第3話 生活リハビリの視点で

  介助にて〈思いやり〉とふ巧言の裏に効率化の見え隠れせり


 …と、思わず憎まれ口で一首。


 ゆっくりなら歩ける高齢者を「思いやりです」と車椅子に乗せて食堂へ連れていく。

「転倒されたら困る」の心配もあるのだろう。


 ゆったりと食べているのに「思いやりです」と食事介助をしてしまう。


 慢性的な人手不足で多忙な業務の効率化が必要なのは、老医としても十分承知しているのだが……。


 介護老人保健施設(ろうけん)とは?


「介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師による医学的管理のもと、看護・介護によるケア、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、さらに食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設」とされてきた。


 実際に自宅復帰できたのは何人だったか?


「本音と建前の間でリハビリ行為自体が目的化している」とは暴言だろうか。

 ……なんとももどかしい。


 しかし現実には「家庭復帰が困難だから入所した」という事情があった。


 診察室のドアを開けると、スタッフの元気な掛け声にうながされて一生懸命にリハビリをする入所者の姿が見られる。

「生活行為に優る訓練なし」と聞くが、いっそのこと「施設での生活リハビリ」に意識転換してはどうだろう。

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