クニとの出会い

プールの授業が始まった。一回入ったっきり欠席見学をしている。理由はいつでも生理と書いた。髪は乱れるし何よりダサいスクール水着を着なくてはいけない意味がわからない。

校庭の日陰に座りプールの授業を眺めていたらこちらに向かって歩いてくる男が見えた。

背が高くパンチパーマ、ポケットに手を突っ込み、ボンタンをヒラヒラさせながら近づいて来た。

知らない顔だな…

何気に見ていた。

「何だよ」

あたしを見下ろし立ちはだかった。

「気持ち悪ぃ」

何だか頭にきて咄嗟に吐き捨て立ち上がった。

「何だよお前…気持ち悪いって」

大きな目をキョロキョロさせ動揺している様だった。あたしは気にも止めずサッさとその場を後にした。

その後もプールの授業で顔を合わせた。

「お前ひどいね‥気持ち悪いって何だよ」

大きな身体をユラユラ揺らし何度も繰り返し呟いた。それが何だか面白くてからかった。

「気持ち悪いから気持ち悪いんだよ」

「お前‥そんな事言うなよ」

スネて大きな身体を小さく丸めた。

なぜか憎めないこの男は、クニと呼ばれていた。その世界では名が通った一目置かれる存在だった。この学校以外の、その世界にも精通していた。

教室にいない時は大抵、保健室で寝ている。

それを知ったのは後の事‥

「クニ呼んで来てくれない?」

クニと連るんでいる野村に頼まれた。

「何で?面倒くさい」

また揉め事か?問題が起きると、クニが借り出されるのを知っている。

「俺すぐに行くとこあんの。頼むよ」

野村が頼み事なんて珍しい。よっぽどの事か‥

「どこにいんの?」

「教室にいなかったから保健室にいると思う」

「保健室行っていなかったら、もう知らないよ」

保健室に普段用はない初めて来た。

ドアを開けると先生の姿はなかった。カーテンが閉まっていたから中を覗くと、クニがベッドに横になっていた。シャーッとカーテンを思いっきり開けたら、音にびっくりした様にクニが目を開けた。

「あんた、こんなとこで寝てて先生に怒られないの?」

意外な訪問者に驚いてる様だ。

「何だよ…お前‥」

寝ぼけているのか‥目が泳いでいる。

「俺はね~いつでも来て休むように言われてんの」

なんだそのVIP待遇。

「あ~そうか。クラスで問題起こされるよりマシだもんね」

「お前は何にも知らないね」

意味深に笑った。

「この間なんてよ~先生の家に来て休んだら~って言われたぜ。ここだけの話」

からかう様にニタッと笑った。想像を越えた話に何故だか焦った。

「それで?行ったの?」

クニは、あたしの反応が面白かったのかニヤニヤと笑った。

「どう思う?」

なんか‥ムカつくな‥

「どうでもいいわ」

「行く訳ないだろ」

あたしの言葉に被せるように言った。

こんな話しに来たんじゃなかった‥予期せぬ話に本来の目的を忘れる所だった。

「あ~野村が呼んでたよ。どっか行くとこあるって言ってたけど‥それ言いに来ただけだから伝えたからね」

何か言ってたけど用は済んだ。さっさと保健室を後にした。

色々とヤバい奴‥


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