ソウルワールド

第1話:己の力を有効に使うのはいいが、争いに使うのなら排除する

ーソウルワールドー

魂と人間が共同して生活する都市。一人には必ず一つ以上の力を所有した魂が与えられる。魂の持つ力には様々な種類がある。その力をどう使うかは魂の持ち主が決めてよい。


「ソウルレスト」

午後12時にエデン皇帝がソウルワールド全体の魂の機能を停止させた。

エデン皇帝の所持している魂の数は約8000万を超す。そもそも、住民に魂を与えているのもこのエデン皇帝である。

「エデン様、最近この世界に不具合がございまして」

「不具合?」

「はい、一部の魂にレストが効いていないんです」

そもそも、住民が持っている魂はもともとエデン皇帝が持っていたためレスト(魂を一時的に休憩させ、無力にする魔法)が効かない訳がなかった。

「しかし、効かなくても無いと思うが」

「いえ、スノブレインにある銅像が破壊されました」

「んな、馬鹿な」

「夜が明けたら、確認しにスノブレインに行きましょう」

「いや、ここで確認する。ソウル解放、ソウルセット」

レストしていたはずの魂が解放され、エデン皇帝の元に集まった。エデンが天を見上げるほど魂の量は多い。

「エデン様、魂を集合させて何の意味が」

「僕の操ることの出来る魂を数える。もし、以前と数が違ったらなにかがおかしい。4321万3002番のテトラペット、僕の隣に来い」

約8000万とある魂の中から、エデン皇帝は一つの魂を呼び出した。それはテトラペットという魂。ランクS、テトラペットの所有する力は持ち主の指定したものの個数を正確に数えることが出来るというものである。

「テトラペット、俺の操ることの可能な魂の個数を教えてくれ」

「8491万4091です。ちなみに前回より72減っています」

「72も減ってるのか。協力ありがとう。ソウルディソール、ソウルレスト」

エデン皇帝は用が済むと、魂たちを解散させ、レストした。

「リト執事、夜明け後スノブレインへ行こう」


翌朝。エデン皇帝とリト執事はスノブレインへ向かおうとする。

「ループモア、スノブレインまで連れて行ってくれ」

ループモア。ランクX、ループモアの所有する力は指定場所への移動、ソウルギア(魂装備)時の能力は付近を連続で瞬間移動出来るものである。

ループモアはエデン皇帝に指示されると、巨大化し羽が生えた。リト執事も連れスノブレインへと向かった。


「ループモア、ありがと。レスト」

エデン皇帝とリト執事がループモアから降りると、幾つかの魂が窓ガラスを割っている様子が確認できた。その近くに3人の男児が笑いながらその様子を見ていた。エデン皇帝がいるとざわつく中、エデン皇帝はその男児に近づいた。

「そこの男児3人、数日前ここの銅像を壊したのは君らのソウルの仕業かい」

「いや、違います」

男児3人は笑いながら口を揃えて否定した。しかし、魂がエデン皇帝に従わない場合男児3人が嘘をついている可能性が高くなる。そのためエデン皇帝は付近の魂をレストさせた。

「付近10mでいいか、ソウルレスト」

「だめだ、お前ら逃げろ」

男児3人は付近10mであるレストの範囲外に魂を出そうとしたが間に合わなかった。案の定、男児3人の所持する魂はレストしなかった。

「ごめんなさい。確かに銅像を壊しましたが、もうしないので許してください」

男児3人は銅像を壊したことを認め謝ったが、エデン皇帝は聞く耳を持たない。

「君らのしたことは大問題だ。己の力を有効に使うのはいいが、争いに使うのなら排除する」

エデン皇帝は素早く動き、男児3人の所持する魂を手に取った。しかし、エデン皇帝は違和感を感じた。それもそのはず、エデン皇帝の手のひらは火傷していたからだ。

「危なっかしいな。ソウルギア、フレイヤ」

フレイヤ。ランクSSS、フレイヤの所有する力はソウルギア時のみに限り、火の耐性が付き火傷などを負わなくなる。このソウルのソウルギアは、エデン皇帝、消防隊しか出来ない。

そして、ふたたび男児3人の所持する魂を手に取った。

「ソウルブレイク」

エデン皇帝は手を握りしめた。その瞬間、パリンという音とともに魂が砕け散った。

「しかし、僕の渡した魂には人間を火傷させる能力はないはずだよ。それに僕に従わないはずがないんだ。男児3人何をした」

さっきまでニコニコしていた男児3人は泣きながら話始めた。

「この前、スノブレインの大橋の下で取引してたんです。エデン皇帝の魂を一時的に渡してくれたら強くするって言ってて。渡して戻ってきたら凶暴になってて、でも僕たちなら操ることが出来て。だから、面白半分でスノブレインを荒らしてしまい、黙ってました」

男児3人の言ったことはエデン皇帝を悩ませる発言であった。

「だとしても、嘘をつく必要はないはずだな。スノブレインの大橋の下か…リト執事、今から移動出来るか。君ら3人の処分はそのあとだ」

「はい、大橋まではここから徒歩2分ほどでございます」

エデン皇帝はリト執事とともに、スノブレインの大橋へと向かった。


「エデン様、ここが大橋ですよ」

エデン皇帝は大橋に着いたことに気づかず通り過ぎようとしたため、リト執事が止める。

「しかし、大橋の下は川で取引をする場があるように見えないぞ」

エデン皇帝は男児3人の言っていたような取引場があるようには見えなかった。

「見る感じ川は深そうか」

エデン皇帝は1つの魂を川へ投げた、しかし魂はすぐに戻ってきた。

「何故戻ってきたのだ」

しかし、魂は震えた様子を見せた。

「エデンさん、下に無気力体となった魂がいくつもあるよ」

「なんだって…」


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