第21話

 さらに2層には、サツマイモ、それにジャガイモも当然ある。そして何とタマネギとニンニク!これは来ましたね…革命が。


 ニンニクを発見した事で、ボアの肉がより一層美味しく食べれる様になるよ。これ、商人ギルドで「ボア肉のニンニク焼き」とか「香草焼き」等を、商標登録出来ないものですかね?帰ったらボスに聞いてみよう。


 2層では、ビートをカバン2つ分パンパンに詰め込み、ニンニクでカバン1つ、タマネギとサツマイモでカバン1つをパンパンにする。


 念の為3層も見てみたいので、カバンは1つ空けている。何もなければトウガラシで終了だ。


 ここのモンスターは、今の所、ネズミのような小動物しか居ないようで、安全に採集出来ている。


 3層はジャングルになっていて、気温も高い。木々には蔦が巻き付いている。これ自然薯じゃないか!自然薯は良く祖父の山で取っていたのでスキルで調べるまでもなくすぐ解る。


 ちなみに自然薯によく似たツルでオニドコロという毒性のある芋が有るからな注意してね?


 魔法で掘っても良いのだが、今回は辞めておく。俺はトロロにして食べるのが好きなのだが、出汁と醤油が無いのが…トロみが強すぎて俺は食べれない。


 後はバナナ、ヤシ、そしてオリーブの木などがある。南国のジャングルって感じだぜ!バナナは一房持って帰りたい所だけど、まあ今回は良いかな。オリーブオイルもメチャクチャ作りたい!他に何もなければ持って帰ろう。


 後は目ぼしいのは……俺の目に、ある植物の実のなった房が飛び込んできた。


 皆さんはキングオブスパイスが何だかご存知ですか?


 そう!胡椒ですよ!


 スゲー!胡椒ってこうなってるんだー!


 自生している胡椒を初めて見た。偶々もいだ房をスキルで見なかったら、間違いなく素通りしていたと思うくらいに見慣れない植物であった。


 1つの房に赤黒い小さな粒が沢山付いている。確かこれはホワイトペッパーになるはずだ。こんな小さい粒の皮をむくんじゃなかったかな…このまま干したらどうなんだろう。


 確か緑の未成熟な実がブラックペッパーになるはずだ。だが、ここには完熟の赤黒い実しか実っていないように思える。


 そういえば1層の大豆も成熟していて、枝豆状態が1つも無かった。


 ダンジョンの植物は完熟状態でポップするのか?そういえば、ボアの子供、ウリボウも見たことがない。


 そう考えると、ダンジョン内では、繁殖はしないのだろう。


 俺達はサツマイモとタマネギを捨てて、カバン2つ分の胡椒を収穫した。こんな安全な所に胡椒が有るのに、この世界では出回っていない。なぜだろう。


「なあ。胡椒って食った事ある?」


「ないぜ!旨くないって聞いたことがあるからな!ユータはなんでこんな不味い物を大量に集めてるんだ?」


「ウチも美味しくないって聞いたよ?でもユータは美味しく出来るんでしょ?」


 そうか。普通に食べたら美味しくないからな。コッチの世界は深く考えない人が多いのだった。


 俺の予想だと、最初にこの実を生で食べた人が、メッチャスパイシー過ぎてぶっ飛んでしまったのだろう。そしてこれは美味しくない!と認定したのだろう。きっとそんなところだ。


 大量に収穫出来た俺たちは、6つのカバンをパンパンにして帰路につく。


 まずは胡椒とニンニクを乾燥させて、ビートを煮詰めて、豆も煮てと、やる事目白押しだが意気揚々と屋敷へ帰ってきた。楽しみでしょうがない。


 娼館には、既にソラとポムが帰っていたので、手伝ってもらう。まず大き目のザルを3つ用意して、胡椒の実を房から外していく。

 

 気持ち良いくらいにポロポロ外れていく。アッという間に3つのザルが一杯になってしまったが、まだ取ってきた実は半分は残っている。一杯と言っても山盛りではない。平たく敷き詰めた状態だ。


 まあ残りは房のまま保存しておこう。後は日当たりの良さそうな場所に干すのだが、これは明日の朝に出すことにする。


 ミアが夕飯が出来たと呼びに来たので食堂に移動する。ボスは既に座っていたので色々と聞いてみる。


「ボス、新しく開発したスパイスは登録とか出来るんすか?胡椒というスパイスを取ってきたんすけど」


「あぁ、商人ギルドで登録できるぞ?製法と製品があれば良いんだ。ギルドで認められれば、売上の5厘を常に貰えることになる。ただ、胡椒はダメだ。あんな不味いもの、幾らにもならんぞ?」


「それがすね…美味しく出来る製法を知っているんす」


「ほう。まあ期待せずに待っておくか!出来たら商人ギルドに連れて行ってやるよ!ガッハッハ」


これは本当に期待していないんだろうな。まあいい、腰を抜かすなよ?!


「食事のレシピはどうなんすか?ちょっと美味しく料理出来るようになるんすけど」


「それは無理だ。ただ、それを美味しくなる調味料として開発すれば登録できるぞ?」


 そういうことか…要は俺の考えた新商品を商人ギルドが製品化して売ってくれると言うことだ。なので新料理を考えても、真似されるのは防げない。元祖を打ち立てるだけしか無さそうだ。


 食後、キッチンを使わせて貰ってビートを煮詰める準備をする。ポムとソラにはニンニクを吊るせるように紐で束ねてもらっている。


 ビートをまずは綺麗に洗う。洗面器に水を魔法で出して、皆んなでタワシで擦る。20個持って帰って来ていたのだが、5人でやるとすぐに終わった。


 これを柵状にして、水を満たした鍋に入れて煮ていく。俺は砂糖など作ったことがないので適当だ。こういうときはじっくり弱火でコトコト煮込むのだろう。


 原理としては、濃度を上げれば結晶になるのであろう。それならひたすら煮てやるぜ!


 ある程度煮たら、ビートを入れ替える。そしてドンドン煮る。茶っこくなってきたが合っているのだろうか?


 まあ駄目ならまた取りに行けば良い!ドンドン煮る。そして1回濾してまた煮る。濾したときに味見をしたら、メッチャガムシロップ。完成は近いな。焦げ付かないようにかき混ぜながら煮ている。


 だいぶドロドロになっているがだいぶ茶色くなってしまった。熱かったら結晶にならなくね?と思い、取り敢えず今迄煮ていた物は、綺麗な洗面器に移して、冷ましておく。


 皆んな興味津々で、味見をしまくっている。


「なんだこれ!これが砂糖ってやつか?」

「なんだろねこれ?ほろ苦いけど甘い?初めての味だよ?」

「アタシはこれ好きです!これが砂糖なんですね!」

 

 不思議な感想が出てくる。それはシロップです。言っても分からずに、次から次へと味見の指が出てくる。


 その後もまだまだ新たに煮込んでいく。結構な量が出来たがこれが結晶化するのだろうか?まあしなくってもシロップとして使えるだろう。


 失敗したな…サツマイモがあれば大学芋が作れたのにな。折角のシロップなのにな。


 まあ後悔してもしょうがない。次は豆を塩ゆでにしていく。豆はこれだけで十分に美味しいだろう。豆も甘いよ〜?


 煮立ての豆を皆んなでつまむ。マジで旨い!!地球と同じ味だ!なんせ塩しかない世界で地球と同じ味が出せる食べ物など高が知れている。まあ俺の知識の中での話しだけどね。


 ヤバイ!この優しい甘さに、よくわからないが涙が出てきた。


「ユータどうしたの?美味しくなかったのかな?ね?」


「いや、違うんだラミ。故郷を思い出したんだろうな。自然と涙が出たわ」


「やっぱりユータは国に帰りたいのか?」


「ソラ、それがよくわからない…今はただ何故か涙が出てきただけだ。帰りたくないと言えば嘘になるが、皆んなと離れたくないのも事実だ。ただ国に帰る方法を探しているのも事実だ」


「それは悪いことじゃないですよ?ボクも皆んなも少なからず故郷には帰りたいのですよ」


「そうですよ!ワタシだって帰りたい時もありますよ?でも皆んなと居るのが今は1番幸せです!」


「それは俺も一緒だ」


 何だか無性に人肌が恋しくなり、皆んなを一通りハグして回る。


 こんなところで本日の仕込みは終わりだな。俺はポムに手伝って貰って風呂桶に水を張る。途中から水を俺が、熱をポムにやってもらう。これも魔法の練習だ。


 ポムは既に火力の調整は完璧に出来ている。ただ魔石が必要ではある。


「ワワワワ!来たですよユータ君!ボクにも来たですよ!」


「まさか、みなぎってきたか?!」


「はいなのですよ!やりましたよ!みなぎって来たですよ!」


 ポムは大興奮で俺に抱きついてきている。当然だろう。ウォリアーのポムが魔法を使えるようになったんだからな。ただ、これでダブルジョブになってしまったかもな。







 

 


 

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