奇襲  4





紫垣しがき製菓の会議室はすっかり様子が変わっていた。

まるで違う空間のようになっている。


古いテーブルやパイプ椅子はどこにもない。

狭いはずの部屋には奥行きが見えない闇があった。

それを背にして紫垣製菓の重鎮達が立っている。


だが皆生気はなく、浮いているような感じだ。

そしてその中心に常務の紫垣がいる。


周りの彼の身内の口や鼻、目からも赤い粒が湧きだし、

それが全て紫垣の体に入って行く


そして上からも小さな赤い粒が無数に飛んで来る。

それは今まで彼がまき散らしていた小さな粒なのだろうか。


そしてそこを囲むように外にあかい装束の人間が、

何十人もじゅを唱えながら立っていた。


そこにいる全ての人間は目があかく光っていた。

その色はまるで怒りの色だった。


それは誰に怒っているのだろうか。

紫垣は自分の今までの人生に怒っていた。


だがこの怒りは何かが違う。


その奥の奥に人では計り知れない

深い恨みのようなものを感じさせた。

一体誰が恨んでいるのだろうか。


いつからこのような事が続いているのか、

そしていつまで続くのか。


赤い粒の流れは止まらない。





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