悪戯な女神の慈悲で現代に召喚。奴隷からの下克上転生

彩理

第1話

 世界戦争は意外に簡単に始まった。

 どこかの国が自国のメンツのために原発を攻撃。

 たくさんの人々がもがき苦しみ死んでいった。

 つらつらと惨状さんじょうを説明するのはやめる。気分が悪くなるし。

 ただ、皆、自分はこういう死に方は嫌だなと目を背けたていた最期だった。



 空気汚染と土壌汚染、食糧危機。

 地下にもぐって生き残った人類は数パーセントほどしかおらず、20年たってもまだ救われていない。それどころか、絶望に疲れていた頃。



 女神が気まぐれな奇跡を人々に与えた。

 黄金に輝く彼女達がが降りてきて「慈悲じひを与えよう」と語りかけたのだ。



「人間よ、必要悪ひつようあくに感謝しなさい。これ以上人類が減少しないように、寿命をまっとうするまで死なないことを約束しましょう」

 その言葉のあと、世界中が女神と同じ暖かな黄金色の奇跡の光に包まれた。


 人々は歓喜かんきした。



「それだけでは地球を再生することはできないんじゃない?」

 ふいに、もう一人の女神が奇跡を起こした女神に語り掛けた。


「そうね。人類にはこの世界を破壊はかいしたを取ってさせてもらはなくては」

「でも、同じ人類を増やしてもまた同じあやまちを繰り返すだけかもしれない」

「人間はおろかな生き物だものね」

「仕方ないでしょ、創造主が完璧じゃないものを望んだんだから」

「何かいい案はある?」

「こういうのはどう? 寿命を全うして死んだ人間の数だけ私の受け持ちの世界から転移させる」

「それはいいわね。この世界の人間は自分たち以外をしいたげる気質を持ってるから、少し学んだ方がいい」

「じゃあ、そういう事で」

 2人の女神の話を人類は、深く理解していなかった。


 生きることにさらに絶望を与えることとも知らずに。


 女神が人類に課した責任。

 それは地球を浄化するために、己の身に汚染を取り込むこと。身体がどんなに破壊されようと、寿命まで決して死ねずに生きること……。

 地上の汚染が無くなるまで、女神の慈悲は続く。



 それからさらに、12年。



りょう、もう少しで雨が降るぞ」

「ああ、わかってる。でもあと1人」

「そんなこと言って、俺たちはあいつらと違って死ぬんだぞ」

 あきの言葉に、俺は次の客のところに行くのを諦めた。


「死ぬって言っても、元の世界に戻るだけだろ」

「それって死ぬのと同じだろ、奴隷に戻って魔石ほりに鉱山にぶち込まれる」

「どっちもどっちだ。ここにいたって女神さまが残した奇跡の魔素を回収して魔石に変えてるんだから」

「全然違うだろ。ここじゃあ俺達は奴隷じゃない。自由だ」


 3年前、俺と暁はこの地球に、召喚された。しかし、この世界で死んでしまうと自動的に元の世界へ戻ってしまうらしい。


「暁は234番には会いたくないのか?」

 一緒の鉱山で働いていた同じくらいの少女だ。


「会いたいに決まってるだろ。この前こっちに転移して来た奴隷は201番だったから、もう少し待てば会えるだろ」

「そうだな」

 俺は、そんな簡単にはいかないと思ったが、暁の言葉に相槌あいづちを打った。

 暁の期待は自分と同じだからだ。


「一応、かしわさんの所に行って誰か転移してないか聞いてこようぜ」

「ああ」

 ガラス越しに降ってきた汚染まみれの雨を横目に地下への階段を下りて行く。


「俺、雨に打たれるの好きだったのにな」

「いつか、雨も浄化されるよ」

 軽い口調にため息が出たが、ポンポンと背中を叩く手に安心したのも確かだった。



 *



「柏さん」

 第5エリアである大通り駅の地下通路を抜け第4エリアにある札幌駅に入ると、ギルト長の柏さんが10歳くらいの少女と手をつなぎ歩いていた。


「おお、涼ど暁か。丁度いい所に来た」

「その子……」

 頭は何日も洗われてなさそうだし、見るからにがりがりでやせ細っている。

 転移して来たばかりの頃の俺達と同じだな。


「転移者だ。お前たち面倒めんどうを見てやってくれ」

「まだ、子供じゃん。それに俺達に女の子の面倒なんてみれない」

「心配するな暁。俺だってそんな無謀むぼうじゃない。さつきが今、服を調達しに行ってるからその間だけだ」

「なんだ。そうだよな。俺達なんかにまかせたらすぐに死んで元の世界に逆戻りだ」

 あはははは。と暁は大声で笑ったが、俺には笑えなかった。

 ゴワゴワの生地に首と手を出すための穴を開けただけの服からのぞく腕には沢山のむちあとがあった。相当ひどいあつかいを受けていたに違いない。


「じゃ、頼んだぞ」

 柏さんの姿が見えなくなると、あきが少女の目線に合わせるようにしゃがみ込んで「名前は?」「どこの鉱山にいたの?」「やっぱり死にかけたの?」とたたみかけるように質問攻めにする。


「おい、固まってるぞ」

「あー、ごめん。じゃあこれだけ234番は知ってる?」

 無表情なままブンブンと少女は首を横に振った。


「そっかぁ。知らないかぁ」

 暁はしゃがんだままの姿でゴロンと横に転がった。


 少女はわずかに目を見開いただけで、声も上げなかった。

 なかなか手強そうだな。

 どんだけ感情をおさえて生きてきたのか。

 こんなに小さいが、奴隷だった期間が長いんだろう。


 ここにいる間だけでも、優しくしてやらないと。


「おい、邪魔。いつまで転がってんだ」

 寝転がっていじける暁を足でこづき、できるだけ優しくぽんと少女の頭に手をのせた。


「こいつのことは放っておいて、JRタワーに登って外を見よう」

「ジェイアルタワー?」

「ああ、お城の見晴らし塔より高いぞ」

「お城……見たことない」

「そうか。まあ、あんなとこ見てなくても大丈夫」

 俺と暁は名もない少女と共に階段を登って行った。


「鉱山より深い?」

「深い、じゃなくて高いな。外みてないとわからんかもしれないが、地上より上を登ってる」

「空に向かって?」

「そうだ」

「城壁より高い?」

「比べもんにならないくらいにな」

「……」

「どうした? 疲れたか?」

「うんん。想像できなかっただけ。鉱山で働いている時は地下にはどこまででも掘ったけど、高い建物には上がったことがない」

「そうだな」

 俺が働いていた魔法石鉱山も地下深く迷路のようだった。



 *


「怖い」

 雨に浮かぶその街は、巨大な石の煙突が幾つも天に向かって伸びていて、遠くの山すそまで続いていた。


「あれは何?」

 呪いの塔でも見るように少女が一歩後ずさった。


「あれはビルという建物だ」

「びる?」

「そう、俺達がいるのもビル」

「窓に近寄って、下を覗いて見な」

 少女は恐る恐る、窓まで歩いて行くと少し離れたところから下をのぞき込み「わぁ」と叫んでその場に座り込んだ。


「高い」

「そうだろ、俺も初めて見た時はビビった。涼なんて初め声も出せなかったぞ」

「うるさいぞ。俺が驚いたのは、夕日があまりにも綺麗だったからだ。窓がキラキラ光って宝石を散りばめたみたいだった」

「へー」

 少女の眉間にはまだ不安が残っていたが、返事が返ってくるようになったので、少しはれて来たんだろう。


「あれは何?」

「ああ、あれは土産屋みやげやだ。見てきていいぞ」

 小さな小物が所狭ところせましと並べられているが、そのほとんどが何だか理解できないものばかりだった。


「好きなの持っていっていいよ」

 暁の言葉に、少女は俺の顔色をうかがう。


「いいよ」

 うなずくと、暁が「なんで俺の言葉だと信じられんの?」とねている。


「人徳だな」

「いっとくけど、こいつに徳なんてないよ。底意地が悪いだけだから」

「もうここの持ち主はいないから、この辺に住んでるのも俺たち異世界人だけだし心配しなくていい」

 ギャーギャーわめく暁を黙らせて、遠慮がちに写真を手にながめている少女に説明した。


「それは確かチューリップだ」

「見たことないけど可愛い」

「こっちの世界には珍しい花がたくさんあるらしいよ」

「私、よんよんなな番だったの」

「そうか、こっちでは好きな名前で呼んでやる」


 *


「じゃあ、注意事項な」


「絶対に一人で行動しない」

「それ、仕事と関係ない気がするけど」

「黙ってろ暁。この世界は変態が多いんだ」

「わかってるよ」

「チューリもわかったな」

「はい」

「地球人の身体の汚染物を魔石に変えたら、それにさわることで自分の魔力を増やすことができる」

「魔力は持っていないよ」

「元の世界ではね。こっちに召喚された時に女神様からもらってるから後で練習してみよう」

「本当! 嬉しい」

 チューリは飛び上がりそうなくらい喜んでいる。

 ここに来る前は奴隷だからな。


「まあ、あんまり期待するな。魔法と言ってもこの世界を浄化するためのスキルだから」

「わかった」


「吸収できない魔石は、ギルト長に預けることができる。ただしパーティを組んだ時は均等に山分けな」

「はい」

「汚染場所を見つけたら、近づかないで逃げること」

「はい」

 神妙な顔でチューリは一つ一つの注意事項に深く頷く。


「そう緊張するな。被爆しないかぎり俺たちは死なないし、万が一の時はギルトに治癒魔法を使う人間がいる」

「私にもそんな高価な治療をしてもらえるの?」

「もちろんだ。基本治癒魔法で治せるのは異世界人だけだから、地球人を治すことはできない」


「そうなんだ」

「春になれば温室でチューリップを探してあげるね」

「はい」

 だいぶ元気に返事ができるようになったな。

 俺はチューリの手を引いて、第5エリアの住人が待っている隣の部屋に向かう。

 体内の汚染を魔石に変える練習台になってくれるのだ。


「お久しぶりです。須藤さん」

「おう、涼。待たせるなよ。早くしてくれ」

 須藤さんは地下道と繋がった大通駅第5エリアの人だ。

 異世界人と地球人との仲介役をやっていて、新しい異世界人の戸籍を管理している市役所人でもある。


「戸籍?」

 チューリが首をかしげる。

「ああ、チューリがどこの所属で、どこに住んでいるかとかを調べて書いている人だよ」

「あと、新人の練習台ね」今にも倒れそうな顔をして、須藤さんは暁にパンチを見舞わせた。

「さっさとやってくれ」

「あ、すみません。さあ、チュウーリ。須藤さんに軽く触れて汚染物質を魔石に変えてみて」

「はい」

 チューリは須藤さんの手の上にそっと自分の手を重ねた。


「うーん。全然ダメ。もう限界」

 その言葉と同時に、須藤さんは、ゴッボっとどす黒い血を吐いて、膝をついた。


「須藤さん」

 慌てて手をとり、汚染物質を魔石に変える。


「ごめんなさい。私、ちゃんと見えたのにうまくできなくて」

 チューリは震える声を絞り出した。


「初めはうまくいかなくても仕方ないよ……ん?」

 ちゃんと見えた?


「チューリ、見えるって何が見えるんだ?」

「えっと、涼君が持っている魔石と同じ色のもや」

「それが本当なら……すごい」

 俺はいろんな可能性が頭をよぎり、興奮気味にチューリの手をとり部屋を出た。


「おい、涼。どうしたってんだ?」

「ついてきて」

 俺は1階への階段を急いで駆け上った。


「チューリ、須藤さんに見えたのが、外にも見えるか?」

「うん、木とか地面付近が濃くて、水たまりが一番濃い色してる」

「須藤さん、ちょっと外に出てきて」

「まったく。せっかく除去してもらったのに」

「いいから早く!」

「わかったよ」としぶしぶ、須藤さんは外に歩いて行った。


「あ、あの人の周りが綺麗になっていく……その代わりあの人自身の中に溜まっていってるけど」

「正解。凄いぞチューリ」

「どういう事だ?」

 ふらふらと、須藤さんがビルの中に入ってきて俺に抱き付く。


「ご苦労様。どうやら、チューリは浄化の力は弱いけど、汚染物質が見えるみたいなんですよ」

「なるほど、今までと違うタイプだな」

 須藤さんも血を吐きながらまじまじとチューリを見た。


「それってすごくない? 異世界人の俺達も防護服や結界なしで外を歩けるってこと?」

「暁、それだけじゃない。汚染されたところがわかれば、集中的に除去できるし何より、畑の汚染れを食止められる」

 須藤さんは元気になったのか、チューリの両脇をもって持ち上げるとくるくると一緒に回った。

 この人のこんなにうれしそうな顔は始めて見たな。


「はしゃぎすぎじゃない?」

 暁にまで言われるようじゃあ相当だな。


「よし、早速ファクトリーまで行くか」

「今から?」

「善は急げだ。それでなくても雨漏りが心配だったんだ」

 須藤さんは振り回していたチューリを前に抱っこしてにこにこと自転車を指さした。


 チャリで10分。

 俺たちは地下鉄を通ってバスセンター前駅まで行き、地上に汚染後作られた連絡通路でファクトリーまで向かった。

 ちなみに、地下鉄は当然使われておらず、線路の上を板でふさいで歩行できるようにしてある。


「チューリ大丈夫か?」

「うん、楽しかった」

 暗い洞穴というのは全く問題はないだろうけど、さすがにチャリにはビビってるかと思いきや、とっても楽しそうだ。

 須藤さんの方がぐったりしている。


 地下鉄は思いのほか水が溜まりやすく、排水しても汚染が残る。

 俺達が一緒なので、チューリが汚染個所を特定するたびに、除去してくれていたので、体力を消耗したのだろう。


「少し休んでから行きますか?」

「いや、俺は大丈夫だ。それより彼女の力は本物だよ。早く畑の汚染をチェックしてもらわないと」


 俺たちは、昔商業施設だったサッポロファクトリーに急いだ。


 レンガつくりの巨大な建物につくと、入り口のシャッターに須藤さんが小さなカードをかざす。

 ガラガラとおりのようなシャッターが開き、ドアノブの上のボタンを押すと自動で開いた。


「魔法を使えるの?」

「いや、地球人は魔法を使えないんだ」

「自動ドアっていうんだぞ。自動の階段とか珍しいものがいっぱいだ」

「自動階段じゃない、エスカレーターな。でも、それは電気がないと動かない。自家発電もあるが出来るだけ温存の方針だから必要最低限のものしか使わない。ここだとセキュリティーと畑関係だけだな」

 へー、とチューリは頷いているが、たぶん八割がたわかっていないだろう。


「この建物の外に畑があるの?」

「いや、この建物の中にあるんだ」

「温室?」

「まあそんなもんだ」


 須藤さんはそんなもんといったけれど、俺たちの世界の温室とは規模が違った。


「すごい。本当に畑が建物の中にある」

「ほんと驚きだよね。こんなお城みたいに広い屋内に畑とか」

「あの、水はどうやって撒くんですか?」

「スプリンクラーを改良した。」

「スプリンクラー?」

「ほら、天井にパイプが何個もあるだろ。本来は火事の時地下から水を組み上げて消すものなんだけど」

「雨水じゃないんですね」

「雨水も汚染されてるからね。あ、ダムもダメだからこっちの世界では、そこら辺の水は飲んじゃダメだよ」


 それから俺たちは、建物内の水漏れと汚染を点検した後。山もりのトマトとジャガイモをもらって帰ることにした。



「涼、ちょっといいか。あとで柏さんにも言うけど、最近妙な動きがあってな」

 須藤さんは暁とチューリに聞こえないように小声で話した。


「妙な動き?」

「ああ、白石区の方……第2エリアで魔石の取り扱いについて問題になてる」

「魔石をもっと寄こせってことですか?」

「簡単に言えば。実際に汚染を身体に取り込んで死ぬ思いをしているのはこっちの人間だからな」

 確かに、血を吐きながら汚染物質を取り込んでも、雨が降ればまた振り出しだ。異世界人にもっていかれるのでは文句も言いたくなる。

 しかも、魔石自体にも車に乗せて走れば浄化の効果があるので、欲しいと思う人間はいっぱいいる。

 今は、転移者の魔力を上げれば、汚染された人間を多く浄化できるのでそちらを優先させているだけなのだ。


「強硬手段には出ないとは思うが、あっちの方は医療関係者が多いから。魔石の解明をしたいと思う人間も多くいる」

「わかりました。個人行動は避けるように気を付けます」

「おう。頼んだ」



 *


「柏さんの話って何だと思う?」

 暁が缶詰のパンを頬張りながら呑気に聞いて来た。

 缶詰のパンはなんと3年ももつらしい。

 偉大だ。


 地下通路にはいたるところに非常食が常備されているので、生活に困ることはない。

 飲料水も、ペットボトルに入ったものなら、汚染されている心配もないというし、正直、外に自由に出られないこと以外ここでの生活は天国だ。


 転移者も定期的に召喚されてくるし、はっきり言ってこのまま地球人がいなくなっても同情できない。

 こんな素晴らしい生活を送っているのに、戦争で空気を汚染するだなんて自業自得だ。

 女神が怒るのも無理はない。


 しかも、その女神の慈悲である俺達に文句があるなんて、学習しない奴らだ。



「どうやら、警察が動きを見せたらしい」

 ?

 どうせ、柏さんの話もこの前、須藤さんが言っていた第二エリアの奴らのことだろうと思っていたのに、ケイサツまで動きだてるとなると、厄介だな。


「ケイサツの奴らがどうかしたの? 最近態度が何だかよそよそしいと思ってたけど」

 暁はこちらの人間と割と垣根を作らずに話をするので、街の治安を任されているケイサツとも顔見知りが多い。


「どうやら本格的に政治家が俺達を管理下に置きたいらしい」

「セイジカってジエイタイの基地に引きこもって指図してくる奴か?」

「まあ、今まで口出ししてこなかったのが不気味なくらいだったんだが」

「具体的に俺達をどうしたいんだろう。人間の浄化も全然人手が足りていないのに」

「たぶん、魔石の配分だろうな。現状は俺達の魔力増強の残りを人間に分けているんだが、すべてを管理したのかもしれない」

「そんな、浄化をしなくて困るのは人間でしょ。俺達に強制できないはずだ」

 こちらは勝手に自分たちの世界から召喚されて、こんな汚染された地球の浄化を手伝っているというのに。


「まあな。でも、理詰めで説得されれば反論するのは難しいだろうし、力で責められたら俺達には勝つすべがない」

「それが狙いですね。俺達が魔力を増強して、浄化や治癒の力以外の魔法を使えるようになる前に従わせたいんだ」

 この世界の人間はどこまでいっても反省をすることはできないのかもしれない。


「自由だって思ったのにな」

 しょんぼりと暁が項垂れる。


「奴隷じゃなくったって、この世界に自由なんてない」

 俺の言葉にチューリが服の裾をぎゅっと掴んで「奴隷は考えることすら許されなかった」と言った。


「そうだな。考えよう」

 チューリの手を優しく包んで反省する。

 鞭を打たれながら、考えるのをやめることしかできなかった頃とは違う。


 俺たちの未来のために、自ら選択しよう。

 

                    了

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悪戯な女神の慈悲で現代に召喚。奴隷からの下克上転生 彩理 @Tukimiusagi

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