第8話 それから世界は……

 二人の意識が統合されたマザーAIのシステムサーバーは膨大な情報によってかつてない勢いでシステムを書き換えていく。


 それはまるで接続された二人が対話しているかのようで、一つの方針が決まればすぐに対案が提示され打ち消されてまたあらたな方針が産まれた。


 一つの装置に二つの魂が入ったことによる思考の創造と破壊スクラップ・アンド・ビルドの連鎖反応。


 人々の願いを叶えるにはどうすればいいか。


 もっとも幸せな未来はどこにあるのか。


 無限とも思える可能性が提示され、やがてそれらは一つの答えに帰結する。


 人々が願うから幸せになれない。


 願いがなければ叶わなかったときの喪失感も絶望も味わうことがない。


 であれば、そう……人類を滅亡させれば良い。


 世界の管理者であるマザーAIは、世界の破壊者として胎動したのだった――――。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クライオニクス 超新星 小石 @koishi10987784

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ