第20話 書けた!(見直し大事)

 それから、いろいろな小説を食べたひなは、一人称で書き直すことにしたのでした。

 モコりんは、お茶をだしたり、休憩を取るように声をかけたりして、ひなの執筆をサポートしました。



「できた! 今度こそきちんとした童話ができたよ!」


 ひなはドキドキしながらプレビューを押しました。

 そこには、美味しそうなりんご飴が浮かんでいました。


「じゃあ、投稿するね」

「ちょっと待ってよ!」


モコりんは、投稿しようとしていたひなを止めました。


「なんで?」

「なにか見落としているかもしれないよ。みちのさんに見てもらったら?」


 そう言われては仕方がありません。みちのさんに連絡をとりました。



「できたの? じゃあ見ましょうか」


 みちのはひなの家までやってきて言いました。


「じゃあ、ひなちゃん。声に出して読んでみて」

「えっ? 声に出すんですか?」

「そうよ。いいから早く」


 ひなは恥ずかしかったのですが、いつも協力してくれているみちのが言うので、声に出して読んでみました。


「どうだった?」

「漢字の間違いや脱字が見えました。あと所どころ読みづらいところがありました。特に語尾とか……」

「そうね。読みづらい所はうまく書けていないところよ。読みやすいように直してみて」


 ひなは漢字を直したり、「だった」を「でした」にしたり、難しい背伸びをした言い回しを簡単な言葉に直したりしました。


「出来ました」

「どう? よくなった気がしない?」

「はい! すっきりしました」


「ひなちゃん。この物語、どんな人に特に読んでほしいかな」

「どんな人に? 子供とか、大人も読んで欲しいし……」


「子供に読んで欲しいのね。この漢字子供が読めるかな?」

「難しいですね。ひらがなにした方がいいですか?」


「そうねぇ、ルビ振りましょうか」

「ルビ、ですか?」


 ひなは聞いたことがない単語だったので、頭をかしげました。


「ほら、漢字のうえにフリガナが付いてる時あるでしょ。あれよ」

「ああ。ありますね」

「あれがルビっていうの。カクヨム記法を出して」


 ひなは、スマホの右上のマークを押し、その後左上のノートのマークを押しました。


「ここにルビってあるでしょ。漢字の後ろにカーソルを合わせたら、ルビの枠を押して。 《  》 の二重カッコがでたでしょ。 その中にひらかなを入れるの」


 ひなは言われフリガナを入れました。


「じゃあ、プレビューを押して」

「わあ、フリガナが付いてる」

「そう、それがルビよ。難しそうな漢字にルビをふってね」


 ひなは、頑張ってルビを振りました。


「できました」

「あとはね。そうね、『・・・』は「……」の三点リーダーに変えてね。よく分かんないけどそういう決まりなの。…は偶数で使ってね。これも良く分からないルール」

「よく分からないルール、多いんですね」

「そうね。でも覚えておいてね」


 ひなは言われた通り直しました。


「じゃあ、もう一回読んでみて」


 今度はすらすら読めました。


「はい、よくできました。完成ね」


 ひなの前には、キラキラと光るようなきれいなりんご飴が浮かんでいます。


「きれい。これを私が作った作ったのね」

「そうね、さっきの状態よりおいしそうでしょ」

「はい!」

「できたと思ってからも見返すことが大事なのよ。分かったかな」

「はい! ありがとうございます」


 ひなは、一番最初のりんご飴を思い浮かべました。あの濁った形の悪い飴が、こんなにステキになったのがなんだか不思議でした。



「みちのさん、ありがとうございます。これで投稿しても大丈夫ですよね。じゃあ、押します。見ていて下さいね」


 ひなが、公開のボタンを押そうとした瞬間です。


「待って!ひなちゃん」

 みちのは、ひなを止めました。


「何でですか? こんなにキレイなのに」

「早く出せばいいという事はないわ。まだ足りないものがあるのよ」

「足りないもの……ですか?」

「そう。それを知らずに始めると、どんなにいいものでも目に止められず、読まれない地獄に落ちるのよ」

「読まれない地獄……」


 ひなはあの時のバケモノを思い出し、ブルっと体を震わせました。


「なにが足りないのですか?」

「ひなちゃん。お店の準備が出来ていないわ。お店を飾り付けましょう。屋台まで行くわよ」


 と言うと、ひなを連れて外へ出たのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る