紫垣製菓  1





「なんか疲れたなあ。」


千角が伸びをしてごろりと横になった。


「おい、あのおにおに豆はここの製品だぞ。」


ちゃぶ台の上にノートパソコンを置いて一角が調べ物をしていた。

一角は眼鏡を無くしたが新しいものをかけていた。


ここは鬼頭アパートと言う古いアパートの一室だ。

鬼頭アパート、鬼の頭か良いじゃんと言う千角の一言で決まった。

現世が長くなりそうなのでここを借りたのだ。


「おにおに豆は紫垣しがき製菓のお菓子だな。主に豆製品を扱っている。

あのおじさんは柴垣しがき清二せいじ常務だ。」


紫垣製菓のサイトを一角が画面に出した。

そこには会社からのあいさつとして

常務の紫垣の写真とコメントが載っていた。

千角がそれを見る。


「恵まれない子供達の保護活動を続けています、か。」


二人は苦笑いをする。


「常務って偉いさんか?」

「まあ、結構な上だよ。でも親族会社らしいからな、

実力ある常務かどうか分からん。

社長とか上の人達はみんな紫垣苗字だ。

この会社は創業95年だって。老舗だな。」


千角が画面の紫垣を軽くつつく。


「こいつがあの玉の粒をまき散らしているんなら、

この上の奴らも玉を持っているんじゃねぇか。」

「そうだなあ、あり得るよな。」


一角は会社の場所を調べる。


「この前の子供の時も親が玉を持っていたからな。」

「ああ、親の玉を抜いた後喰ってやろうと思ったけど、

タバコくさくて食欲無くしたぜ。」

「家じゅう臭かったな。」

「玉は臭くなくて良かったよ。」


一角がノートパソコンをしまう。


「会社はわりとこの近くだ。一度行ってみるか。」


今は黄昏だ。

夜が近い。

二人は窓を開けて外に飛び出した。

一角が後ろを向き、指を軽く動かすと

開け放たれていた窓は静かに閉まった。





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