2節 フリバー・ライヘルド15



 「――」

 アドニスの言葉に、フリバーは口を閉ざす。

 ――……いや、考えていなかったからではない。

 敢えて、考慮に入れなかった選択肢を、あまりにも簡単に上げて来たものだから。つい息を呑んだだけだ。


 「どうした?明確な答えが欲しかったのだろう?」

 アドニスが呆れたように呟く。

 隣を見るが、“死”が何かを言う気配を感じ取れない。

 どうやらアドニスの指摘こそが、“彼女”の趣旨らしい。


 つまり。

 「どんなから。無駄ではあるがアクスレオスの所に連れていけ」――……と言う事だ。

 無論であるが、論外であろう。フリバーじゃない。「ブレイル」という勇者が許さない。


 フリバーは苦虫を噛み潰したよう表情を1つ。

 彼らは、こちらの疑問を答えているようで、答えられてない。

 少なくとも。「何故無駄なのに連れていく必要があるか」これを話してくれれば、考慮もすると言うのに。

 ――いや、もしかしたら。

 フリバーは僅かに眉を顰め、腕を組む。

 

 「もういい。分かった。この話は終わりだ!――だが、それはブレイルアイツには、到底言えない事だぞ!」

 最後に指摘を加える。

 “彼女”は本から目を外すと、再びフリバーを見た。


 「――で、あるなら。後数日で終わりが来るだけですよ」

 「っ!」

 それは、死ぬと言う事だろうか。いや、それはフリバー達には「終わり」じゃないが。


 「俺達は死ねないんだろ?」

 「違います。――……吐血に蛆が混ざり始めたら、終わりと考えなさい。このような事態、私も経験したことが無いのですから」

 さらりと、恐ろしく、想像もつかない助言を零して。“彼女”は再び、視線を本へと落とすのだ。


 もう、視線も合わせなくなった“死”を前に、フリバーは内心舌打ちを繰り出した。

 見て分る。“彼女”はこの話題については、もう話さないだろう。

 きっと、同じことを繰り返し言うだけだ。それならまだ良い。最悪しつこいと、この場を追い出されかねない。

 彼女とは、まだ話したいことがあるからこそ、それだけは阻止しなくてはいけない。


 心の中で、に謝罪を浮かべながら、フリバーは違う問いに変えるしか出来なかった。




あとがき

本当は14話ですこれ、書き忘れていました…

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