親切な通行人

影神

明け方



久しぶりに地元へと戻って来た友達を送った帰り道。



もう少ししたら、辺りは少しずつ。


朝へと切り替わってゆく時間に、なるのだろうか。



友達「ありがとうね?」


「楽しかったぜ」


友達「また遊ぼう」


「身体に気をつけて」


友達「そっちも。


あっ。それと、、


"近道はしないで"


帰って、ね??


遠回りして、帰ってね?」


「何でだ??


どういう事だ??」


友達「良いから。



近道だけはしないで。」



友達の言ってる事が理解出来なかった。


運転も嫌いな訳じゃ無かったし。


それはそれで良かったんだけど、、



バックミラーに映る友達の見送りが、


視界に入りながら、ハンドルを捻った。



「近道って、、どこが近道なんだ、、?」



さっき送ったのは、おばあちゃんの家だった。


子供の頃に何回か行った事があるらしいが。


そういう記憶は何故か無い。



友達のおばあちゃんの家は、


少し離れた山の中にあって。


2人の家からは少し遠かった。



真っ暗な道を。


ライトの光を頼って進む。



ナビで設定した帰路を。


鼻歌混じりに歌って、俺はドライブを楽しんでいた。



♪♪♪♪♪♪♪♪♪



『400m先、左です。』


ん??



ナビは曲を遮る様にして、何回も"曲がれ"と言って来た。


だけど、ずっと気にしない様にはしていたのだが。。



こう邪魔されては、鬱陶しくなる。


そして、気になってしまった。。



ナビのモニターで、曲がれと言っている方向には。


道が、一切。無かったのだった。



『近道はするな』



の警告は。


好奇心と。夜のテンションで。


俺を。逆にその場所へと仕向けた。



カッチ、カッチッ、、



曲がった先は、きちんと整備された、


コンクリートの道だった。



「何だ。


道。あんじゃん。」



周りは少しずつ明るくなり。


緑と青を混ぜた薄い色をしていた。



「何なんだ。


ここは、、?」



草木も丁寧に手入れされていて。


先程の道よりもよっぽど良かった。



「何が近道するなだよ。


もしかして、ジョークか??」



朝いちの新鮮な空気を吸いたくなって。


窓を全開にした。



「、、寒っ。」



ひんやりとした空気。


少し凍る様な感覚。


でも、嫌いじゃ無かった。



暫く進むと、左側に。


立派な入り口の様な建物が見えた。



「何だこれ。。」



その紅い門の様な建物が気になり。


俺は端に寄せて、車を止めた。



開いている窓からその景色を眺める。



「、、へぇ。」



何となく、神秘的な感じがした。


明るくなったら行ってみようかと迷っていた。



だが。


「、、あれ。。」



エンジンが掛からない。


「、、まじかよ。」



少し脇道に逸れた道。


だが、きちんと整備されている道路。



きっと。誰か来るだろう。。


いや、、


もしかしたら、民家があるかも知れない。。



窓は空いたままだったから、一応。


貴重品だけを持って、外へ出た。



「はぁあ、、あっ。。」


大きく背伸びをした。



普通の道なら。


きっと、車が止まってしまったら、


少しぐらいは焦るのだろうけれども。



その時は焦る事は無かった。



何とかなると思った。



道を少し進むと。


大きな影が見えた。


「やべっ、、



熊か、、?」


野生動物の事をすっかりと忘れていた。


ちょくちょく看板にも警告が出ていた。



「もしかして、、



この事を言っていたのか??」


少し立ち止まって様子を見る事にした。



まだ微妙に暗い道で、目を凝らす。


「、、動いては、、ない。」



ゆっくりと確認しながら。


その影に近づく。



慣れた目が捉えたのは、大きな石像だった。



「、、何だ。これ」



気持ち悪い。



それがあっていた。



顔だけが描かれた、三角形の様な大きな石像。


その石像は、門の方を向いていた。



「あれと、何か関係あるのか??」



道の先へと目をやると。


道は登り坂になっている様だった。



「、、。」



誰かが居た。


誰かが歩いて来ていた。



朝の散歩の人だろうか。。



俺は、その人に声を掛けてみた。


「すいません、、



この辺の方ですか??



車が止まっちゃって、、」



その人はゆっくりとこちらへと向かって来た。


「おはようござい、、ます。。」



長い髪の毛。


でもその人は何かが違っていた。



『首が曲がってしまっているのですが、、


それでも宜しいですかね??』



捻れる様にして。


身体は、こちらが前になっているのに。



顔は、空を向いていて。


下へ垂れ下がった長い髪は、


歩く度に横へ揺れていた。



「うわぁああああああ!!!」
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親切な通行人 影神 @kagegami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ