暫くは給金を貰いながら食事の準備はすることになっている。どうやらいつでも奴隷市が開かれている訳ではないようなのだ。
そしてアンネ、お前は今じゃないぞ?ここは有料組の食事だぞ?
「あら、これが有料のお食事ですって?てっきり奴隷の食べ物かと思っていましたわ」
流石ご令嬢、こんな事言ってましたわ。そのまま普通に俺らと一緒に食事をしていたわ。コイツ本当に奴隷が何なのか知っているのか?と、棚上げ中の俺は思ってみる。
そして明日から俺らと一緒にダンジョンに行くこととなった。
俺は出来れば明日から6層の牛を狩りたいと思っていた。調味料も完成したし、ソロソロ牛肉が食べたくてしょうがない。
通常だと一泊コースらしいのだが、身体強化を使える俺とポムなら1日で行って帰ってくる事は出来ると思う。
なので、明日の朝一、ミアとアンネの装備の買い物は任せておく。
俺達は部屋に戻り、俺のジョブとスキルについて好き勝手に話している。
「マジでどうなっちゃうんだユータは?オマエ解放される気あるのか?」
「フィン?そんな事言っちゃ駄目なんだよ?なんでもすぐに口に出すんだから。ね?」
「ラミの言うとおりだぞフィン?それよりもユータ、安心しろよ。私達はユータが解放されるまでもそれからもずっと一緒だからな?」
「それでも20億ですわよ?返せる宛はあるのかしら?」
アンネ…なぜお前までここに居る?お前の部屋はここじゃないだろう?
しれっと俺の部屋のベットに乗っているアンネはほっておいて、俺は裸になり風呂に入る。俺に続いてポムミアも裸になって付いてくる。
アンネは顔を赤らめながらも俺の裸を目で追って、ボソッと「凄い…大きい…」と呟いている。
そうなの?俺のって大きいの?今迄比べたことが無かったからな。
「そうだぞ!ユータのはデカいんだぜ!ギャハハ」
そうなのかフィン?それは知らなかったわ!まあ良い。それよりも俺は試したいことがある。
俺はボアの魔石を手に取り、念じる!俺は付与魔導士だ!魔石に書き込むなど造作もないぜ!
「ポム、これ持ってみ?」
「わぁぁぁ!これ鑑定スキルの魔石なのですか?ユータ君のジョブとスキルが見えるのですよ」
「おぉユータ!アタイにも作ってくれよ!アタイも鑑定してみたいぜ!」
「な、なんですって!鑑定の指輪をつくったですって?今ここでですの?指輪1つで金貨50枚ですわよ?」
驚いて風呂のある部屋に入ってくるアンネに、俺は熱の魔石と水の魔石を見せてあげる。当然おれは丸裸だがね。
「こ、これは…チラッ、熱を持っていますわ…チラッ、こちらは水がチラッ溢れチラッ出しているではチラッありませんか」
チラチラ見られると逆に気になるわ!堂々と見てくれたほうがこっちとしては気が楽だわ。
「実は初めての魔石を調べた時に、魔法の媒体として使える事が判明してな。要は魔石を通せば魔法が使えると言うことだ。これは誰でも使えるはずなんだ」
「ワタクシもですの?」
「あぁ、属性は有るだろうが一応は誰でも使えるはずだ。魔導具だって使用者を選ばないだろう?ただ、魔石は魔法を発動すると蓄積されている魔力が減ってしまうんだ」
「それで先程ミアさんとソラさんが魔法使い系統のジョブになられたのですか?」
「あー、まあそういうことだ。魔石を通して魔法を発動していると、魔力に目覚めるんだと思う。そうすると魔法使い系統のジョブが生えてくるんだ。多少は練習しないと出来ないけどな」
「そんな事……やり方はさておき、おそらくそれは帝国の極秘事項よ、秘伝よ…貴方バレたら殺されてしまうかもですわよ?」
アンネはある一点を凝視しながらメッチャ怖いことを口にする。
やはりジョブの変更などは帝国上層部では知られているのだろう。そうじゃなきゃ剣聖になど変えられるはずがない。ただ、この情報が出回ってしまうと大変な事になってしまうからな…まぁバレないでしょ?
「訓練したいなら色々と教えることは出来るぞ?そのかわり本格的にやると、俺みたいに価値が変わってしまうから注意しろよ?」
「え、教えて頂けるのですか?是非教えて頂きたいですわ!お願い致します!」
「一緒にフィンとアキも練習しないか?身体強化とか使えたら便利だと思わないか?」
「ん〜、アタイはまだ良いや!どうせ解放までまだ2週間は掛かるからな!その後でもいいしさ」
「アタシも解放されてからでいいです!価値が上がるのも困りますしね!」
獣人組はスグこれだ…。まあ無理にとは言わないけどさ!確かに今魔法使いが生えてしまっても困るけどね。
その後、今度は身体強化付与の魔石を作ってみる。これが完成すれば皆んなで日帰り6層の旅が出来るようになる。
魔石を握り、身体強化をイメージする。魔力が全身を駆け巡るようなイメージだ。これなので魔力が無い人は当然使えない。その無い魔力を魔石が補ってくれるわけだ。
魔石を見てみると「身体強化の魔石」と名前が変わっている。
効果時間 残り20分
げ、たったの20分だったわ…魔法の方は効果時間5分なので、4回分だな。
皆んなに配るには魔石が足りなかった…もっと大きな魔石なら違うのだろうけども。まあとりあえずは明日の俺とポムの分を念のため何個か作っておく事にする。
でも待てよ?魔石に書き込めることは分かったが、武器や防具には付与できるのか?付与出来ないはずがないよな?だって付与魔導師だから。これは要検証だな。
風呂を上がってフィンとアキに背中の垢すりわしてもらいベットへと移動する。そして皆んなとイチャコラ始める。
アンネは何故かまだ居るけどもう気にしない。おぼこじゃあるまいし、こちらが遠慮するのも何かが違うしね。だって俺の部屋ですから!嫌なら出ていけば良い。
★★★
そんなこんなで異世界転移してから19日目の朝。もうどっぷりコッチの人間になってしまいました。
装備への付与は成功した。だが魔法は付与できなかった。これは魔石が無いと魔法が発動しないからなのだろう。しかし能力を付与する事には成功した。どうやら俺の付与魔導師のレベルの分、能力を付与することが出来るようだ。
だだこれ、魔力をごっそりと持っていかれてしまう。魔石に付与するのとは大違いだった。
なので今日はまだ当初の予定通り、俺とポムだけで飯を食った後に真っ先にダンジョンへと向かい、6層を目指す。
牛なら1頭倒すだけでも3〜400キロ位の肉が取れるので、身体強化を使えば俺とポムの二人で2頭担げるのでは無いかと思っている。ソラとミアにも身体強化を覚えてもらいたいところだ。
ボアチームも最近は薬草と、毒消し草は見て覚えているので集めて貰うことになっている。
身体強化の魔法は体感、体力と力と素早さを1.5倍強化されてる感じがする。その魔法を俺ポムは1〜6層までの移動だけに使う予定だ。後は現地で少し休んでまた身体強化で帰ってくる。
倒した牛の肉は地面に置くと吸収されてしまうので、一旦担いだらもう地面に置くことは許されない。まあ初なので最低でも1頭でも持って帰れれば良し!なのである。
なんとも過酷な修行なのだが、俺はどうしても牛肉が食べたいんだ!シャトーブリアンが食べたいんだ!それだけの為ではないが、俺の中ではそれの割合が高い。
さあ行こうか!
俺とポムは身体強化を使いとりあえず見慣れた3層を一気に目指す。俺等の猛ダッシュに、途中ですれ違う馴染みの人たちもビックリしている。
そりゃそうだよな。いつもはペチャクチャ喋りながらダラダラ歩いていたのだから。
でもこれ、案外楽しいかも!タイムアタック要素があって燃えてくる!
多分3層まではいつもは2時間位掛かるところを、半分とは言わないけど、結構いいペースで到着している。
魔力的にも多分まだまだ行ける。今迄限界まで魔力を使ったことが無いので分からないのだが、無くなるとどうなるのだろう。
「魔力的に大丈夫そう?ここからは罠もあるんだよね?俺が先頭で進むから、同じ道を通ってきてね?」
「分かったのですよ!ユータ君の後ろを絶対に離れませんですよ!」
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