サイネリア号、ミリタイア帝国連合艦隊撃破ですわ!

 私は今、ノエルを抱えて魔動飛行機に乗って飛ばしている。


「メリア様、風がとても気持ちがいいですわ」


 ノエルは緊張感というものがないのかしら。


「ええ、気持ちがいいですわね」


 そう言われてみれば気持ちがいい。

 私が飛んでいる……とてもファンタジーですわ。

 って、私も緊張感が薄いですわね。

 

 それにしても、私たちを先行させてカーナは何をするつもりかしら。


 私たちは魔動飛行機で1時間もかからずサーマの港に到着した。

 魔動飛行機を抱えてサイネリア号の格納庫へ向かう。


「メリア執務官閣下、お待ちしておりました。随分と早いご到着でございますね」


「ええ、私たち空から飛んできましたのよ」


「さようでございますか。サイネリア号の出港準備は整っております。あとはメリア様のご命令だけでございます」


 乗組員に空から来たことは軽くスルーされてしまった。


 私たちはすぐにサイネリア号に乗り込み、艦橋かんきょうの操舵室に入る。


『サイネリア号、出港用意!』


 私が出港用意の号令をかけると、乗組員たちは「サイネリア号、出港用意!」と復唱した。


 格納庫の港側の扉が完全に開くと私はさらに号令をかける。


『サイネリア号、出港!』


 乗組員たちは「サイネリア号、出港!」と復唱する。


 サイネリア号は少しずつ速度を上げていき出港する。


 大河に出ると上流へ向かって舵を切る。

 まだミリタイア帝国軍の艦隊は見えてこない。


 しばらくすると、シャルラハロート王国同盟の艦隊と合流した。


 サイネリア号以外は帆船はんせんである。

 風がない場合は人力で移動するものだ。

 風がなければ魔法で風を起こせばいいのではと思ったのはここだけの話。


 シャルラハロート王国の旗艦から手旗信号が送られてきたようだ。


「メリア様、シャルラハロート王国の旗艦からの伝言です。『サイネリア号の同盟艦隊に合流を感謝する』とのことです」


「ええ、わかりましたわ。ではこちらからは、『サイネリア号が先行します』と伝えてちょうだい」


「はい、かしこまりました」


 乗組員が手旗信号で私の言葉をシャルラハロート王国の旗艦に伝えてくれた。


「了解」と返ってきたそうだ。


 しばらくすると、クックルちゃんがノエルの元にやってきた。

 足元には手紙がくくりつけられていた。

 内容は、「ご助力感謝いたします」だった。


「メリア様、地上の体制も着々と整ってきているそうです。相手の地上部隊はまだ防衛拠点到達までに数日かかるようです」


「ノエル、報告ありがとう。地上の方は大丈夫そうですわね。こちらはミリタイア帝国軍の艦隊を撃破いたしますわよ!」


「はい、かしこまりました。副砲は私にお任せください!」


 しばらく前進していると、ミリタイア帝国軍の艦隊がうっすら見えてきた。

 乗組員の一人は望遠鏡で前方の監視をしている。


「ミリタイア帝国軍の艦隊、総勢30隻を確認いたしました!」


 こちらから威嚇射撃といきますわよ!


『魔動砲発射準備、威嚇射撃よ!』


 乗組員たちは「魔動砲発射準備、威嚇射撃」と復唱する。


「メリア執務官閣下、準備は整いました。いつでも発射可能でございます」


『魔動砲発射!』


 乗組員たちは「魔動砲発射、退避せよ!」と号令をかける。


 私はパネルに『ファイヤーボール』をイメージして魔力を流す。

 

 主砲から魔法陣が浮き出てきて、ミリタイア帝国軍の艦隊に向けて魔動砲が発射された。


 威嚇射撃とはいえ、もの凄い威力だ。

 魔動砲の爆風に巻き込まれたミリタイア帝国軍の戦艦がバランスをくずし味方通しでぶつかり合い10隻ほどが航行不能になった。


「メリア執務官閣下、敵艦複数から主砲が発射されました。直撃いたします!」


「大丈夫よ。こちらには魔力障壁がございますわ!」


 敵艦の主砲といっても旧式の弾丸だ。

 複数のミリタイア帝国軍の艦隊から撃たれた弾丸は全て魔力障壁によって弾かれた。


『魔動砲第2射準備、今回も威嚇射撃よ!』


 乗組員たちは「魔動砲第2射準備、威嚇射撃」と復唱する。


『魔動砲発射!』


 魔動砲の第2射を発射して、さらにミリタイア帝国軍の戦艦が10隻ほどが航行不能になった。


 勝機と見てシャルラハロート王国同盟艦隊が残りの戦艦を撃沈していく。


 そして、残ったミリタイア帝国軍の旗艦を包囲した。


「ノエル、行きますわよ!」


「は、はい!」


 私はノエルを抱きかかえ、魔動飛行機に乗ってミリタイア帝国軍の旗艦に向かった。

 

 到着すると、他の同盟国の者たちも乗り込んでいてミリタイア帝国軍は武装放棄をしていた。

 この船に乗っていたのは残念な人達だらけだった……。


「またもや我らの邪魔をしたのはブルセージの小娘か。小賢しい奴め!」


 グワジールは以前と変わらずとても贅沢な体つきをしていた。


 どこまで神経がずぶとい人なのかしら。

 呆れてしまいますわ。


「ふん、そうやっていられるのも今のうちだ。我々は囮だ。今頃もう一つの大艦隊がお前たちの本土を日の海にしてくれるぞ!」


 ミリタイア帝国軍の旗艦にミリタイア帝国の国王自らが乗船していた。

 

 しかも、こちらが囮でサイネリア王国が危ないですって!?


 サイネリア王国の全ての街は結界で守られる。

 しかし、ミリタイア帝国王の言う通り他の国は火の海になってしまう……。

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