ロザリス防衛戦2

 6体のリザードマンが門に入ってくる。堅い城壁を壊す事よりも少数の強いヤツを暴れさせて仲間をどんどん呼び込むつもりだろう。ルーブルはそこまで予想している。


「Syuuuuaaaaaaa!!!」


「ホントにこんな小さい盾でなんとかなるのかよ?」

「だが小さい割に強度は抜群だ・・・ここいらじゃない技術だな」

「くそ、なるようになれだ!」

「よし、全員小盾は持ったな?みんなで食い止めるぞ!!」


 盾役と化した前衛職達が切り込まずリザードマンの攻撃を受けている。防御に専念しているからやりやすそうだ。ルーブルも小盾を使って危なげなく敵を足止めしている。


 そうこうしている間に第二波・第三波とリザードマンが押し寄せてくる。


「ぅぐっ・・・もう限界」

「こんな数じゃ防ぎきれねぇ・・・」

「もぉダメだぁ!」

「みんな、よく耐えきった・・・後衛隊、攻撃開始ぃ!!」


「おぅ待ってました、ファイアァァァストォォォォム!!」

「潰してやる、スペクトルレィザァァァァァァアア!!」

「忍法・鎌鼬!」


「SyaiaaaaaaaaaaaaAAAAAAAA!!!!!」


 ルーブルの合図で後ろに控えていた後衛職達18人がスキルを飛び道具にしてリザードマン達に攻撃する。普通リザードマンなら攻撃を避ける事ぐらい簡単なハズなのに前にいる味方と後ろから攻め込む味方のせいで身動きが取れず一網打尽となった。


 しかも後衛達はルーブルの指示で用意してきた頑丈な木箱を台にして立っている。つまり前衛隊よりも高い位置から遠距離攻撃を撃つことができる。

 なので敵にはこちらの攻撃が一直線に当たるし、逆に間違えて攻撃スキルが味方の前衛達に当たる事はない。

 ルーブルの次の作戦が飛ぶ。


「よぉし前衛隊、攻撃だぁ!!後衛は味方に注意しながら引き続き各個撃破!」

「「「おっしゃぁああああああ!」」」


 今まで我慢していた前衛達が不満をぶつけるように残りのリザードマン達を片付けていく。その勢いは数の減ったリザード達にはまさに多勢に無勢。


「ぅひょーCランク相当なリザード達がこんなにオイシイモンスターだったなんて!」

「これで俺らもBランクに!!」

「今日は最高だー・・・しまった!!一匹逃がしちまったぜ!!」


 前衛の包囲網を抜けて町中に入ろうとするリザードマン。でも心配ない。こういう時がボクの役目、遊撃隊の出番だ。


「行かせないよっ、バリケィド!!」

「Syaaaa!!」


 突然盛り上がった土に足を引っかけられてコケるリザードマン。そこへ容赦なくボクの鉄拳-反発力で作り上げたパンチ-が頭に炸裂する。まともに決まったので粉々だ。

 ホントはみんなの前で使っちゃいけない念属性の技だけどこの一瞬じゃバレないし、今のボクは拳を覆う手甲をはめているので問題ない。


「すんげー鉄拳・・・ってか済まん、仕留めてくれて!」

「ノゥプロブレム!さぁ、全部カタづけていくよぉ!!」



◇◇◇



 二時間後、冒険者達の連携の前にリザードマンの大軍は全滅した。みんなは自分達の戦果を讃え合って魔石を回収していく。


 そしてギルド・グラーナでは打ち上げ大会が催されていた。作戦指揮を担当したルーブルはみんなの前に引きずり出されて挨拶をする。


「みんな、良くやってくれた!町を守り切れたのはみんなの力があって協力してくれたからだ!!本当にありがとう!!!」


 言い終わってからみんなに頭を下げるルーブル。指示に従わせるように説得するのは上手いのにこういう人前で挨拶するのは下手だ。

 しかしその自己評価の低い発言に冒険者達は気分を良くしている。


「おぅよ、本気になった俺らに敵はねぇが旦那の作戦もスゲェぜ!」

「アンタのいう通りにしたら意外と呆気なかったぜ!!」

「晩メシ、ゴチになるぜぇルーブルさんよぉ!」


 万雷の拍手が響き渡る。みんなルーブルの凄さを分ってくれたので次々に声を掛けてくれる。ルーブルがホメられるのは自分の事のように嬉しい!


「ルーブル、お疲れ様!カッコ良かったよ!」

「ウィルマこそ遊撃隊お疲れだ、しかしどうしたものかな?成り行きでコイツらに晩メシおごる約束しちまったよ・・・全財産使い切っちまうなぁ」

「ふふふっ、だったら明日からのクエストがんばらなきゃね?」


「ほほほ、それには及ばん・・・打ち上げの金ならワシが立ててやろう」


 突然ボク達の間に入って来た頭のはげあがった小柄なおじさん。杖をついているけど身体の動きに切れがあるので実力は高そうだ。


「アンタは・・・」

「お初にお目にかかる、ライオネットの諸君・・・ワシはグラーナのマスターのグィド・シォマーニじゃ、今日はAランクパーティーがケガで使えん中残りの冒険者達を指揮して町を守ってくれた事感謝するぞい?」


「いや、何分にも咄嗟の事で・・・」

「謙遜なさるな、後ろから見させてもらったがなかなかの戦術と指揮能力・・・ギルドに永住在籍してもらいたいぐらいじゃ、故にランクを2つ上のCランクに上げてこの町に滞在中お主らの費用はギルドから立て替えさせてもらうぞい」

「そ、そこまでしてもらうのは・・・」


 無闇に謙遜して辞退しようとするルーブルを抑えるようにマスターに抱きつくボク。


「やったぁー、マスター大好き!」

「ほほほ、若い女子はええのぅ・・・こっちもリザードマン達の魔石で稼がせてもらったんじゃ、気兼ねはいらんぞい」

「ウィルマ・・・申し訳ないマスター・シォマーニ、今日は甘えさせてもらいます」


 艶もたけなわとなってきたところで楽しそうな音楽が流れてくる。冒険者の誰かが演奏しているのだろうけど聞いているとじっとしていられない!


「ルーブル、踊ろうよ?」

「お、俺はダンスなんてやった事無」

「そんなのナンセンス、適当にやっちゃえ!」


 ボクとルーブルはみんなが空けてくれた真ん中のスペースで音楽に合わせて踊りまくる。ダンス未経験で心配していたルーブルもボクに合わせてくれるから安心だ。


 そんなボク達にみんなは口笛吹いたり野次を飛ばしたりしてくれる。収穫祭のお祭りはなかったけどこれはこれで楽しかった。

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