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 「だからいったろ?」


 夜の学食で、お土産の石舟庵まめ大福を頬張りながら朧月が笑う。うれしそうだ。

 「ははやはいっへ」

 でもちょっと、さびしそうだ。

 「逗子一の大泥棒、幕引きだ」


 顔を上げる。


 ぜぶん、盗んだ。


 ほしくてしかたなくて、

 それでもこわくて、手が伸ばせなかったそれも、


 「くじらさん! くじらさん!」


 ユリちゃんの、


 …て、え? ユリちゃん? どうしたのこんな時間に? しかも、なにそのいかにも家出みたいな荷物は。


 「くじらさん、たいへんなんです!」


 ちっとも大変そうじゃないよね?


 「パパにバレて! お泊まりデート! すっごく怒るから、」


 そりゃあ怒るだろう。オレがパパでも怒るしなんなら相手をぶん殴ってる。


 「パパがくじらさんを認めるまで、家出することにしたんです! くじらさん、フツツカモノデスガ、お邪魔します!」


 ちょっと待ってユリちゃん! オレは家とかに、住んでないんだ!


 見ていた朧月が吹きだした。たまらない、みたいに。すごくうれしそうだ。


 「つぎはマイホームを、盗んでこないとな、はは!」

 「すっごい! くじらさん、おうちまで盗めるんですか! わたし、海沿い新築がいいです!」


 「〜〜〜〜〜っ」


 ユリちゃんのためなら、よろこんで!


 【③ 完】

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【🌸完結 5分読書③🐳】ぼくのかのじょのほしいもの 浩太 @umizora_5

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