第16話
「魔石を手に持てば魔法が発動出来るだと?そんな事は初耳だぞ?そうなったら魔導具なんか要らなくなっちまうじゃないか?キャスパーは知っていたのか?」
「いやん、キャサリンって呼んで!いんやワタクシも知らなかったわん。そんなとんでもない事を、坊やはなんで知っているのかしらん?」
「スキル、サバイバルの知識で物を調べると効果や使い方などが分かるんすよ。魔石を調べた時に、魔法の媒体として使えると出たんす」
「それで魔法ギルドで魔石の事を言おうとしたら、捕らえられそうになったんだな…確かに魔法ギルドにとって、その事を知っている人間は危険すぎるからな…」
「何よそれ?捕われそうになったって何よ」
「裕太、キャスパーはな、見た目はこんなんだか、俺の幼馴染なんだわ。だからこいつは信用して全て話していいぞ!」
そうだったのか。ん?ひょっとして紅茶を入れるのに、やたら時間を掛けていたのはボスが来るのがわかっていたからか?
まぁそれならと、俺は魔法ギルドでの事を全て話した。
「それはかなり危なかったわね。捕らえられてたら一生出て来れなかったかもよん?」
「「「一生!?」」」
今度は俺も揃った。
「そうよ?その一生っていうのがすぐ訪れるのか、長い間待ち続けるのかはワタクシにはわからないけれどね?ただ、坊やがダブル持ちなのはどうにもならないわよ?」
「確かにな。鑑定持ちが見れば一発だからな…アレしかないか…」
「えぇ、アレしかないでしょうね…」
アレってなんだ?とラミとソラを交互に見るが、分からないと首を振られる。
「まぁ、アレって言うのは指輪なんだがな。鑑定防止の効果がある指輪が有るんだが……なんせ高けーんだわ!!」
そこが引っ掛かっていたのね…どうせ俺の借金が増えるだけなんじゃ?
「そういや裕太。価値が変動してるだろうから見てやろう!こっちへ来い!」
あージョブが変わると価値も変わるのか…どうせ増えるんだろうな…減るはずはないよな…
「こりゃーーっっ!!マジカヨ……俺、初めて見たわ…」
「ちょっと〜ん。焦らさないでよ!」
「あぁ…価値は白金貨100枚…つまりオリハルコン硬貨1枚だ…」
「「「「オリハルコン硬貨1枚」」」」
よし、皆んな揃ったワーイワイ!
俺の話しなんだけど、かなりピンと来ていない。オリハルコン硬貨が白金貨の1つ上っていう事の方が、俺の中では新鮮だった。
「金貨で1万枚か…返済額は10万枚…坊や、貴方ヤバイわね…」
「凄いねユータ?ウチはずーっと一緒に頑張るからね?」
「わ、私だってそうだぞ?ユータとずーっと一緒に頑張るぞ」
「返済額が金貨で10万枚だと!?!?それスゲーヤバイじゃんかよ!!俺、一生奴隷じゃねーかよ!!」
金貨で言われた途端、一気に実感が湧いてきた。実際は満期は10年だ。そんな事は吹っ飛んでいる。なんせ今日稼いだ草が金貨40枚だぜ?金貨10万枚だとこのペースで7年…今回の分だって肉を合わせても、分配するから一人頭金貨10枚…1日金貨10枚で1万日!!何年だ?もう俺にはわからない……。
「坊や、貴方今何で稼いでいるの?」
「……薬草や毒消し草、毒草、後はボアの肉と皮1日で多分一人頭、金貨10枚くらい」
「あら、かなり稼いでいるわね…ただ、そのペースだと約28年ね。中年になってしまうわね?オホホホ。1日50枚稼ぐくらいが現実的で6年弱よ」
「1人で1日金貨50枚ならなんとかなりそうだな。あ…大きなカバンが必要だな…」
「ちょっとユータ?昨日も言ったでしょ?ウチはいつでも一緒だよ?ユータの為ならお金なんて要らないよ?1人で稼ごうとしないで?ね?」
「わ、私だってそうだぞ?私達が解放された後は、私達はユータを解放するまで一緒に稼ぐからな?今のペースなら後1ヶ月位で私とポムは解放されるから…そうしたらもっと稼ぎが増えるだろ?」
「あらあら、坊やモテモテね〜。焼けちゃうわ〜!でもその子達の言う通りよ?1人では上手く行かないことも、皆んなでやれば良い結果が生まれるものよ?だからパーティーメンバーは大事にするのよん?」
「よし!それじゃあ帰るか!フィン達も心配しているだろうよ!腹も減ったしな!ガッハッハ」
ボスの言葉を聞いて、急激に空腹に襲われた。確かにあれからだいぶ時間が経っているようだ。肉は売れたのかな?今日は実はハーブも取ってきて居たんだけど…残念だ。
ボアの肉をハーブと一緒に焼けば、臭みも気にならなくなると思ったんだけどね。まあ、少し乾燥させても食べれるから、ボアの香草焼きは明日に取っておこう。
そんな呑気な事を考えていた俺の事を、遠くから見つめている人物がいた事など気付きもしなかった。
「あら?ちょっと、ダブルジョブ持ちの奴隷ですって?」
★★★★★
ボスに連れられてやっと娼館に戻って来れた。娼館に戻る途中に、凄い人だかりが出来ていたのだが、俺たちが取ってきたボアの肉を、購入する人の列だとは驚いた。まだ半分くらいは残っているようだが、コレなら売り切れるだろう。
俺はボスからまた七厘を借りて、客の前でハーブ数種類を細切れにして、ロースに絡めてフライパンでサッと焼く。すると何とも言えない良い匂いが立ち込めて、客も含めて皆んなの腹の虫を刺激した。
すると俺が焼いた肉が飛ぶように売れ始める。遠巻きで見ていた人も、たまらずに飛び付いてきた。
その後はバラ肉にも香草焼きにしていくと次々に売れていく。気が付けば今日の分は、完売していた。
「今日は完売だよ〜また明日だよ〜!明日から香草焼きは50ガルド貰うからね〜。」
「ユータ、おかえり!オマエ大丈夫だったみたいだな?ボスが飛んでいったから何事かと思ったぜ!あ〜あ腹減った!飯にしようぜ」
「本当に大丈夫だったのですか?ボク達には隠し事はなしなのですよ?」
「あぁ、後でゆっくり話すよ。まずは飯だろ?俺、もうペコペコだぜ」
俺はラミに手伝ってもらいながら、井戸で身体を洗い流し食堂へと移動していく。そういえば石鹸なんてあるのかな?そろそろ水だけだと俺の汚れの限界が近づいて来ていると思う。それでも女性陣が良い匂いがしているのは謎だ!
「なあラミ?石鹸って分かるか?身体を洗うときに使うんだが」
「石鹸?知らないよ?ごめんね?」
「いやいや、謝らなくても良いんだよ。ラミはなんで良い匂いがするんだ?」
「これはね〜花の蜜だよ?良い匂いでしょ?エヘヘへ」
ラミはマジで天使だな!それに何だか嬉しそうだ。良い匂いと言われるのは嬉しいのだろうな。それよりも花の蜜か。アロマオイルとは違うんだよな。やはり娼館、そこら辺の気遣いは当然有るのだろう。抱く娘が臭かったら嫌だもんな…。逆にそれに興奮する人もいるのか?
ラミと一緒に食堂に入ると既に皆んな揃っていた。テーブルにも既に食事が並んでいて皆んな食べ始めていた。俺も席に着いて食べ始める。
「今回の売り上げは、腕、バラ、モモ肉が700キロで金貨7枚、ヒレが20キロで銀貨60枚、肩ロースが300キロで金貨6枚、背ロースが200キロで金貨5枚、合計金貨18枚銀貨60枚です」
「わあ〜結構行ったね?良かったねユータ?金貨一杯だね?」
「あぁ、錬金ギルドチームは金貨40枚だったぜ!合計58万6千ガルドだ。目標額には届かなかったけど想像以上だな」
これって普通に考えたら大金だよな。しかもまだまだ改善の余地はいくらでもある。
でも俺の返済金額は金貨で10万枚なんだよな…ボスに金貨で5万枚入るってことだよな?きっと俺って奴隷商にとって、大当たり奴隷だろう。
食事も終わり、皆んなにも今日の顛末を聞いて貰おうと思い、皆んな食堂に残ってもらっている。
そこで、ダンジョンギルドで能力チェックをした件、ダブルになっていた件、ギルマスとの件、価値の爆上がりの件を全て話した。
「オリハルコン硬貨10枚って幾らだ?もう何ていうか…アタイにはもう…」
「金貨で10万枚なのですよ。ユータ君はぶっ飛びすぎなのですよ」
「俺にも良く分からないんだがな…ただポムも魔法使ったんだから、魔法使いになっているかもしれないんだぜ?」
「ただ明かりを灯しただけなのですよ?あれで魔法使いに成れたら皆んな魔法使いなのですよ。クククク」
「だから、皆んなも本格的に魔法を使ってみないか?特に覚えたからなんだ?って事にはなるかもしれないけどな」
「アタイはパス!まず無理!」
「アタシも無理かもです」
「ウチは、やってみようかな?ユータと一緒に頑張るよ?」
「私もやってみようと思う。中衛だから、魔法が使えたら便利になるしな」
「ボクもやって見るですよ。明かりを灯すだけじゃつまらないのですよ」
フム、まぁ予想通り、獣人族は魔法は嫌い、エルフの血が入っている二人は魔法に興味、ポムは元々魔法に興味ありだったしな。
「ワタシもやってみて良いかな?使えるようになればユータの役に立てるでしょ?」
予想外のメイドのミアが立候補してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます