探偵社とお月見

梛狐

探偵社とお月見(2022年 十五夜編)

残暑が続く9月。

此処、武装探偵社は今日も様々な依頼の仕事をこなしていく。

僕は武装探偵社で働いている中島敦だ。


「お月見したいね!」


突然、僕の上司である太宰さんが言い出した。

「太宰さん、急にどうしましたか?」

「あのね敦君。9月に入ったのだよ? 9月と言えばお月見! そんな事を考えていたら、やりたくなったのだよ」

「 確かに9月に入りましたね。お月見……やりたいですね」

すると、太宰さんの相棒である国木田さんが止めに入ってきた。

「太宰! 今は仕事をせんか! お月見の事なんか考えている程、暇ではないぞ!」

「国木田君は固いな。お月見やろうじゃないか! 社員との交流ということでさ。大事な事でしょ?」

すると、国木田さんは少し納得したような様子で「確かに、それは大事だ」と答えた。

だが、「して良いものだろうか……」と悩みだした。

すると、何処からか声がした。

「何を悩んでる。やって良い」

福沢社長だ。

国木田さんは凄く驚いたが「社長やってもよろしいのでしょうか?」と聞いた。

すると社長が「やって構わない」と言った。

続けてこう言った。

「昨日、太宰から聞いて社員の交流も大事だと思い許可をやったが、国木田は知らなかったのか?」

「社長……申し訳ありませんが、知らなかったです。太宰! 社長に許可をもらっていたのなら、何故それを言わなかったのだ?」

「国木田君の反応が見たかったからね」

太宰さんは相変わらすだ。

国木田さんは皆に向かって「まぁ良いだろう。では、終業後に各自夕食の後、お月見に必要なものな買い物、すすきを集めるぞ。」と言った。

お月見を開催することになり、皆とても笑顔で嬉しそうだ。

勿論、僕もだ。

よしっ! 今日はお月見を楽しみに仕事を頑張るぞ!



終業後、僕と鏡花ちゃんは夕食を食べるために一度家に帰った。

「鏡花ちゃん、皆でお月見なんて楽しみだね!」

「そうだね。早く食べて戻ろう」

「うん!」

僕達は夕食を食べ、探偵社に戻った。

「戻りました。遅くなってすみません」

僕と鏡花ちゃんが社に戻ると、殆んど人達が戻っており最後かと思ったが、賢治君だけがまだ戻っていなかった。

「国木田さん、賢治君だけ戻ってきていませんが……」

「2人共遅れてないから大丈夫だ。だが賢治だけがまだだ。どうしたのか……」

すると突然扉が開いた。

「皆さんお待たせしてすみません! 只今戻りました」

「賢治君! 心配したよ。その抱えている植物は何?」

すると賢治君は腕に抱えている植物を皆に見えるようにして言った。

「此処に戻る途中ですすきを見付けました。お月見に必要ということで持ってきました。それで遅くなってしまいました」

国木田さんが「そうだったのか。ありがとう、賢治」と言った。

賢治君が「いえいえ。では花瓶にさして飾りますね」と言って花瓶にさし飾りに行ってくれた。

それからは皆で楽しく準備をした。


準備を終えお月見をする頃には夜空に綺麗な月が見えた。

丸く、少し黄色や橙色の色が混ざっているような、とても綺麗な色をしている。

うっとりとして眺めていると、僕の横で鏡花ちゃんが話してきた。

「月に兎さんがいるように見える」

「鏡花ちゃんが言っている通りに見えるね」

すると太宰さんが「何だい? 2人には兎さんに見えるのかい? 僕には美しい女性の横顔に見えるよ」と言ってきた。

「成る程……太宰にはそう見えるのか。てっきり蟹に見えると言うと思ったぞ」

「うっ……。国木田君に、そう言われたら蟹にも見えてきた……」

すると賢治君が「皆さんには、そう見えるんですね。僕はヒキガエルの頭と前足に見えます」

国木田さんが「確かに、其れにも見える」と言った。

「皆が言っている模様は、結構言われているものばかりだね。他にもあるらしいけど。因みに月の表面には明るい所とやや薄暗い所があって、兎なんかは薄暗い所を繋げて『兎』の形に似ているかららしいよ。太宰が言っていた女性の横顔、賢治君が言っていたヒキガエルの頭と前足は明るい所を繋げているね」と乱歩さんが説明してくれた。

それを聞いて皆驚いた。

「乱歩さん、凄く詳しいじゃないか」と与謝野医師が感心して言った。

社長が「猫はないのか……」ととても残念そうな顔をしていた。

それからも皆とのお月見を楽しんだ。

またやりたいと思った。

「ねぇ……敦君」

「太宰さん何でしょうか?」

「十五夜は平安時代に中国から伝わったものらしい。十三夜というものもあって、それは日本独自の風習なんだって。今回の十五夜か十三夜のどちらか一方のお月見をするのを『片月見』って言って縁起が良くないっていう言い伝えがあるらしいよ。だから、今度の十三夜も皆でお月見しようか」

「やりたいです!」

「そういうと思ったよ。では、また社長に言っておかないとね」

また皆とお月見ができると思うと、とても嬉しい。

十五夜のお月見はまだ終わっていないが、僕はこれからの予定である十三夜が待ち遠しく感じた。


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探偵社とお月見 梛狐 @nkao5121

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