第28話

良太は、久しぶりに実家に帰っていた。

たまには顔を出せと親に言われたので

仕方なく帰省する事にしたのだ。


だが、実家に帰っても

結局やることがなかったので

近所を散歩する事にしたのだ。


久しぶりに帰った為

変わってしまった場所もあったり

全く変わらない場所もあった。


懐かしみながら歩いていると

後ろから声を掛けられた。


「良太?」


名前を呼ばれて振り向くと

そこには、

女性が立っていた。


美人だが、いかにも

気の強そうな人だった。

良太は顔に見覚えがなかった為、


「俺ですか?」


と、聞き返してしまった。


「あなた熊谷良太よね?」


良太の名前だったので


「そうですけど?」


と、知り合いにいたか

必死に考えながら答えた。

するとその女性は、


「私よ!優!

峯島優だよ!」


と、言ってきたのだ。


良太は一瞬、誰だかわからなかったが、

思い出し途端に汗が止まらなくなった。

その女性は

2番目の彼女だった優だったのだ。


思い出した良太は、すぐに


「あの時はすいませんでした!

俺が悪かったです!

申し訳ありません!!!」


と、謝る事にした。

今の良太は、自分も悪かった事を理解しているし

自分の事ばかり守ろうとしていた事もわかる。

逃げてしまった事もあり

謝らなければと思ったのだ。


「どうしたの急に?

なんで良太が謝るのよ?」


優が聞いてきたので、

良太は


「あの時は自分の事ばかり考えていました。

慎重になり過ぎて

峯島さんに気持ちも考えずに

付き合ってるとも言えない関係のまま

怒鳴ってしまったし

翔くん?にも申し訳なかったと思いまして。」


と、伝えた。

すると優は、


「確かに付き合ってのかなって思ったね!

私も初めての彼氏だったから

どうしたらいいかもよくわからなかったし、

あの時はあれが正解だって思ってたから

別れるって言われて気が動転してちゃった!

今考えると私の行動も相当やばかったしね!

でもあの後すぐに、

翔くんが励ましてくれたし

本当の気持ちに気付いたから

それを伝えたくて途中からは

連絡もつかないから

会いに行ってたんだけど

全く会えないままいなくなってたから

もういっかってなってたんだ!

だから気にしなくていいよ!

なんなら私こそごめんね!?」


と、全く印象の違う優になっていた。

良太が戸惑っていると


「あの後すぐに、翔くんと付き合ったんだ!

良太の事を好きって思ってたんだけど

初めての彼氏って事で

舞い上がってただけだったみたい!

ごめんね!?

でも良太も悪いんだよ?

デートとか行ってれば違かったかもね!」


良太は、困惑していると

優はさらに


「今だから言うけど

翔くんといつも二人で

エッチな小説ばっかり読んでたんだ!

あの時は、良太に言うのが恥ずかしくて

言えなかったから

小説読んでるってしか

言わなかったけど、

本当は、官能小説が大好きで

表紙を隠して読んでたの!

だからあの時も、

ちょうど寝取られカップルの小説を読んでいたから

試してみようってなっちゃってさ!

今思えば良太はヘタレなだけってわかるから

ありえないんだけどね!

翔くんもいつも小説を読んでいて

たまたま本を落とした時に見ちゃったの!

私と同じ本を読んでるって!

そこから仲良くなったんだけどね!

最初から翔くんと

付き合ってればよかったんだけど

あの時は、

普通の恋愛に憧れてたのかもしれない!

良太には悪いけど

良太のお陰で翔くんとの仲も深まったから

お礼を言いたいくらいだよ!!!

だから逆ごめんね!

そしてありがとう!!!

でもあの時は、私も付き合っていながら

浮気してしまってごめんなさい。

良太を傷つけたのは事実だから

そこは気にしていたの。」


良太は、なんとも言えない気持ちになったが

これはこれで優が幸せになったのであれば

いい事なんだと思う事にした。


「あっでも今は寝取られとか

そんな事考えてないよ!

二人で良太を思い出してプレイすると

興奮するからそれで充分!!!

だから良太には感謝してるよ!!!」


印象が変わり過ぎて良太は対応出来ない。


「結構官能小説好きな人っていてさ!

話せる人もできてきたら

恥ずかしくもないんだって思って

気にしない事にしたんだ!

そしたら吹っ切れて

なんでも話せるようになったんだ!

でも、良太が謝ってきたから

話しただけで

普段からこんな話ばっかりはしないからね?

勘違いしないでよ。」


と、言われ顔に出ていた事に気づいた。


良太は、優が幸せになっていた事には

ほっとしていたのだ。



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