学校の機関部

 地下への入口をくぐると機関部へと伸びる階段が待ち受けていた。緩やかな傾斜、デコボコの階段がずーっと奥へと続いている。壁には曲がりくねったパイプやおびただしい数の歯車が複雑に配置されていて、忙しそうに動いている。

 

 カシャカシャ……ガコン。

 

 カシャカシャ……シュー。

 

 天井にはむき出しの電線が張り巡らされていて、そこに裸電球が灯っている。

 

 とにかくまずはオルゴールを探さなくちゃ。

 

 壁に張り巡らされたパイプの中に、真鍮のピカピカの管があった。それは街中にあるラッパみたいな、蓄音機の先端みたいな、狂ったメロディーを放送する管と同じ色だった。耳をくっつけてみると間違いなくあの狂ったメロディーが聞こえてくる。

 

 きっとこれを辿れば音の元凶にたどり着けるよね?

 

 そう心のなかでつぶやいて美空は真鍮の管を辿っていった。途中、通路から外れて狭い隙間を這って進む場面もあったし、真っ暗な中、音を頼りに進む場面もあった。

 

 だけどなにより辛いのはどんどん大きくなるオルゴールの音。もう頭はグラグラするし、目眩はするし、吐き気は止まらないし……

 

 そうこうするうちにとうとうオルゴール? と思しきものが安置された場所にたどり着いた。間違いなくそこからピッチの狂った気持ちの悪いメロディーが流れてる!

 

 それは巨大なオルゴール。だけどなんだか不思議な形をしている。まるで何かの生き物みたい……

 

 美空は耳を押さえてその巨大なオルゴールに近づいた。いったい何がどうなってこんなに不気味で狂った音になってるんだろう?

 

 巨大なドラムがぐるぐる回って、金属の板を弾いていた。その度に気が狂いそうな巨大な音を、オルゴールは奏でている。その音はオルゴールに向かって、四方八方から伸ばされた真鍮の管に吸い込まれていった。

 

 やっぱりこの管で街中に音を届けてるのね。

 

 目を凝らしてよく見るとオルゴールの命とも言える金属板が赤黒い油のようなもので汚れている。こんなのがべっとり付いてたら、振動がおかしなことになって音が変になるのも無理がない。

 

 いったい管理の人達は何をやってるんだろう?

 

 美空はそう言うと近くにあった掃除箱からモップを取り出して金属板を磨き始めた。

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