第3話

 それからアイツと俺は、学校を辞めてプロミュージシャンを目指すことになった。


 それからは、駅前広場でストリートライブをしてみる。

 勿論、最初は見向きもされなかった。

 が、1週間すると、足を停めて聴いてくれる人が現れた。

 それから1ヶ月経つ。そうすると、2、3人は顔馴染みの人が足を止めてくれるようになる。

 半年経つ頃には、10人は超える人だかりが出来るようになっていた。

 そこで、スカウトに会う。


 アイツと俺がプロミュージシャンデビューすることが決まる。

 デビューしたのは、それから半年後。

 アイツが21。俺が20の時だ。

 デビューはライブハウスで行われた。

 広報のおかげか、ライブハウスは満員だった。


 それから、トントン拍子で話が進み、テレビ出演が決まった。

 テレビで、全国で放送される。

 一番手で、歌うとのことだったが、ホールを前にして、さほど緊張はなかった。

 むしろ高揚感が凄かった。

 それはアイツも同じだったと思う。

 名前を呼ばれ、ホールに立つ。

 そしてアイツがキーボードを弾き始める。

 俺は足でリズムを取りながら、出だしを窺う。

 歌い出す。

 曲の終盤に差し掛かる時、俺は振り向き、アイツのキーボードを弾く背中を見た。

 少しずつアイツに近づき、俺は背をむける。背中合わせになる。

 歌い切ったあと、俺はアイツの鍵盤の余韻にひたりながら、アイツの背中にもたれ、体を任せた。

 曲が終わり暗転。

 盛大な拍手が沸き起こった。


終わり クロスIIに続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クロスⅠ 浅貴るお @ruo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説