金剛の足





「なんだお前、鬼に奢ってもらったのか。」


金剛こんごうが豆太郎から話を聞くと豪快に笑った。

その前で彼とゆかりが小さくなる。


「いや、その、俺が払うと言ったんだけど、レシートを取られて……。」

「別に良いがそんな話は聞いた事が無いな。

ともかく面白い鬼だな、その一角と千角は。

まあいい、何にしても先程の話は非常にまずい。

それに赭丹導あかにどう……。」

「じいちゃん、赭丹導知っているのか。」

「ああ、知っている。この足も奴らにやられた。

30年程前に赭丹導の本部を掃討そうとうした。

その時足を痛めたんだが、歳を取ったらついにダメになった。」


金剛が足をさする。


「いわゆる終末を説く宗教みたいなものだ。

この世の悪は全て人を起因としているそうだ。

いわゆるカルトだな。

全国の一寸法師のみんなでその本部を壊滅させた、と思っていたが。

生き残っていたんだな。

しかも逆数珠ぎゃくじゅずを増やすとは。

あの時からおかしな術法をやっていたからな。

それで壊滅させるしかないとなったんだが。」


彼がため息をつく。


「どちらにしても本部に連絡だ。大騒ぎになるぞ。」

「それでじいちゃん、鬼達はどうする。

あいつらは玉が欲しいだけだと言っていたけど。」

「そうだなあ、何に使うかだよな。

持って行くだけなら良いが、

それで悪さをするとなると成敗するしかない。」


豆太郎は彼らを思い出す。

玉を集めて世の動乱を誘うような感じには思えなかった。

ただ、集めたいだけ、と言う様子だった.

だが、先入観を持ってはいけない。

豆太郎は自分の頬を叩いた。


「おう、どうした、豆よ。」

「いや、自分に気合を入れた。鬼の目的は俺が探るよ。

ちゃんと報告する。」

「そうだな、鬼とラインで繋がっているのは

多分世界でもお前だけだ。」


金剛が笑う。


「紫さん。」


金剛が紫を見た。


「多分あなたのお父さんもこちらにいらっしゃると思う。

日本でも有数の法術師ですから。

その時にお会いすると良い。」


紫が頷く。


「俺、紫さんを送っていくよ。」

「いえ、歩いて帰ります。」

「良いから、良いから。」


金剛は二人を見送る。


若い二人だ。


この二人を争いに巻き込まなくてはいけないのかと

金剛は気が重くなる。


壊滅させたはずの赭丹導が残っていたのは驚きだが、

それが玉を増やすほどの力を持ったのはなぜだろうか。

分からないことが多すぎる。


金剛はパソコンに向かった。

本部に連絡しなければいけない。









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