上で寝る

 夕食を食べ終わり、後は寝るだけ……のはずだったんだけど、争いが起こっていた。

 私と三人で普通に寝るとなると当然当然全員は私の隣では寝られない。だからこそ、今私の目の前で誰が私の上で寝るのかという言い争いが起こっていた。

 

 正直私としてはルーファが上がいい。いや、皆同じぐらい好きだし、そういう意味では誰でもいいんだけど、上で寝るってことは一番匂いを嗅ぎやすそうだし、ルーファなら匂いを嗅いだりしない……はず。

 仮に! 仮にだけど、嗅がれてたとしても私が知らなければ大丈夫だし。世の中知らない方がいいこともあるって言うしね。

 




 ……決まる気がしないんだけど。

 私は眠たくなってきたので、ある提案をすることにした。

 ジャンケン……を教えるのは少しでも早く寝たいから、ジャンケンをちょっと変えて、グー、チョキ、パーのどれかを三人が事前に選んで、私が後から出した手と同じ人が上で寝ると言うことを三人に言うと、すぐに了承を貰えた。

 うん。なんか眠気で今は恥ずかしさとか感じない気がしてきたからもうほんとに誰でもいいよ。


「決めてきましたよ」

「決めたよ!」


 フィオは黙って頷く。


「うん。じゃあいくよ」


 そう言って私はチョキを出した。


「私ですね」


 ルーファが笑顔でそう言う。可愛い。


「あぁぁぁ、僕もユアのこと全身で感じたかった……」

「へ、変な言い方しないでよ」

「残念」

「仕方ないや、私は隣で匂いを嗅ぐことで我慢するよ」

「ん」


 ……気にしない気にしない。私は今睡眠欲が凄くて眠い。だから全然恥ずかしくないし、気にしない。


「き、決まったんだし早く寝よ」


 



 ……眠れない。眠れる気がしない。

 なにこれ? 隣に誰かが居るのはいつもの事だしいいとして、今日はルーファが抱きつくようにして、私の上にいる。


「重たくないですか?」

「……大丈夫、重たくないよ」


 ルーファの体、暖かくて気持ちいい。けど、寝れない。恥ずかしくて寝れない。今更かもだけど、そもそも目も閉じれない。私からしたらルーファが目の前に居るし、目を閉じた顔を見られるのは恥ずかしい。

 もうとっくに寝顔とか見られてるんだろうけど、意識しちゃうと、恥ずかしくて目を閉じれない。


 私がそう考えていると、横からスンスンと私の匂いを嗅ぐ音が聞こえてきた。


「ちょ、ナナ!? その、嗅ぐのはもう仕方ないけど、せめて音とか私に聞こえないようにして欲しい……」

「んっ、ユアの匂い……気持ちいい……」


 匂いが気持ちいいってどういうこと!? 少なくとも臭くはなさそうだし、もう気にしないようにしよ。

 

 フィオはどうだろう。

 私は少し顔を横に向けて確認する。

 ……見なきゃ良かったかもしれない。だってフィオも私の匂いを嗅いでたから。フィオはナナとは逆で音をたてずに嗅いでいた。ナナには音をたてなかったら仕方ないって言ったし、何も言えない。


 私はもう何も気にせずに、目を閉じ眠りにつこうとする。

 すると、私の唇に誰かの……位置的にルーファの唇が重ねられる。それは直ぐに離れていき、私の胸にルーファの頭が乗せられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る