ルーファと街へ

 私は今、川を覗き込み自分の顔を見ていた。

 ルーファが私を可愛いなんて言うから顔が変わってるのかと思って見てみたが日本にいた時と同じだった。

 黒い髪に黒い目の普通の15歳の女の子だ。

 ちなみにルーファは私が来たことで水浴びの邪魔をしちゃったみたいだから、また水浴びをしている。さっき拭いたばっかなのにと思わないでもない。

 今なら逃げることも出来るかもしれないが街の場所も分からないしそもそもさっきエルフは感覚に鋭いと言っていたので逃げても直ぐにバレると思う。(感覚に鋭いとか関係なく流石に逃げないけど)

 取り敢えず神様に貰ったはずのマップ機能を見るためにゲームのマップ機能を想像したら、目の前に自分がいる場所以外が真っ黒になったマップが出てきた。


「うわっ」


 私は思わず声を上げてしまう。

 するとルーファが直ぐに近づいてきてどうしたのかと聞いてくる。

 目の前にあるマップが見えていないようだ。

 念の為聞いてみることにする。


「ここに何か見える?」

「? 何もありませんけど」

「そうだよね」

「?」


 ルーファは不思議そうにしていたが私が気にしないでと言うと水浴びに戻る。

 今のルーファの動きで分かったけどこのピンクの点がルーファなんだと思う。

 味方は青い点と私は神様に言ってたのになんでピンクなんだろう? 村の掟だとしても求婚したからかな? でも私を本気で好きなわけないし......まぁいいか、敵は赤とかだろうし大丈夫だよ。

 周りに何個か白い点もあるけどこれは中立で、敵でも味方でもなかったりするのかな? 少なくとも私がやってたゲームだったらそうだった。


 私は少し歩いてみるとマップが広がった。

 まだマッピングしてない所も白い点が表示されているのは素直に嬉しい。

 白い点だけの可能性もあるけど、後々わかるだろう。

 マップをタップしてみると【ワープポイントを設置しますか?「はい・いいえ」】と出てきた。

 その近くには無限のマークがあったので何個でも設置出来るのだと思う。

 取り敢えず、はい、をタップして配置してみる。

 現実世界には何も起きなかったけど、マップ上には柱の様な物が現れそれをタップすると

【ワープしますか?「はい・いいえ」】と出てくる。

 どうやってワープするのか気になる......あっ、ルーファが服を着て戻ってきた。

 仕方ない、後で試そう。


「ユアさん、終わりました」

「う、うん。ルーファは街の場所知ってる?」

「はい、もちろん知ってますよ。ユアさんは知らないんですか? と言うか、ユアさんどうやってここに来たんですか? 空から現れましたよね?」


 ま、まずい......なんて答えよう。


「えっと......気がついたらここにいたんだよね」

 

 うん。嘘じゃないしね。


「そうなんですか?」

「うん」

「転移魔法の罠にかかったのかも知れませんね」


 転移魔法? 私のマップのワープ機能みたいな感じなのかな。

 私は思い切って聞いてみることにした。


「転移魔法って珍しいの?」

「今の時代には使える人は居ないですよ。使えたとしても魔道具を使った転移でその魔道具も使い捨てです」

「そ、そうなんだ」


 私のワープは人には言わない方が良さそうだね。

 そもそも私以外をワープ出来るか分からないし。

 試す時もこっそり使おう。


「ユアさんには悪いと思うんですけどユアさんが罠に引っかかってくれて良かったです。その、ユアさんに会えたので......」


 私に会えたって、村の掟がなかったら知り合いにすらなってないと思うけど。


「あっ、ごめんなさい」


 私が黙ってたから怒ったと思ったのかな?


「気にしなくていいよ。罠に引っかかった先に人が居て良かったよ」


 掟さえなければ最高だったんだけどね。


「それで、街の事なんだけど」

「はい! 案内しますね」


 パァと笑顔になるルーファ。可愛い......てっ、違う! いや、可愛いとは思うけど違う。

 私は手を引かれながらルーファの後をついて行く。


「ルーファ?」

「はい?」

「私子供じゃないからさ......手を引かなくてもついて行けるよ?」

「だめ......ですか?」


 ちょ、上目遣いでそんなこと聞かないでよ。

 私は女の子が好きな訳じゃないし......変に意識するからダメなんだ。


「だめ、じゃないよ」


 顔が暑いけど恥ずかしい訳じゃないよね。多分この辺が暑いんだ。

 

「ユアさんは今お金持ってますか?」

「え? あ、えっと、転移魔法でビックリして落としちゃった」

「そうですか」


 よかった。信じてくれた。

 でもなんで嬉しそうなの? 怖いよ?


「そろそろ着きますよ」

「う、うん。ありがとね」

「はい!」


 森を出ると割と近くに街道が見えた。

 ルーファも知らなかったんだよね? わざとじゃないよね? うん。きっとそうだ。

 何か門に立っている人がいる。門番かなにかだろう。


「お嬢ちゃん達仲がいいんだね」


 そう言って私達を微笑ましそうに見るおじさん。

 私は自分の手元を見る。

 咄嗟に手を離す。

 その時ルーファが残念そうにしていた気がするけど気のせいだろう。


「身分を証明する物はあるかい?」


 えっ? 私そんなのないよ?


「どうぞ、ユアさんは持ってますか?」

「ごめん、無い」


 私がそう言うとルーファが銅貨を渡す。

 多分お金だ。

 門番のおじさんはそれを受け取ると通してくれる。


「ごめんねルーファ、後でお金を手に入れたら返すよ」

「いえ、私がしたくてした事なので気にしないでください」


 ルーファはそう言うけどお金を手に入れたらちゃんと返そう。


「ルーファが渡してた物はなんなの?」

「......冒険者カードですよ?」

「あ〜、そう言われてみればそうだったね」


 何でもかんでも聞くのも怪しまれるな......今度からは気をつけよう。

 それに冒険者とかもいるんだ。流石ファンタジー。

 そういえば私が神様に頼んだもう一つのお願いはどうなったんだろう? あ、でも元の世界の私の体力じゃこんなに歩けるわけないよね......ちゃんと体が強化されてるってことだ。


「ユアさん?」

「なんでもないよ。それで私も冒険者になれるよね?」

「はい、もちろんですよ」


 確認するように聞いたからおかしく思われなかったはず。


「じゃあ今から冒険者になりに行こう」

「今の時間帯の冒険者ギルドは混んでいるので明日にしませんか?」

「そうなの? じゃあ明日案内お願い出来る?」

「もちろんです!」


 よし、冒険者になったらお金も返せる。

 それに神様には基礎ステータスを底上げって言ったけどゲームによってステータスは違った。

 運のステータスがあったり色々あるはずだ。

 神様は基礎ステータスをどう認識していたのかも何となく分かるかもしれないし。

 色々な街に行ってマップも埋めたいし、そのために身分を証明出来るものは必要だよね。


「それじゃあユアさん、宿を取りに行きましょう」

「うん」


 宿に着いた。

 綺麗な宿だ。それに大きい。

 そこで私はルーファが嬉しそうにしていた理由を知ることになった。

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