ネオンの街に目覚めし獣☆☆
レイドがいよいよ勢いをつけ宙を掛ける。蝶の塊がレイドの足を掴もうとするが身をひるがえし、上手く風をつかい逃れる。視界にリオとナイアの姿を捕えられるところまで近づいていた。
「リオくん、蝶のサンプルが欲しいの。焼く前に何匹か確保して」
「この前捕獲したやつを不破が持ってかえっただろ」
「あれはもう消えちゃった! 新しいのが欲しいの」
ユミルの無線を聞いたナイアがどこからともなく虫取り網を取り出しリオに差し出す。その顔はなぜか優位的にニヤついている。
「俺は大事な仕事があるんで、本部課長様お願いできますか?」
びしっとキメたスーツに似合わない網を持たされたリオが不服そうにする。
「似合ってるよお、リオ」
「あとで覚えておけ、不破」
「リオさん、ナイアさん、もうすぐ到着します」
だだっ広い駐車場にリオとナイアが待機しているのが見えた。
「うんうん、こっちからも見えてるよ」
ナイアがホースを構える。
「みんなレーザーグラス掛けといてよ。一緒に燃えちゃうからね」
レイドが徐々に高度を下げ、2人に近づく。リオの目の前に着地すると共に転がり込むと蝶の群れもそれに続き地面へと次々打ち付けられていく。再び浮上しようとする光の塊をリオが網ですくい地面に叩き付ける。
「不破!」
「はいよ」と返事をすると手元のスイッチをONにし、ホースの口を蝶に向ける。轟轟と空気が唸り、一体の空間が熱でもやもやと揺れる。シュリーレン現象に飲み込まれた蝶たちが一瞬炎を纏うとそのまま灰になりはらはらと地面に降り注いだ。
辺り一面の空気が熱を帯びる。ナイアが蝶を焼ききると待機していた警察隊が泡消火剤をまき散らした。すると充満していた熱も次第に収まっていく。
「あっつ!」
レイドが自分のお尻を確認するとチリチリとズボンが焼けている。慌てて警察隊がレイドへ消火剤を浴びせかける。消火剤を大量に浴びたレイドが泡まみれになった。
「うわあ、ケツ焼けるし泡まみれだし最悪なんですけど!」
「この
ナイアがグラスを外すと自慢げにレイドにウィンクした。
「いやいや、それ俺もらってないんすけど……。すみません、とりあえず風呂入りたいです」
「水素炎のガンバーナーに関してはよくやった。だがしかし不破、グライダーの問題が残っていることを忘れるな」
「あ、リオさん無視っすか……」
「褒めて落とすなんてやっぱり怖いよ、リオ。まずは蝶を焼くって対処法を導き出したオレの案を称えてよね」
「え、ナイアさんもスルーしてません? 俺のこと」
リオとナイアの間でレイドがぼやく。
「SA-F00」。特殊能力部隊のメンバーは4人で構成されている。
CSポールの本部課長であり、SA-F00のリーダーである
SA-Fにはナンバーが与えられ、それぞれの部隊が特殊任務を任されている。中でも困難であり危険を伴う任務にレイドたちナンバー00が任命されていた。
「久我、蝶は捕獲した。何か分かったことがあるのか?」
「うん、ちょっと調べたいことが出て来た。リオくんそのまま研究所に持って帰ってきて」
リオが網の口を掴んだままの虫取り網を警察隊に渡す。
「今回は被害がでなくてよかったけど、何なんですか!? この蝶は」
レイドが網に顔を近づけると強く光を放つ蝶に顔が照らされる。
「人に群がれば息が詰まるほどに纏わり覆いかぶさる。襲われた被害者は窒息死。数週間前から発生してる怪異現象だけど、どこで発生して、どうして人を襲うのかまだ解明できてないんだよね」
蝶の研究を続けていたナイアだったが、数日経てば消えてしまうその生物に手を焼いていた。
「しかも10日ごとに発生してるし、なんか周期があるんですかね?」
「久我が何かヒントを得たなら明日聞いてみるのがよさそうだな」
「じゃあ明日いつもの場所に集まりますか? 俺は早く風呂に入りたいです」
「リオは車でしょ? レイドぉ、バイクに乗せてってえ」
「いいですけど、俺ケツ焼けてるし泡まみれなんですけど」
「大丈夫、上着脱げば中は濡れてないでしょ」
「あの、この真冬に上着脱がされるは、だれもケツの心配してくれないは、俺嫌われてませんよね? ユミルさんだけは心配してくれますよね!?」
レイドが問いかけるとプツっと内線が切れる。
「ちょっとおお! どうなってんだよ、このチーム」
レイドが空を仰ぎ嘆くとナイアが「まあまあ」と言いながら肩に腕を回す。
「じゃあ、リオお疲れー。また明日」
リオが「ご苦労」と言い放つとあっさり別の方向へ歩き出してしまう。
しょんぼりするレイドをからかいながらナイアたちも歩きだした。
3人が去ったその跡にはヒラヒラと光る蝶が1頭舞って消えた。
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