3


 「ぎゃっ!」


 ひょろりが顔を覆ってうずくまった。

 弾みで拳銃が手から落ちる。反射的にそれを拾い上げて構える。


 「許せないっ!」


 え? ユリちゃんっ⁉︎


 「謝って! くじらさんに謝ってよ!」


 ユリちゃんが必死に、手に掴んだ砂をひょろりに投げつけていた。すっごいデジャブだけど、


 「くじらさんを悪くゆうなんて、許さないんだからぁ! あっちにいけ! あっちにいけ!」


 ゴッ


 鈍い音がしてひょろりがつっぷす。


 ちょっと待っていまユリちゃんなにを投げた?


 丸っこいのに一発確実に撃ち込んでから、ユリちゃんの手を掴む。


 「許せない! 許せない! 謝って!」


 ユリちゃん! もういい、もういいから!


 ユリちゃんを両腕に抱き込んで動きを封じる。


 遠くから、みうちゃんが呼んでくれたらしいパトカーのサイレンが聞こえてくる。


 「だって、」


 ユリちゃんが、わかってくれてるなら、それで、オレは、


 「だって…」


 あやすように背中をなでる。ずず、と、鼻をすする音がする。やっと興奮が冷めてきたようだ。


 あぁ、ダメだ…


 「許せないもん…」

 ユリちゃんがオレの胸に顔を埋めて泣く。


 あぁ…ダメだ…、これは…

 この子を…激しく優しくて…ついでに手ぐせの悪いこの女の子を…ほかのだれかになんて、とうてい、任せることはできない…


 『ユリちゃんには敵わないよ』


 朧月のしたり顔があたまをチラつく。ちょっと悔しいが、


 「ユリちゃん、」

 「はい、」






 「ユリちゃんのハートを、オレにください」

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