第27話

良太もあれから良い事を意識する様になり

ゴミなども気付いたら拾うようにしていた。

これと言って良太自身には

良い事が舞い込んでくる訳ではないが

良太自身が良い事をしたなと

気分が良くなっていただけでも良いと思えた。

やらないよりは

気持ちの良い一日を送りやすくなっていたのだ。


今日も会社に向かう途中で気付いたゴミを

近くのゴミ箱に入れ気持ちよく歩いていると


「熊谷さん!ゴミ拾って歩いてるんですか?

めっちゃ偉いじゃないですか!!!

見直しましたよ!!!」


突然声をかけられた。

誰かと思い振り向くと

そこには優香が立っていたのだ。

良太は


「おお、びっくりした!

偉いなんてそんなもんでもないよ!」


と、なんて事ないように返したが

実は嬉しかった。

すると優香は、


「そんなことありますって!

なかなか出来ることじゃないですよ!

私もこれからはゴミ拾うようにします!!!」


良太と同じようにゴミを拾うように

すると言ってくれたのだ。

見てくれている人は

ちゃんといるんだと思えたし、

誇らしい気持ちにもなった。

なので良太は、


「そう言ってくれてありがとう!

俺もやってよかったって思えるよ!」


と、素直な気持ちを伝える事ができた。

良太は、


「会社この近くなの?」


優香に何気なく聞いた。

すると優香は、


「そうなんですよ!

ここからすぐのところなんです!

熊谷さんの会社も近いですよね?

前に会社帰りって偶然会ったのも

この辺のコンビニでしたよね?」


確かにすぐそこのコンビニで偶然会った。

その事を思い出し良太は、


「世間は意外と狭いもんだね!」


そう答えた。

優香は、


「一応、私のこと知り合いって

見てくれてるんですね!!!」


と、嬉しそうに言ってくれたので


「そりゃ一緒に飲んだん訳だし知り合いでしょ!」


良太も嬉しそうに答えたのだ。


会社に着くまで優香と話しながら歩いた。

優香に初めて会った時は、

全く良い印象はなかったが、

話してみるとどんどん印象が変わっていった。

友達思いで、

素直な良い子なんだという事がわかった。

ちゃんと挨拶もできるし、

悪いと思った事を謝ることも出来ていた。


良太は


「印象もちゃんと話すと変わるもんだなぁ!」


と、思いながら

優香と会社まで一緒に歩いたのだ。


会社も本当に近くて今

までよく会わなかったと思うくらいだった。

なんと、隣のビルだったのだ。

流石に優香も、


「こんなに近いとは思わなかったですね!

これで帰りも飲み奢ってもらえますね!!!」


と、調子のいい事を言っていたが、

優香になら奢ってもいいかと思えるくらい

良太も気を許し始めていた。

なので良太も


「じゃあ帰りの時間が合えば

奢ってあげるよ!

奢って貰いたいからって

わざと時間を合わせるのはなしね!」


冗談も交えて伝えた。


「奢ってもらえるなら待とうと思ったのに!」


と、残念がっていたが、


「じゃあ連絡先だけ教えときますね!」


と、連絡先を教えてくれた。

良太も素直に嬉しかった。


「じゃあ今度誘うね!

そっちも奢ってもらいたかったら連絡してね!」


良太がそう伝えると、


「じゃあすぐに連絡しますね!

高いところ予約しとかなきゃ!!!」


と、笑いながら

優香の会社が入っているビルに入って行った。

良太も嬉しそうにしながら

自分の会社のあるビルに入って行ったのだ。





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