第4話 歓談

「れいか、久しぶり!おはよ〜! 」


「園田だ、久しぶりじゃん」


「おはよ〜、りなちゃん!町田くん」


 久しぶりに学校に行くとみんなが声をかけてくれる。昔は本ばっかり読んでいて友達ができなかったために、心配をかけたため、中学から明るい子に見えるようにした。するとまあ、所謂人気者になっていった。


「大丈夫だった!?大変だったよね?みんなで心配したんだよっ! 」


「ありがと!さなちゃん!大丈夫だよ!あー、でも、授業大丈夫かな?特に数学とか、どこまで進んだ? 」


「うーん、そこまで進んでないかなぁ。あ!ノート!休んでた分のやつ見せるねっ。れいかちゃんのノートには遠く及ばないけど」


そんなことないよぉ〜ありがとう!と言いながら、鞄から教科書を出す。成績が維持できればいい。保護者が変わってもあまり迷惑はかけられない。


「じゃあ、この問題、誰にしようかな。久しぶりに来た園田でいいか」


「ええ〜、ひどいですよー。②ですよね。えーっと2±√11 ? 」


「正解だ。お前ここのとき休んでたから答えられないと思ってたのに! 」


どっと笑いが起きる。ノートを見せてもらったおかげだと思うが。さすが、という声も聞こえる。これはそこまで難しい問題ではないが、首席という肩書きは随分とプレッシャーになる。


 「れいか〜!今日バイトないよね?駅前にあるこの前話したクレープ屋さん行かない?平日だから空いてると思うんだ! 」


「お!いいねぇ〜!行こ行こ!てか、佳澄ちゃん美味しそうなお店見つける天才だよね」


佳澄ちゃんは、高校からの友達で、テストの度に毎度毎度競い合っている。1番なんでも話せる仲だと思う。


「はぁ〜あ。酷いね、先生たち。澪依華ばっか当てるんだもん。いつもテストで良い点取られすぎて、今日こそは澪依華より優位に立てると思ったのかな? 」


「それはそれで間抜けだねぇ。あとテストまで1ヶ月はあるけど、2年最初のテストだから真面目にやんないと。また一緒に勉強しよっ! 」


そんなことを話しながら歩いていると、目的地に着いた。お店の前にメニュー表が置いてある。


「おお〜美味しそう!どれにしよ〜まようなぁ。佳澄ちゃんどれにするぅ? 」


「えーどうしよう!苺系にしようかなぁ〜。でもチョコバナナも捨てがたい!あ、小豆あるよ!澪依華好きだよね! 」


結局、私は小豆、佳澄ちゃんは苺を選んだ。店員さんから受け取って、近くの公園まで歩く。この前の、秀と会ったあの公園だ。


「あ、ねぇ、そういえば今どこ住んでるの?お母さん亡くなったら、お家いられないって言ってたでしょ? 」


佳澄ちゃんだけには全部話していたから、聞かれると思っていた。設定を考えておいてよかった。


「あー、今はね、親戚のお兄さんのお家に住んでる。学校変えたくなかったから。この辺でいる親戚がそのお兄さんしかいなくてさ」


と言って横を見ると、え、まずくない?みたいな顔でこっちを見ていた。


「え、大丈夫なの!?いくら親戚ったって、男の人でしょ!?襲われちゃったらどうするの!澪依華可愛いんだから!気をつけてよ‼︎ 」


「いや、大丈夫でしょ。そんなことしなさそうだし。それにあの人イケメンだから彼女とかいそう。それに私可愛くは……」


「何言ってんの。可愛くなきゃ読モなんてやれないでしょ」


思いっきり被せられた。これ以上は言わせないと言うかのように。でも、佳澄ちゃんも充分可愛いと思う。


「野垂れ死ぬより良くない?ちゃんとご飯食べれて、布団で寝れて、学校にも行けて、みんなに会えるんだから」


私的にはそれで充分だ。むしろ、見返りを求められないのが不思議すぎて、心配になってくる。佳澄ちゃんは納得がいかないという顔だが。


「まあ…そうだけどさぁ。でもほんと気をつけてね。なんかあったら電話してよね」


「うん!もちろん!ありがと」

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