車に轢かれ、目が覚めれば、汚染された武蔵野に!!〜そんな武蔵野をスキル『武蔵野』で再生させます!!

柊オレオン

武蔵野再生日記

俺の名前は武藤野村(むとうのむら)、自然を愛するニートだ。

ニートである俺だが、とあるきっかけで武蔵野に訪れることになった。

これは俺にとっては最高の機会、なんせ武蔵野は自然豊か溢れる愛された台地だからな。

自然愛好家である俺は武蔵野を堪能した。


「ふぅ〜やっぱり、武蔵野は最高だぜ」


自然を堪能し、街の人ともお話をして満足した野村。

気楽に歩いていると、「ぐぅ〜」とお腹が鳴る。


「あれ?そういえば、ご飯、全然食ってなかったな」


武蔵野に夢中になりすぎて、ついついご飯を食べることを忘れていた。

そういえば、街の人から……。


ーーあら、お客さん、どうだい?上がってご飯でも

ーーいえいえ、大丈夫ですよ、それよりこの…


などご飯のお誘いをもらっていたっけ、どうせならそのお誘いに乗ればよかった。

と後悔する野村。


「コンビニ近くにあるかな」


コンビニを探しにうろうろ探すが、見つからず。


「しょうがない、大人しく帰るか…」


結局帰ることにした俺は、歩道を歩いていると、ププッ〜と音が聞こえた。

振り返ると、車がこちらに向かって猛スピードで突っ込んでくる。


「うわっ!!」


俺は逃げる時間もなく、そのまま、轢かれた。



《スキル:武蔵野を獲得》

『どうか、武蔵野を救ってください』


耳元で囁かれる声。


その声で目が覚まし、目を開けるとそこには、薄汚い街の人々の服装、枯れ果てた木々、生臭い空気、ボロボロな家が広がっていた。


「な!?なんだここは!!」


最初、俺はどこにいるのかわからなかった。


「ってあれ?俺って車に轢かれなかったっけ?そうだ!!確かに俺は轢かれたはず!!まさかこれが転移!!異世界転移ですか!!」


と少し喜んだが、周りを見渡すと、どこか見覚えがある街や風景が並んでいた。


「なんか、ここ武蔵野ってぽくない?」


俺はそこら辺を歩いている住民に話しかける。


「あの〜すいません」


「ちっ」


「え…」


(今、舌打ちしなかったか?)


「あの、ここってどこなのか〜」


「ここは武蔵野だよ!!話しかけないでくれよ!!ペッ!!」


「あ、……ここって武蔵野なの!!!ぎよぇぇぇぇぇぇ!!!!」


目ん玉が飛び出しそうになる程驚いた。


「ここが武蔵野?いやいや、明らかに嘘でしょ、だって空気は汚いし、木々は枯れてるし、何より、住民の暖かさがない!!」


すると目の前にモニターらしき画面が表示される、そこには一言……。


《スキル:武蔵野》


「これって…」


さらにスクロールをするとさらに一言、添えられていた。


《ミッション:あなたが大好きな武蔵野を救え》


「なるほど、いいだろう!!」


俺は理解した、俺がここに転移された理由が……。


「俺が武蔵野を!!俺が知る武蔵野に再生してやる!!」


なぜこう思ったのかは俺自身もわからない。

ただ、武蔵野を救わなくてはいけないとそう思ったんだ。


「まずは、木々だな」


この生臭い匂いもそうだが、この原因はもっと別にあるはずだ。


それがこの木々だ。


「生臭いだけじゃない、この独毒の匂い、おそらくこれは『死骸』の匂いだ」


とはいえ、木々の再生なんて数年かかる規模だ。


「というわけでスキルの出番だ!!」


《スキル:武蔵野を使用しますか?》


「イエスだ!!」


《スキルの使用を確認しました、これよりミッションを行なってもらいます、それを遂行すれば、どんな願いも武蔵野関係に限り叶えることができます》


《では、ミッションです『武蔵野の良さを100文字以内で答えなさい』制限時間は30秒です》


「え?こういう系?ですか…なるほど思っていたのと違うな」


《残り25秒…》


「ちょっと、やばい、やばい、え〜と」


《残り20秒…》


「武蔵野は井の頭恩賜公園という有名な公園があり、調べでは住みたいランキングでは全国1位をとるほどで、交通面でもコミュニティバスが通称「ムーバス」があり、子供にも高齢者にも優しいところだ!!」


《……ミッションクリア、願いを言ってください》


「よし!!じゃあ、この木々を!!あの武蔵野の大自然を取り戻せ!!」


《了解しました、その願い…受託します、スキル:武蔵野を発動します》


緑色のオーラが武蔵野全体に広がっていく、オーラが木々にまとわりつき、枯れ果てた木の色が戻っていく。


「おお!!」


俺が知る武蔵野の自然に戻っていく。


「一体何が起こっているんだい!!」


次々と住民たちが、集まり、木々に驚きを見せている。


「おお!!これは、ありがたや、ありがたや」

「まさかこれは神の奇跡か」


「なんか、だんだん人が集まってきたな…いや、待てよ」


ここでスキルを使って再生してくのもいいが、それでも限界がある、ならこれを気に…。


「皆のもの〜聞け!!」

「なんじゃ、あやつは!!」


「俺がこの木々を再生させた!!張本人!!神だ!!!!!」


「なんんじゃと!!」


住民達はその大声と内容に耳が惹かれる。


「ど、どうせ嘘だろう」

「そうよ…」

「神だなんて…」


「疑う気持ちはよくわかる!!ならこれを見よ!!」


そう言って俺は枯れた葉っぱを手にもつ。

すると枯れた葉がみるみるうちに緑色を取り戻していく。


「なっ!!」


「みたか!!これが証拠だ!!」


「ま、まさか」

「本当に…」


「みんな聞いてほしい、俺はこの武蔵野をあるべき姿へと再生すべく舞い降りた!!だが俺だけの力では全てを再生することはできない!!頼む!!俺に力を貸してほしい!!みんなの協力が必要なんだ!!」


大声でみんなに、武蔵野の住民に聞こえるように俺の言葉を届ける。


「じゃが、この武蔵野はすでに終わっておる、わしらにやることなど」


「ある!!いいか、一人の力でできなくても、みんなでこの台地に住む人々の力が合わさればできないことなどない!!俺が保証する!!」


「本当にできるのか」


「できる!!だから、雄叫びをあげろ!!この台地をあるべき姿に一緒に再生しよう!!」


少しの間、人々は静まり返った。

しかし…


「そうだ、俺たちが力を合わされば」

「そうよ、私たちなら」

「あの時の武蔵野を取り戻そう」

「や、やるぞ!!」

「俺たちはやるぞ!!」


『俺たちはやるぞ!!!!!』


武蔵野の台地が住民が叫んだ。


「よし!!じゃあ、今からやることを説明するぞ!!」


《スキル:武蔵野を発動します》


まずは、建物の再築、特に一軒家などは再築させた。

これで街並みの風景がガラリと変わる。


《スキル:武蔵野を発動します》


そして次にゴミだ。

ゴミは匂いの元であり、台地を汚す原因となる、徹底的にゴミを拾い集め、捨てるのだ。

公園などにはたくさんゴミ箱を設置し、ゴミを見つけ次第、捨てれるようにした。


《スキル:武蔵野を発動します》


さらに衣食住だ、見た目はまず、街の雰囲気を作る重要なものだ。

住はやってあるからよしとして食も大事だ。

人を呼ぶならやはり、食事にもこだわる必要がある。


「だいぶ、よくなったな」


武蔵野再生を始めてから1ヶ月、スキルは計4回使った。


住民をやる気にさせることには成功させたが、再生させるための材料や基盤を作るためにスキルを使った。



《では、ミッションです、『武蔵野の有名な公園は?』制限時間は10秒》


「井の頭恩賜公園(いのかしらおんしこうえん)!!」


《……ミッションクリア》


《では、ミッションです、『武蔵野の観光地を三つ答えよ』制限時間は30秒》


「武蔵野プレイス、西窪稲荷神社(にしくぼいなりじんじゃ)、武蔵野八幡宮(むさしのはちまんぐう)!!」


《……ミッションクリア》


《では、ミッションです、『武蔵野の市長を答えよ』制限時間は10秒》


《5秒経過》


「松下 ○子!!」


《……ミッションクリア》



てな感じで難なくとミッションに成功し、武蔵野は順調に再生しつつあった。


「それにしてもこのスキルなかなか使えるな」

足りないものは全てスキルで補える、あとは街の人たちに任せるだけ、1番のなんかである木々の再生はスキルでなんとかできた。


「あとは…」


《再生度:90%》


「これが100%になればいいんだよな」


そして俺は最後に100%にすべく、最後の手を使う。


「スキルを発動するぜ」

《では、ミッションです、『あなたにとって武蔵野とは?』制限時間は30秒》


「最後にこのミッションか、もしかしてスキルさん…わかっておらっしゃる?」


《残り25秒》


「そう焦んなって、答えはとっくに決まっているんだから」


《残り20秒》


俺は大きく息を吸って、吐いてを繰り返し、深呼吸をする。


《残り15秒》


「俺にとっての武蔵野とはな〜〜」


《残り10秒》

《残り5秒》


「『3万年の歴史を湛え、1000万人が暮らす自然豊かな台地』だ」


《……ミッションクリア、願いを言ってください》


「ああ、願いはただ一つだ…『台地の再生』を」


いくらこれ以上頑張っても、100%にならないことはわかっていた。

だってこの台地は土の奥底から腐っていたから、だからここでスキルの出番だ。


《了解しました、その願い…受託します、スキル:武蔵野を発動します》


地面が光り輝く、それは台地を浄化した。


「どれどれ…」

《再生度:100%》

《おめでとうございます、無事、武蔵野は救われました》


「ふぅ〜大変な1ヶ月だったな」


今では空気が良く、ノスリの鳴き声が心地いい。


「ありがとう、神様」


「これこれは、おばあちゃん、これも全て住民達が力を合わせたおかげです」


「いえいえ、神様がいなければ今頃…本当にありがとう」


「そんな、今日はゆっくりしてください、疲れたでしょう」


「そうだね…」


そう言っておばあちゃんは家に帰った。


「さてと…」


俺はふと思った。


「これってもしかして、これで終わり?」


『そう!!これで終わりです!!再生した武蔵野で幸せに暮らしてくださいね』

(神より)


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


『これにて完!!』(神)


ーー完ーー


「無責任だぁぁぁぁ!!!!」


『そんなこと言われても…やれやれ』(神)

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