美月、正気に戻るんだ!

 妹の美月みづきが小3の時によく言っていた「好き」と「結婚して」を適当に答えて、その場しのぎした僕。美月はそれを覚えており、結婚できる歳になった今、再び迫ってきた。


兄妹の結婚はご法度だぞ。必ず目を覚まさせる!



 久しぶりに自分の部屋に戻った僕。物の配置は変わってないけど、母さんが時々掃除してくれてるらしい。ありがたいことだ。


たまたま目に入ったので、本棚にある好きだった漫画の1巻を取って読んでみた。

紙の劣化も気になるが、僕はこれを面白いと思っていたのか。


今だったら、1話切り確定だ。


僕は漫画を本棚に戻した後、ベッドに転がり美月のことを考える。


アイツのあの態度。僕に飽きるどころか、悪化してるよな。

僕が実家を出たのも影響してる?


兄妹の仲が悪くて、得をすることはない。

できればこの2泊3日中に、ある程度は仲を戻しておきたい。


…日々の疲れと、美月に振り回されたせいか? 眠いな。夕飯まで昼寝するか。



 …なんだ? 隣に何かがある? 何かの気配を感じるな。

仰向けで寝ていた僕は、首だけ横に向け気配の正体を探った。


なんと美月がベッドに入り込んでいたのだ。目が合ってしまう。


「あ…、起こしちゃった? ごめんね♡」


「うわっ!! 何やってるんだ。美月」

飛び起きる僕。心臓に悪すぎる。


「そんなに驚かなくても良いじゃない。傷付いちゃうよ…」

しょんぼりする美月。


「ご…ごめん」

あれ? 何で僕が謝ってるんだ? 悪いのは美月だろ。


「何で僕の布団に入ってるの?」


「マッサージしてあげようと思って、部屋をノックしたんだけど、返事がなかったから勝手に入ったの。兄さんの寝顔を見てたら、あたしも眠くなって布団に入った訳」


眠くなったなら、自分の部屋のベッドに行けよ。それよりも…。


「マッサージ?」


「そう。やってあげるよ。どうする?」


今の美月を理解するには、話さないと始まらない。

理解できずに振り回されるかもしれないが、何とかなるだろう。…多分。


「なら、お願いしようかな」


「じゃあ、うつ伏せになってね」


言われた通り、うつ伏せになる僕。まだ眠いので、目を閉じる。


「始めるよ」



 …なんか柔らかい感触がする。美月の奴、何やってるんだ?


僕は眠い目を開けて、うつ伏せのまま後ろを観た。


美月は胸を僕の背中や腰に押し付けていた。


「何やってるんだよ?」


「見てわからない? マッサージだけど。兄さん、気持ち良い?」


女の人の胸って柔らかいんだな…。いや、柔らかすぎないか?


「美月。お前、もしかして?」


「気付いちゃった? ノーブラでやってるからね。脱ぐのは恥ずかしいから、Tシャツ越しになっちゃうけど許してね♡」


羞恥心はあるのか。それは安心。…じゃなくて、そこまでやる必要あるか?



「次は仰向けね。体勢を変えて」


美月は僕を仰向けにしたいようだが、ちょっとマズいぞ。

胸の感触が気持ち良かったから、が元気になりかけている。


「いや、仰向けは良いや。美月疲れたろ?」


「全然。ていうか、仰向けが本番なんだけど…」


そう言われると、断りづらいじゃないか。

仕方ない。美月がを観ないことを期待しよう。


「これからが本番なら、お願いしようかな」


「わかったよ」


仰向けになる僕。…頼む。を観ないでくれ。


美月は膨らみかけた僕のを観て、ニヤッとした。

クソ。胸を押し付けたのは、やっぱりそういう意味か。


「良かった。あたしのマッサージ、兄さんに好評みたいだね♡」


美月はうつ伏せの時と同じく、僕の上半身に胸を押し付ける。

完全に息子が元気になったら、僕の負けだ。それだけは防ぐ。


美月は一通り僕の上半身に胸を押し付けた後、顔に押し付けてきた。

マジかよ。顔にやるのは予想外だぞ。


あまりの気持ち良さに意識が飛びかけた。

このままじゃ、美月を正気にするどころか、僕がおかしくなりそうだ。


顔への胸の押し付けが終わったので、美月の顔を観たところ

彼女の顔は赤かった。恥ずかしいならやるなよ。


「はい! マッサージ終了。あたしは部屋に戻るね」


美月は逃げるように、僕の部屋から出て行った。



 正直なところ、今のは僕もヤバかった。

果たして、僕は耐え続けられるか? 不安に思うのであった。

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