愛の息吹

 愛の育て方など忘れてしまった。

 誰かを愛したのはいつのこと。不確かな記憶は無言を貫き、あれは幻想だったと思わせるほど愛の感覚が薄れている。


 きっとこんなふうだったろう。

 たわいない会話が微笑みを呼び込む日常、大切な人のそばにいる幸せ。悲しい、楽しい、そして言葉にできない気持ちも包んでくれる居場所があった。弱い自分を隠さなくていいと、優しい瞳が宥めてくれる場所だった。

 絆は共有したものの結晶なのだろう。思い出、時間、好きなもの、雨模様の日々。あまりに多すぎて、袂別の後もそう簡単には解けなかったけれど。


 時は経ち、新たに手を繋いだ二人がショーウィンドウに映る。

 大丈夫。私達、育ち始めた。

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