第18話 エピローグ
そして、数日が立った。フルーツチョコレートもホワイトチョコレートも中々の好評であり、ティータイムは客足が絶えないでいる。
夕方になりいつものように落ち着いてきた時の事だった。楽しそうな話し声と共に来客がやってきた。
「ほら、この時間なら、空いてるって言ったでしょー」
「本当だ。アリスちゃんの言う通りだね」
「あー、ジュデッカ様もいる。やっぱりかっこいいよ!!」
アリスさんが楽しそうな笑顔を浮かべて二人の同年代の少女を連れてきたのだ。せっかくだからと私が注文を取りに行こうとすると、アリスさんの方からこちらにやってきてくれた。
「リンネ様、ありがとうございます。ちょっと勇気を出したら一緒に出掛けてくれる人ができたんです!!」
「よかったですね、これもアリスさんが勇気を出したのと、チョコレートの力ですね」
私の言葉に彼女は首をふって、どこか熱い視線で私を見つめる。
「いいえ、私は尊敬するリンネ様が言ってくれたから信じることができたんです。だからリンネ様とチョコレートがすごいんですよ!! それで……一つ質問をよろしいでしょうか?」
「ええ、なんでしょうか?」
どんな質問だろうと少し警戒しながらも問い返すとなぜか顔を赤めている。その姿はとても可愛らしくて、ああ、確かに私が男だったら彼女に惚れてしまうかもしれないなと思うほどだった。
「その……リンネ様はジュデッカ様とお付き合いをしているのですか?」
「え……? もちろん付き合っていないですよ」
「そうなんですね、良かったです!! 今度は一人でお邪魔しますね、お暇なときははなしかけてもいいでしょうか?」
「別に構わないけど……」
あれ? これはまだ破滅フラグが……と思っていると、アリスさんは可愛らしい笑みを浮かべた後にジュデッカの方に駆け寄って何かを耳元で囁いた。彼は「ライバルだと……」みたいな言葉が呟いて、ぎょっとした顔で私とアリスさんを交互に見つめた。
まあ、よくわからないけどみんな幸せそうでなによりである。そうして、チョコレートのおかげでまた一つの笑顔が守られたのだった。
異世界転生をして、チョコレート屋さんを開いて、一か月がたった。定期的に両親がジュデッカとの関係を聞いてくるが彼とはただの友人である。
だけど、彼もチョコレートを愛してくれているからか、最近は商品として出せるものをつくれるようになってきた。このままこっちの人たちにももっとチョコレートが広まればな……そんな事を思いながら私はチョコレートを齧る。
「うん、美味しい」
「お嬢様、大変です!!」
私が幸せな気分に浸っていると、ノエルが息を切らしてやってきた。
「ちょっと、ノエル、大丈夫なの? お水飲む?」
「そんなことよりも、お嬢様これを見てください、旦那様からです。なんと、お城の王子様の誕生パーティーにチョコレートを出したいっていう依頼ですよ!!」
「え? 本当なの?」
私がノエルから手紙を受け取り目を通す。どうやら、父や、他の貴族からチョコレートの話を聞いた第三王子が是非とも食べたいとの事で私にとっておきのチョコレートをつくってくれと依頼をしてようだ。
「これは……チャンスね」
「はい!! お嬢様の社交界での評判を上げるチャンスです。それに第三王子はいまだに婚約者もいないとの事ですよ。これはもしかしていい機会かもしれません」
「そうね!! 一気にチョコレートの知名度を上げるチャンスね!!」
「いや、そうじゃなくてですね……」
なぜか頭を抱えるノエルを余所に私は今日もチョコレート作りに精をだすのだった。
---------------------------------------------
これにて完結です。
初の女性主人公を書いてみましたが難しかった。本当は普段は冒険者のフリをしている第三王子君の話も考えていたんですが、文字数的に厳しかった。
楽しんでいただけたら何よりです。
おもしろかったって思ったら星や感想を頂けるとうれしいですーー
将来婚約破棄される悪役令嬢に転生したけど、恋愛とかどうでもいいからチョコレートが食べたいので、異世界唯一のショコラティエになる事にした 高野 ケイ @zerosaki1011
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます