名前




「いやー、もうなんだよ、この可愛いの。」


豆太郎がデレデレとベビーベッドに寝かされた赤ん坊を見た。


「ちゃんと指とか五本あるんだぜ。

足もぷにぷにでさ、柔らかくてもうたまらんな。」

「まるでお前が父親みたいだな。」


金剛こんごうが呆れたように言った。

そのそばに椅子に座ったゆかり紫垣しがきがいる。


「でも本当にお世話になっていいのかしら。」

「良いに決まっているだろ、

産後だろ、そのお世話とかケアハウスだからな、ばっちりだ。

いずれここでも出産後のお母さんの世話とか、

その方面もやりたいと思っているんだぜ。

企業展開だ。」


豆太郎が胸を張る。


「まあそういう事だ。

豆は今やる気になっているからな、

テストパターンだと思って紫さんも協力して欲しい。」


金剛が二人を見て言った。


「ところで紫さん、お父さんに連絡したかい?」

「ああ先程私が映像を撮って送りました。」


紫垣がスマホを見せた。


「なら荒木田さんも何かしら理由を作ってやって来るな。

紫垣さんも覚悟はあるか?」


金剛がにやにやしながら言った。


「こ、怖いな、はは。」

「お父さんが何か言ったら私がちゃんと言い返します。」


紫が言う。

みなは笑った。


「それでさ、この子の名前はどうするの?」


豆太郎が聞くと夫婦が顔を合わせた。


生万いくま紫垣しがき生万いくまにしようと思って。」


紫が微笑んだ。


「一と千の上の万よ。そして生きるの。」


それを聞いて豆太郎はにっこりと笑った。


外では桃介とピーチがじゃれて遊んでいる。


日差しが暖かい午後だった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一角と千角 1 ましさかはぶ子 @soranamu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説