第19話

 俺は携帯と小型カメラを封印することにした。携帯電話は今では時間を見るだけの道具となっているし、地球の文明は、俺の頭の中にある分だけでやって行こう。それが俺のサバイバル生活だ!


 身体は砂や土や灰で洗う!髪の毛は油を付けてお湯で洗う!歯はなんかコッチの世界にある木の枝をしがいて歯を擦る!ケツは薄いタオルで拭いて捨てる!皆んなそれなんだから俺だってそれで行く!ただ風呂屋は有るようなので何時かは行ってみたいぜ!


 やはり俺はコッチの世界に順応出来そうだ。


 ただあれだ、食に関してだけは塩だけではキツイ…これは俺の知識で変えて行ってやる!


 手始めにまずは…砂糖だぜ!後ポテチを作る暇が無い…今晩こそはポテチが食いたいぜ!


 そんな事を考えているとミアが呼びに来たので食堂ヘ移動する。もう裸を見られても何てことはない!


 食事を取りながら、さっき気になったので聞いて見る。


「そういえば風呂屋が有るって言ってたよね?どんな感じなの?」


「あぁ、ここから歩いてすぐの所に有るぞ?俺はよく行くんだが、銅貨20枚で蒸した部屋に入るんだよ。そんで身体がフヤケて来たら垢を擦ってもらうんだ。何だ裕太、行きたいのか?」


「行きたいっすね。俺の国だと毎日湯船に入るんすよ。だからそろそろ入りたいな〜と」


「凄いねユータ?毎日湯船に入るだなんてね?貴族みたいだよ?」


「ホントだな。お湯を張るだなんて凄い手間が掛かるだろうに。奴隷にやらせていたのか?」


「いや、ソラ。言っても分からないだろうけど、自動でお湯が沸かせる道具が有ったんだよ」


「それこそ凄いですね!まるで魔導具じゃないですか!」


「ん?魔導具でお湯を沸かせる何かがあるのか?」


 俺は湯船に入りたいので少し必死だ!


「あぁあるぞ。風呂桶に入れると水が温められてお湯になるんだ。俺も欲しいんだけどなんせ値段がな…」


「ほほう。そんな魔導具がね、、、」


 俺は知っているぞ?魔導具は、結局は魔石に何かさせている道具なわけで、火を付けたり、明かりを灯したり。結局は、魔石を制御しているだけなのだろう。


 それなら魔石の謎を知っている俺なら、直接魔石に仕事をさせることが出来る訳で…、

フフフ!


「また出たですよ、ユータ君の悪い癖がなのですよ」


「まあ、ポム。気にしたら負けだぞ?」


 まあ周りで何か言っているが気にしたら負けだ!俺は湯船に入りたいんだ!


 俺は昨日の魔石を1つ取り出して念じる。魔法使いなので魔石は使えないかもしれないけど、やるだけやってみよう。


 ポムが作った明かりの魔石は、1番最初だけ呪文が必要だったのだが、次からは「点け、消えろ」で操作出来たからな。


 ということは、魔石は最初に覚えた現象を魔力が無くなるまで、繰り返し行うことが出来るのだと仮定する。


 そう考えると、お湯を作るのではなくて、魔石が熱を発すれば良いと言う事だろう。


 俺は魔石を握り、熱を発せ〜!と強く念じる。


 すると、魔石が徐々に熱くなって来た。やはり予想は当たったぜ。多分魔導ポットもこの原理だろう。熱を発している魔石を見てみると、そのまんま、「熱を発する魔石」と名前が変わっている。そして効果時間は5分だった。


 5分は短くないか?風呂桶の水の量にもよるが、水から適温に温めるまでに何分掛かることか…。実験が必要だな…。


「ボス!風呂桶が欲しいっす!」


「ああ?それマジで言ってるのか?そりゃあここで湯船に入れるなら俺は大歓迎だけどな…そんなことが出来るのか?」


 そう言ってくるボスに、熱を発する魔石を渡す。するとボスはビックリしたが、すぐにこれの意味を理解したようで、


「これマジか、お前!!こんだけ熱ければお湯も作れそうじゃねーか!これどうやったんだ?」


「フフフ、それは教えられません。ただ、この魔石を大量に作るんで買ってくれませんか?これがあれば湯屋でも開けるんじゃないですか?」


「ガッハッハ!お前本当に商売上手だな!面白れーな!それなら1個幾らで、どれだけお湯を作れるのか、それをしっかり調べたら相応の値段で買ってやる!」


「!!マジか、約束だぞ?そしたらやっぱり風呂桶が必要っすわ」


「分かった。まずは1人用のを用意しよう。それで実験してみろ!それ次第で、各部屋に置いても良いかもな。ガッハッハ!」


 それなら、水の出る魔石も作れば良さそうかな?きっとこれが魔石の正しい使い方だ!

そう考えると魔石メッチャ便利ネ!ちなみに風呂桶って浴槽の事だぞ?黄色いケロリンではないよ?あれは洗面器だ。


 さて、そろそろ今日のダンジョンに行く準備を始める。俺は今日はまず防具屋へ寄ってからなので、皆んなには背負子のレンタルを頼んでおく。ラミが俺の方に来たいと言うので一緒に行くことにする。


 ラミが腕に抱きつきながら、防具屋に入る。


「オヤッサン、毎度!」


「おう、ユータだったな?もう来たのか?防具に何かあったか?」


「いや、買い忘れが有ったんでまた来ました。頭装備なんすけど」


「お前…頭装備忘れたって、それ忘れるか、普通?面白れーヤツだな!まあいい、頭装備はアッチに有るからな」


 そう言われたのでアッチに行ってみる。そこには顔全体を隠せて目元だけ開いてるヘルメットから、それこそ髪飾りの様な物まで様々な物がある。もちろん素材も鉄や、細かいチェーンで出来たものから、何かの鱗の様な物、革、布、金細工などである。


「ユータ、いっぱいあるね?どれにするの?」


「そうだなぁ…、、、これなんてどうだ?」


 俺が手に取ったのは、昔のパイロットが被ってるような耳まで隠せる、革のパイロット帽子だ。何の毛皮だかは分からないが、内側にファーが付いていて何か格好良い!ゴーグルがあれば、マジで大戦時代のパイロットだぜ?しかも耳の部分は折りたたみ可能だ!そして値段は銀貨50枚だ!


「わぁ〜凄く可愛いよ?その帽子?」


「へへへ!格好良いの間違いだろ?こいつは気に入ったぜ、これにしよう」


「良いな〜?私も欲しいな〜?」


 とラミが小声で言ったのが聞こえた。そんな切実に言われたら、男なら買ってあげるべきだろ?


 俺はもう1つ手に取り、ラミの陣鉢を剥ぎ取り帽子を被せてみる。


「マジで天使だ、、、マジで可愛いわ!これ買おうぜ!絶対これが良いよ!」


 そう言ってカウンターに帽子を被せたラミ毎連れて行く。


「オヤッサン、この帽子2個ね。後この陣鉢買い取ってもらえるんすか?」


「おう、どれ?ほう、結構綺麗に使っているな。油もしっかり塗ってあるしな。それでも銀貨5枚って所だな。良いか?」


「ん、買取りでお願いします?」


 俺等は金貨1枚を支払って、銀貨5枚貰って店を出る。


 何だかオソロで良いな!しかもラミはメッチャ似合っている。まぁこの帽子、多分女の娘なら誰でも可愛く見えてしまうかも…。ただ、体感陣鉢より防御力低いだろうな。オデコに鉄板入っていないからな。これは改造が必要かな?


 そんな事を考えながらラミに腕を抱かれて門へと辿り着く。そこには既に背負子組が待機していた。


「わぁラミ、とても可愛いのですよ。とても似合っているのですよ」


「ユータもスゲー格好良いぜ!アタイも欲しくなっちゃうぜ!」


「確かに良いな。私もそれにしようかな」


「アタシもそれが良いのですが、耳がどうなってしまうのか…」


 確かにアキのウサミミだと折れ曲がってキツそうかな?それならフィンもじゃない?


「獣人用のも有ったよ?ウサミミ用かは分からないけどね?頭の所にポコって膨らみがあったよ?」


「それは猫耳用じゃね?もしウサミミ用が無かったら、俺が耳の部分だけ穴開けてやろうか?」


「わー!それがよいです!流石はユータさん!」


 確かまだ5個位は有ったと思ったが、早めに買ったほうが良いだろうな。今日の帰りがけギルドの後にでも行ってみるか。


 別に稼ぎを全部ボスに渡さなくても良いのだ。もちろん稼ぎが少なければ文句は言われるだろうが、自分の返済が遅れるだけだからな。それに今の俺達の稼ぎだと、金貨1枚使ったところで文句は言われない。












 

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