第13話『呪いの勇者と首狩りの王』


 「つまり、おっぱい揉み放題ということですか?」

 「それでも私は構いません!」


 最低だの、馬鹿だの、死ねだの、散々エリクシア達に言われて、体の至るところを殴られてしまいました。冗談だってのに本気にしやがって、痛くて泣いてしまいそうだ。


 それだけの信念があるのだから、きっと理由がある筈だ。アクアにそこまでして、俺達にお願いする理由について追求する事にした。


 「あの聖剣が眠るダンジョンで両親が死にました。今の今まで、あんな所に聖剣が眠っているなんて思いませんでしたけどね。魔王軍幹部が両親を殺したのです。その名を『首狩りの王』と皆は呼ぶらしいですが、そいつには殺しの拘りがあるんです」


 「物騒な話しですね。どういう手口なんです?」


 「一瞬にして人の首を跳ねて、その首をオモチャみたいに弄び、ぐちゃぐちゃにしてから人里に返すんです。私の両親はもう原型を留めていませんでした」


 「なんて酷い殺しを……」


 「その時に誓ったんです。私はギルドの受付嬢になり仇を取って来てくれる人を絶対に探し出すってね。ですから私は、あなたにお願いしたいんです。呪いの勇者である、貴方に!」


 「それは構わないんだけど聖剣は!?」


 「いいんです。それは私の出世が目当てなので、次いでにして貰えれば。私の目的は魔王軍幹部『首狩りの王』の討伐だけ。絶対に私の恨み、晴らしてくださいね」


 どうやら、聖剣に対するこだわりでは無く、深い憎しみから来る殺意が今回の行動理念だったらしい。


 エルムーアの街も、ギルド受付嬢アクアだって俺からしてみれば仲間みたいなものか。涙ながらに語るアクアに同情してしまう。俺の仲間を傷つけたんだ。


 ーー手強い相手だろうが、絶対に討伐してみせる。


 「みんな聞いてただろ? 反対な奴はいるか?」

 

 「カケル、絶対にたおそうね? 首狩りの王、絶対に許さない。毒で犯してあげる」


 「カケルさんの変態具合には反吐が出ますが、首狩りの王は絶対に倒しましょう!」


 「カケル様の側に入れるのなら、どこまででも着いて行きますわよ」


 「みんな、賛成だってよ良かったなアクア。明日には仇取ってやるからよ。もうその涙は悲しむ為に流しちゃいけないぜ」


 「ーーはい……。ありがとう……。ございます!」


 こりゃ今更、討伐出来ませんでしたじゃ格好つかないな。智治達より先に聖剣を回収しつつ、首狩りの王の討伐をしなければならんとは、ハード過ぎやしませんかね。


 やってやるさ。正直言って、聖剣はどうでもいいんだけどアクアの不安だけは取り除いてやりたいし、仲間もそれを望んでいるからな。


 俺達ならやれんだろ。幹部の一人や二人ぐらいなら大した事じゃ無いだろうし、勇者パーティのヒーラー、綾香の生存も多少なりとも気になる。


 ーー絶対に負けられない戦いが、始まろうとしていた。



 

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