素直すぎる男




「おお、豆ちゃんからラインが来たぞ。」


千角が嬉しそうに言った。


「えっ、どんなライン?」


一角が覗き込む。

そして二人は爆笑した。


「ほんとに、ほんとうーに豆ちゃんは素直過ぎる。」

「『もう一度聞く、お前たちの本当の目的はなんだ』

ってどストレート過ぎるよ、豆太郎君。」


一通り笑いが収まった後に二人は顔を合わす。


「目的と言っても豆ちゃんにレストランで言った事だけどなあ。

やっぱり疑われているんだなあ。」


千角がふっとため息を漏らす。

が、その心の動きに自分でも不思議を感じた。


「なんだろう、豆ちゃんに疑われたのが俺ちょっと悲しいかも。」


一角がふふと笑う。


「なんか豆太郎君は不思議な人間だな。」

「そうだな、バカ正直でバカ真面目だ。」

「まあ、本当に玉を集めるだけだと返事すれば良いんじゃないか。」


千角が返事をする。

するとまた彼がそれを見て吹き出した。


「『了解』だって。」


二人は何とも言えない気持ちになった。


「鬼ですら行く末が心配になる人間って何だろうな。」

「それが豆ちゃんなんじゃないの。」


と再び千角がスマホの画面を見た。

そしていきなり立ち上がる。


「どうした、千角。」


一角が見上げる。


「豆ちゃんは底抜けのアホウだ。」


千角が一角に画面を見せる。


そこには

『今夜紫垣製菓に奇襲をかける。お前らも来い』

と書いてあった。


「そうだな、豆太郎君は正統派のアホだ。」


だが彼らは一瞬にして部屋を出る。

戸締りだけは忘れずに。





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