第4話 大広間

「こ、こほん。では、学生証をご提示下さいませ。」

ベルと話している間に正気に戻ったらしい上級生に私は学生証を手渡した。


「えぇと、エリアレットさんですね。後見人はティスパル殿。......はい。確かに確認致しました。ようこそ、知識と魔法の学園、プァレッタ学園へ。わたくしたちはあなたを心より歓迎致します。」

「ありがとう存じます。学園の名に恥じないよう精一杯努力致します。」


形式的な挨拶を終え、ベルと私は奥にある大広間へと向かった。


大広間はその名に相応しく、一つの町ができるんじゃないかというほどの広さがあった。


高い天井から吊り下がる豪奢なシャンデリアに、淀みなく敷かれた深紅のカーペット。壁際に寄せられた数々の調度品は、この空間に彩りを加えている。


奥にある舞台に繋がる、二つのアーチを描く螺旋階段はまるで自らが主役と強調するかの如く神々しい光を放っていた。


「わぁ〜!綺麗......。」

「当たり前ですわっ!入学式には国王様や王妃様もご参加なさるのですからね。ほら、あちらに用意されているのがそれですわ。」


ベルの視線が向かっている舞台の上には毛並みの美しい大きな一人用ソファが四つ並んでいた。

その後ろにはシエロボーデン王国の紋章の入ったロイヤルブルーの国旗が掲げられており、その存在感は底知れないほど大きい。


「っと......。ねぇベル?聞きたいことがあるのだけれど。」

「何かしら?」

「入学式って、確か2の鐘からの筈よね?どうして皆様こんなにもゆったりとしていらっしゃるの??」

「何をおっしゃっているの?入学式は3の鐘からでしてよ??」

「え......?えぇ〜っ!!!!!」


───お師匠様は確かに2の鐘からっておっしゃっていたけれど......。ま、まさか、間違えていた............わけはない、よね..........?


私はそう自分に言い聞かせ、装飾品に詳しいベルの眠くなるような解説をうつらうつらと聞きながら3の鐘が早く鳴ることを心の中で願っていた。




その頃......


「は、はははは。嫌だなぁ。私が大事な大事な入学式の時間を間違える訳がないじゃないですかぁ!全く、エリアは師匠のことをなんだと思っているのですかね!?もう!ぷんぷんですよぉ!!」


アランガルの森の家の中で、ティスパルは箒を異常なほど大きく振り回し、様々なお皿を割っていた。

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私は規格外!?〜目立たず憧れの学園生活を過ごしたいだけなのにっ!!〜 雪蘭 @yukirann

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