最終話 こんなはずじゃなかったんですがっ⁉︎

※※※※※



 目が覚めると、自分の部屋だった。

 ……じゃあ、全部、夢?

 むくりと起き上がると、毛布がずるりと落ちる。肌をすべる生地の感触に違和感を覚えた。

 ん、この感覚……服はどうした?

 視線を胸元に向ける。白い膨らみが剥き出しになっていてびっくりすると同時に、アザのようなものがうっすらと肌に残っているのが目に入った。


「あ」


 アメシストとシトリンと一夜を共にしたのは夢ではなかったようだ。肌に残っているのは、アメシストがつけたキスマークに違いない。

 アメシストさんは私の胸、好きなんだろうな……

 私は痛みを覚えて頭を抱える。


「いや。ないわ……次って、無理でしょうよ……」


 約束をしろと言われて頷いてしまったのを思い出す。眠っている間に移動させてくれたほかは、特にこれといった異常はなさそうだ。その点については安堵できたが。

 どうしよう。

 こんなことを相談できる相手がいないことに気がついた。なんてこった。一人で対処せねばならない。

 ずっと唸っていても仕方がないので、私は着替えることにする。

 ベッドから出てキョロキョロすると、椅子の上に制服を見つけた。私の制服はきちんと畳まれており、服の上に手紙が添えられている。

 嫌な予感。

 私はおそるおそるそれを摘んで、文面に目を通した。


 シトリンより、マスターへ。

 次の予定は週末でどうだろうか。任務がなければ、買い物に行くことを提案したい。よき返事を求む。


 几帳面な文字はシトリンのものだとすぐにわかった。彼らしい堅い文面だが、デート及びそのあとのお誘いである。

 あれ? アメシストさんは?

 さんにんで、とは書いていない。ほかに手紙があるかと思って服やその周辺を探るが、アメシストからのものはなかった。

 直接言いに来るつもりなのかしら?

 見た目は似てるけれど、行動はそれぞれなのかもしれない――そんなところを微笑ましく感じはじめたところで、意識を切り替えた。

 私は壁! 推しに挟まれたいわけじゃない‼︎

 どうしてこうなった。

 ……私はアメシストさんとシトリンさんがなかよくしているのを見守りたかっただけなんだけどなぁ。

 うまくことが進まないことを憂鬱に感じながら、私は制服の袖に手を通したのだった。



《終わり》

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