赤い粒





赭丹導あかにどうなんて初めて聞いたな。」

「あいつら気色悪かったよな。」


祖母の家の縁側に座り

地獄と現世の間の世界を二人は見ている。

彼らにとっては馴染みのある場所だ。


「なあ、一角、どうする?

なんだか面倒くさい話になって来たな。」

「ああ、どうするかな。」


一角は空を見た。

その色は永遠の獄色ごくしょくだ。


「ただ単に宝探しのつもりだったのにな。

すぐ終わると思ったけど。」

「それが世界を滅ぼすなんてのが出て来やがったから、

ややこしくなったな。」


千角がため息をついた。


「この世が清浄になったら俺らも消えると言うのは

かなり嫌だけどな。」

「ああ、実際出来るのかどうかは僕には分からないけどね。」

「でもなあ、あいつらにやられっぱなしと言うのも

悔しいんだよな。」


千角が舌打ちをする。


「宝も欲しいが、あいつらにも仕返しがしたい。

ばあちゃんも言っていたけど、

あいつらの邪魔をして玉を手に入れるのも面白そうだよな。」


一角がふふと笑う。


「そうだな、あいつらが集めるのが嫌になるくらいの

嫌がらせをしてやりたいよ。」


二人の目が合う。


「集めるか。」

「ああ。」

「それならば……。」


一角が巻物を出す。


「おばあちゃんは役に立たなくなるかもと言っていたけど、

とりあえず今玉がある場所は分かるから確かめよう。」


だがそれを広げると地図の一か所が激しく赤く光っていた。


「これは紫垣製菓のある辺りだ。」

「こりゃ、どういう事だ。」


二人は慌てて部屋に戻った。




「こりゃ……。」


梅蕙ばいけいが巻物を見て驚いた。


「他の玉が全部ここに集まっているのかね、

地図のほかの所はどこも光ってないよ。」

「ちょっと前に見た時は色々な所が光ってはいたんだよ。

でさっき見たらこうなっていた。」

「あっ、ここにぽつぽつ光っている所がある。」


千角が地図の端の方を指す。

微かに赤い光があった。

それは見ているうちに素早く飛ぶように動き、

紫垣製菓の激しく光っている所へ飛んで行った。


よく見ると粒のような赤い光がそちらへと

どんどん飛んで行く。


「ヤバいねえ、ヤバいよ。」


三人は顔を見合わせた。







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