第22話『呪いの勇者と思惑と』


 「ここを真っ直ぐ行って頂けたら、私の村に到着します。この辺で待機していますので、自由に調べて下さい」


 リッチーのニーナに案内された村はなんというか、凄く素敵でして肝試しするなら最高の場所でした。至る所に墓地があり、人魂やら墓のあちこちに穴が空いている。


 この墓穴は何でしょうか。ゾンビでも出るのでしょうか。ガイコツにふわふわした何かは、俺やアリアドネが通ると一目散に逃げて行く。


 逃げてぇのはこっちだよ。追いかける側が何故逃げるのか、逆に怖がられてしまっている俺は、やっぱり呪われているから何でしょうね。


 怖いのは俺の方なのに、不憫でなりません。


 「カケルさん?」


 「な、なんだ!? 俺は怖くねぇぞ! 幽霊なんか信じてないもんねー!」


 「呆れました。お化けが怖いなんて情け無い」


 「マリエルだって、暗いダンジョンでビービー泣いてただろうが!」


 「く、暗くて泣いていた訳じゃありません! カケルさんが私の胸触るからでしょ!?」


 「だから触ってねぇって言ってんだろ! 誰があれを胸と認めるか!」


 「カケルさん、嫌いです!!」


 ーーバチンッ!!


 いつもの豪快な平手打ちが炸裂した所で、目的地のリッチーが住む村まで辿り着いた。こんなホラーな場所でも、生活感はあるんだなと改めて感心した。


 街を練り歩くと、夜であるにしても不思議なぐらい人っ子一人いない。各家の隙間から大量の視線を感じるのだか、警戒されているんだろうか。


 そりゃ、この村のリッチー達も怖いよな。天敵のシスターに呪われてる俺が徘徊していたら、殺されると思って警戒するに決まってる。


 警戒を解く為に、エリクシアをテキトーな民家に出向かせて話しを聞いて貰うことにした。こんなか弱い少女が行けば、多少なりとも怖がらせずに済むだろう。


 「ねぇ、依頼で来たんだけど最近この辺で不審な事件は無かった?」


 「何だただの女の子かびっくりした。不審では無いが殺しならあったぞ。ところで、連れの化け物はなんだい? 呪われ過ぎじゃないのかい? 普通あれだけ呪われてたら死ぬよ!?」


|(うるせー! 呪われてて悪かったな!)


 村のリッチー達はやはり、ニーナ一家が事件の首謀者だと思っているんだろう。もう終わった話しの様な口ぶりで、俺やエリクシアに事件の内容を教えてくれた。


 誰に聞いても似た様な話ししか聞けず、情報が集まらないけど道端に酒で潰れたリッチーが転がっていた。流石にこんな所に居られても可哀想なんで、俺が引きずり安全な物陰に置いてやることにする。


 もう情報も貰えなさそうなんで一旦引き返そうと思ったが、酔い潰れたリッチーは急に何かを語り出していた。


 「ーーひっく! 誰も信じちゃくれねぇ。俺は確かに見たんだ。教会のローブを着た集団が村に来た。その日からだ、村に死体が出るようになったのは……」


 「なんだと!? 今の話し、詳しく聞かせろ!」


 そのまま、リッチーは眠ってしまいそれ以上の事は何にも聞けなかった。ただの戯言かも知れない。でも、聖堂教会は胡散臭い連中だ。何か繋がりがあるのかも知れないし、アクアにもこの件は話した方が良さそうだ。


 充分な収穫を得た俺とエリクシア達は、リッチーの村から撤退した。事件の真相が見えてきそうだな。


 「なぁ、アリア。聖堂教会とリッチーに関して何か知っていることはあるか?」


 「確か聖堂教会は、リッチーを殲滅対象にしていた歴史は有りますが、今は互いに和解していますのでそれ程悪い関係ではないと思いますよ」


 「なるほどな。だから、アリアに村のリッチーが恐怖してたんだな」


 「カケル様の方が怖がられていましたよ?」


 「悲しくなるからそれは言わないで下さい……」


 村の出口に出てニーナと再会した。可能な限りの情報は仕入れたと村に現れた侵入者の話しをして今日の所は解散する。


 屋敷に帰り、寝室で今日のことを整理した。やっぱり、どう考えても聖堂教会が怪しすぎるんだよな。明日、アクアと密会して真偽を確かめよう。


 また、事件に巻き込まれたなと悲観しながら俺は眠りについた。ニーナの冤罪を晴らしてやりたいが、出来るだろうか。正直言って不安です。

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