異世界無双後のテンプレはスローライフだけど私はそんなことない。

COOLKID

やはり人というものは未知なる存在に憧れ、また夢を抱くものである。それはどんな頭のイカれたヤツでも適応される。

第1話 実力の伴っているバカほど怖いものはない。

「戻って、きた?」


知らない天井なんかではない。ベットの横の窓から差し込んだ光が、天井に反射して眩しく映る。

少し目線を横にやると、新品の木目につけられたLEDライトが見える。あのおっきい円盤みたいなやつ。太陽光のせいでついているかどうか分からないが、きっと消えているんだろう。寝る前には電気を消すタイプだから。


ノソリ、と体を起こすと眼の前の景色は広がりを見せ、奥行きのある五畳の部屋が映る。

この家に越してきて新調した勉強机と、新しく編入する高校の教科書が詰まった本棚。白いひもで纏めてあるダンボールと、まだ未開封のダンボール箱がチラホラ。

開けっ放しの箱には…ゲーム?ああ、話題だったシューティングゲームだ。

足にプチプチが巻かれている机の上には、高校生活のお祝いに親戚から買ってもらったスマホが、真っ黒な画面を映し出している。


この部屋に来て時間的には3日くらい。でも、この風景が今までどれほど見たかった景色だろうか。


俺は、勢いよく伸びをする。

思いっきり。声をお腹から出してやろう。

近所迷惑なんか、糞食らえだ。世界に轟かせてやろう。


「ん〜〜〜〜〜ああっ!もどってきたぁ〜〜!!」


ようやく。この世界に戻ってきたんだって。


すぅ~っ


yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeees!!!!

Let's gooooooooooooooooooo!!!!


______________________________________


三十分くらい経っただろうか。

無事に二度寝をかました俺はもう一度ムクリと起き上がる。布団がぬくぬく過ぎてまた寝そうだけど、鋼の精神力でなんとか立ち上がる。そういえば布団から出たくない的な曲もあったっけなんて思い出しながら。


ん゛〜〜〜…二度寝のお陰かスッキリだ。

さっき見たのと変わってない部屋。うん、やっぱりサイコーだ。

なんてこと無いこの一瞬が、どれだけかけがえが無いものかがこの景色から身にしみて分かる。


まぁ、それはそれとして。

窓の白いカーテンを開け放す。窓もぶっ壊すくらいに勢いよく開けて、大きく息を吸い込んで…


「すぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜ふぃ〜〜〜」


なんだろう。こういう日常系の映画のワンシーンのときには空気が美味しいっていうもんだけどさ。ほら、田舎に越してきた時に朝に思いっきり縁側で伸びをする、的な。いっておきます全然そんなことない。

具体的に言うと、石油と、ゴムと、土を学校給食のあの大っきい鍋みてぇなのにブチこんで、そこに電気流し込みながら水入れて使い終わった蛍光灯で混ぜ混ぜしたのを一週間くらい放置した後に嗅いだ匂いくらい。


あっちの世界は科学なんて微塵も発達してない世の中だから、大気汚染なんてものも存在しないんだよね。

初めてあっちの世界に行ったときはびっくりしたもんだ。『空気うんめっ。これで飯食えるんだけどワロタ。』ってさ。

こんなに臭かったんだ…この世界。なんかフクザツ。


まぁ、ここ大がつくほど都会だし。新築ばっか乱立してる住宅街だし。空気が一段と汚れててもしょうがないね。

でもそんなことはどうでもいい。俺は窓から身を乗り出す。


いや〜!これだよこれ!この家しかないだだっ広い景色!狭苦しくて、効率を追い求め続けた人間の不自由性を象徴する遺物である都会のはずなのに、妙に開放感のあるこの眺め!!

いたるところに電柱が規則的にぶっ刺さってたり、車がブオンブオン唸ってたり、そのくせ緑はちょこちょこあったり…

くぅ〜!目が染みるぅ!色がありすぎてチカチカするぅ!

ってかこれ光化学スモッグかい!まだおんのかよおいお前!でも今となっては愛い奴じゃのぉ…


『あ〜の〜。私をいつまで待たせる気?あんたが二度寝かましてからこっちはず〜っと待ってるんですけど。もっしもーし、(頭)大丈夫ですかぁ?』

「俺の最っ高に感動モノの帰郷シーンを壊すなや。」


調子に乗っていると、何やら不機嫌そうな声が。

横を向いてみると、そこには…美を体現したかのような、女神がいた。

言うなれば、まるでミロのヴィーナス。いやそれすら超えるであろう美麗な肢体。これこそが黄金比であると見せつけるようだ。

その体は輝くような白い布で隠され、何もしていなくても扇情的なはためきを見せる。

俺に向ける、うんざりとしたような眼差しは金色に輝き。薄汚い風に流れる龍のたてがみのように長い金の髪が俺の目をくらませる。その二つが、いやその二つだけで、その身の神聖さが目に見えて表れているようである。


とまぁ長々と説明しましたが。このすんごいきれーな人。俺にしか見えないんですけど。


『うっさい。こっちまで私を連れてきたのはあんたでしょ。。』

「へいへい。」

『ほ〜〜〜おおおおおぅ。』

「そこの与作。ちょっちうるさい。」


…それにこいつ、何も考えてないように見えてやっぱりなにか考えてる感じのミステリアス少女(自称)なので、普段はこんな感じ。

だから、俺みたいな陰キャでも平然とノリツッコミが出来るんですね。


しっかしあ〜あ。あと二時間くらいはこのまま感傷に浸ってたかったんだけど…まいいか。

このフヨフヨしてる半透明生命体(?)が一生俺の周りを動きながら話しかけてくるし。


俺はベッドから降り、立ち上がる。ミシッっと嫌な音がした。

…もう土と、石と、死骸しか踏んでこなかった足からは、おさらばだね。


俺は、棚に備え付けの全身鏡の前に立つ。

…髪長っ。前見えへんがな。後で切ろ。

髪をかきあげて…うん。身長も、体重も、元通りって感じだな。見た目?知らんな。

元通りってのは変か…見た目は変わってないけど中身は変わってるから、元通りじゃないのか?いやそもそも、今の俺のってどうなってるんだ?

ちょっとジャンプして試してみますか。


膝をほんのちょぅっと曲げて…せーのっ!!


ヴァヒュンッ!!!


バギャッッ!!!!



…暗い…


足ブラーンブラーン…


「なるほど把握。」

『何してんの?』


_____________天井修復中___________________


「さて状況整理しようか。まず自己紹介から…」

『何?…えほんとに何??ジャンプして天井ぶち抜いた挙げ句…え何???』

「引くなよ…いや、これは俺が本当にに行ってたかどうかの確認のためだよ。あの異世界が現実だったら、俺は異世界帰りのヤベーやつ。夢だったら、いつの間にかエッグイ身体能力を3日寝てる間に発現させて尚且つ意味分からん女の霊的ななんかが見えてるヤベーやつ。そのどっちかの確認をしたいだけ。」

『あ〜の、何を言ってるのか本当に理解できないんですが。どっちにしろヤベーやつだから確認する必要ないやん。』

「自分の脈絡なさすぎクソワロタァ!こ〜れ久々の会話で口が冷凍されてますわ。」

『う〜ん…なんでこんな奴私選んじゃったんだろ。』

「こっちが聞きてぇよ。」


…いつもこんな調子だから、頑張ってついてきてね?

さて、一旦俺という自分を振り返るとしますか。

心機一転日常生活頑張るぞって気持ちも込めてね!…ね?


______________________________________


俺の名前は、川上類。

どこにでもいるふつーの中学生。でした。

背は結構高い方。幼い頃から身長順で並ばせられた時にいっつも後ろから3番目くらいまでは確実にいた。体重は…普通?この高身長だったら60キロ台は痩せてるのか?もちょっと飯増やそかな?

顔は、普通よりちょっと良いかな?ってくらい。でも、中学生の時は前髪伸ばしてメガネ君で、背筋丸っこくしてたから皆にはキモがられた記憶がある。なんでこんな格好してたのかは思い出せないけど。

まぁ見た目だけじゃなくて、厨二病だったのも、そう思われるきっかけになってると思う。むしろ大部分がそれでは?

闇の中に生きてた所以か、性格も結構面倒くさがりで神経質だった。基本的な立ち回りとしては、周りの意見に反せず、従順に従って、バチコリ陰キャ。

でも流石にそれは…って成長して気づいたのか、高校生になって心機一転。学校も親に無理言って変えさせてもらい、拠点を移し、伸びた黒い髪を切り、眼鏡も外してコンタクト。ネットの情報を頑張って集めて背筋も伸ばして。(厨二病は発症してます。)今思うとだいぶ行動力あるな俺。

いざ!ビバ!高校生活!って時にきた異世界転移のお陰で出鼻を挫かれた可哀想な男の子。

異世界で25年っていうクソみてぇな人生を終えた後、元の世界に戻って来たら。

怪物たちの返り血で紅く染まった髪の毛と(染み付きすぎて地毛になりました。)、赤褐色の目が、何故かついて来てました。←イマココ

______________________________________


『はいありがとー。容姿も記憶もひねくれてる性格も全部完全一致。』

「おkおk。それではそっちの自己紹介どうぞ。」

『神。的な?』

「わーパチパチヒューヒュー。すごいね〜いやほんとにすごいからその手に渦巻いてる膨大なエネルギーをしまおうねあぶないからつかなんで怒っとるんじゃこいつは」


やめよ?ブラックホール平然と手から出してくんの。

俺が対処しなかったら、この星数秒で宇宙の塵になってますからね?


『…で?どうなの?覚えてんの。』

「まあ覚えてるけど。」

『…こんなことしなくても自分の魔力云々で分かるでしょ。』

「言うな。感じろ。」

『は?』

「さーせんした」


…どっちも思考回路に関してはどうしようもないけど。記憶の方は大丈夫そうだ。

コイツと気軽に、そしてなんも考えること無く、脳死で会話できてるだけで、確認はバッチシだ。

俺は、間違いなくとして、この世界にいる。


ようやく。肩の荷が降りた。

俺は、ふぅ、と息を吐く。

…こことは違う俺の人生を送ってきた感想として、クソッタレという言葉を贈りたい。それくらいあっちの世界は酷いもんだった。

どう酷いかは、今は思い出したくないのでやめよう。


この呪縛から解き放たれた、今のこの、開放感。



…さて。干渉に浸ったところで、そろそろ自分の未来のことについて考えるとしますか。

また俺が脳内世界にトリップしたから、顔を膨らませながらそれが終わるのを待っているこの神的うんたらもいることだしね。


「よし、作戦会議を開始しよう。」

『らっじゃ。』

「現状を説明せよ。隊員。」

『私達は異世界から何の代償もなくこちらにチョチョイとこれた。むしろアドばっか持ってこれた。お陰で強さも知恵も、魔法も、力も、経験も…全部頭の中や体の中に入ってる。私はさておいてあんたは力を常時出せるわけだから…普通の生活を送ろうとしても多分ボロが出る。それでもあんたは…あの世界から抜け出して、この平和な世界で生きようと私に言った。という感じであります。』

「うむ。ご苦労。では、俺の今後、というか今生の目標について話したいと思います。」

『ん。』

「それは…『いい感じに義賊っぽい事して世直ししてそこそこ有名になりつつそのニュースについて学校でざわざわしてるとこを見ながらほくそ笑みたい!』です。」

『ほぉ?』

「世の中は『大・未知なるものかっこいいorかわいい』時代!Vtuber、転生モノ、顔出しなしのフォロワー53万人絵師!ありとあらゆるところに未知は存在する!そのどれもがかっこいいしかわいい!(?)ということで俺もこの風潮に便乗し!(?)颯爽と事件を解決し颯爽と去る強キャラムーヴをかまし(?)この有り余る承認欲求を、夏場の小学校のドチャクソちべたいプールのように満たしたいのだぁ!(?????????)」

『うーん、厨二病ここにきて別ベクトルにこじれたなぁ…。』

「っつー訳で、力を貸してくれないか?オル。この僕の有り余る…この心を蝕む厄災自己顕示欲を抑えるために!OK?」

『OK!(ガッシと両手で手を掴む)』


どんな世界であっても。大きな事象の前触れは、思考回路に許容できる電圧を超えた衝撃が突き刺さる事によって起こるのだ…多分。


______________________________________


ども。COOLKIDです。

更新遅かったり、やる気なかったりで有名な僕ですが。

なんとかやる気出始めました。用事があったりとかしなけりゃ多分週2〜3回は更新します。

用事あったら週一っすね。

(とりあえず自分が見返して)おもろい作品なので是非見てってね。


追記:加筆する度に頭のおかしくなることを言い出す作品です。

筋書きはあるけどそんな考察要素とか無いから、それこそ脳死で見てね!


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