第10話

●翌日


 【もし会うことができれば、君にピアノの弾き方を教えてあげられます】


 わーキレイ!! 今度は薄紫と赤とライトブルーのお花が一面に咲いている画像だよ。朝日に照らされて輝いてる。これ、どこだろう? ローランドが勤めている病院の近くかな~?


 戦地でもこんなに素敵な場所があれば、心のいやしになるよね。


 【真の友人を愛し感謝することで、君は祝福に満ちた一日を送ることができる。おはようございます。よく眠り、笑顔で目覚めることができましたか?】


 なんか言ってること意味不明だけど、後でわたしに会いたいってこと? 


 ピアノの弾き方を教えてくれるなんて……♪ よくドラマとかであるよね。ピアノの前に座る女性の後ろから、男性がそっと両手を鍵盤けんばんに伸ばして、しっとりとしたラブソングを二人でアンサンブルぅっ(≧∇≦)♪

 

 いけないいけない。いつまでも妄想にハマってないで、返信しなきゃね。


 〖Wow! 信じられないほど美しいお花畑ですね。ありがとうございます。

 

 そうですね、いつかお会いして、ピアノを教えてもらえたら嬉しいです。でも、わたしには難しいかもしれません。何せ、両方の手を同時に違う動かし方をするのですから。想像できませんね〗


 バカ丸出しとか言わないでよ。多少不完全な部分がある方が、人間誰しも親しみやすいってものでしょ。


 【なるほど。でも少し練習すれば、それほど難しくはなくなりますよ。今朝は何をして過ごしましたか?】


 〖今朝は日曜礼拝に行きました。わたしはクリスチャンではありませんが、聖書やゴスペル、それに牧師先生のお話は、毎回大変興味深いです。彼女はとても優しく、賢く、それにつつましい、素晴らしい牧師先生です。


 なんだか、少しずつ秋めいてきた感じです。今朝は涼しかったので〗


 これは事実だからね。クリスチャンじゃないけど、牧師先生とももう長いお付き合いだし、仲良しだよ。

 

 う~ん……今度はすぐに返信来ないなぁ。


●その夜


 【君が今夜も楽しい夜を過ごしていることを願っています。君は私にとって格別の存在です。こんばんは。

 

 聖書やゴスペルを知るのは本当にためになります。今日は日曜礼拝でどんなことをしましたか?】


 〖ゴスペルを歌い、牧師先生のお話を聞き、その後、皆さんとお喋りをしました。

 

 ところでローランド、今日はお休みなんですね。週末にお仕事をすることもあると言っていたので、お休みなら良かったです。十分に体を休めてくださいね〗


 そうちゃん、ナイスツッコミとか言わないで。


 別に突っ込んだつもりはないよ。ローランドもきっと疲れているだろうし、休養の時間があって良かったって純粋に思っただけだよ。


 【ああ、そうなんだ。今日は休日で、とてもリラックスできています。ところで、もう夕飯は食べましたか? 今夜はどんな料理が君を笑顔にしてくれたの?】


 え? ストーカーをていしてきたって? 失礼な! ちょっとしたユーモアだよ。


 〖それは何より。リラックスすることは大切です。


 今夜は牛肉とナスを焼いて食べました。特に、お肉を食べる瞬間は至福の時ですね〗


 いちいち莫迦正直に答えることはないって? いーの! ローランドはこういう庶民的しょみんてきなことを聞いて安らぎたいんだから!


 〖あと、今日は近くの公園を散歩しました〗


 いつも綺麗なお花の画像をいただいてるから、こっちからも何かあげなきゃね。何の変哲へんてつもない風景だけど、公園の一角を撮った画像を送ってあげよう♪ ちょっとでもローランドの癒しになればいいなぁ。


 【美しい所だね。君の好きなスポーツは何ですか?】


 〖ウォーキングやジョギング、それに軽めのトレッキングです。球技は大の苦手でして……〗


 【僕達には共通するものがある。一人で歩くのが好きな方?】


 共通するものって、まさか球技が苦手な点じゃないよね?


 〖一人で歩くのも好きですし、友達と歩くのも楽しいです〗


 【友達はたくさんいる?】


 〖それほど多くはないと思います。でも、わたしにとっては最高の友達です。


 もう眠いので寝ます。夢であなたにえますように……〗


 そうちゃん、小莫迦にしてる? なんでいきなりS木M之の『夢で逢えたら』なんか歌い出すの? 

 

 これも社交辞令だからね! 


 でも、本当に逢えたら覚めたくないな~♥

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