第14話 原点

鹿屋で多胡先生やみちくさの編集部の皆さんに会えたことを感謝しています。



 私は発達障害への偏見やヘイトクライムで苦しみ、人生の大半を棒に振ってきましたが、私はどんなに嫌われても、曲げない信念があります。


 人間ならば、誰でも一度くらいは『死ね』と言いたくなったり、自分自身に叫んだり、どうしようもない場合に泣きながら叫ぶときもあるかもしれません。大切なものや人を奪った人に言いたくなるときもある。しかし、その悔しさや偏見をセンシティブに昇華するのが、文学ではないでしょうか。



 実際、私以外にも発達障害への偏見で悩み、苦しんできた当事者を私は知り合いの中でも多数知っています。現代は小学生でも発達障害と診断される子が多くなり、私が子供の時以上に悩む子も多いでしょう。


 ここ数年、『ケーキの切れない非行少年たち』がベストセラーになり、発達障害=能力がない、といった誤解が広まりましたが、発達障害の概念だけでは、その見方は不十分です。

 私は12歳のときに発達障害と診断されたとき、知能指数は総合で124と診断されました。WISC―Ⅲの検査なので、一般の方が検査に用いる田中ビネー式検査よりも数値が低く出る可能性があるので、田中ビネー式検査ではだいたい144の数値です。


 最高値は言語理解が138で、言語性IQが134でした。

 田中ビネー式検査ならば、158と154という数値になります。

 しかし、私はその数値に関しては、戸惑いしかありません。

 今まで、這いつくばるような苦労を背負い込んだからです。

 高校を転科を含めて5回、高校中退、閉鎖病棟に15歳から23歳まで17回入退院を繰り返し、偏見で傷つき、今でもフラッシュバックで苦しめられている私は、どう見ても、一般的でいう、勝ち組ではないでしょう。


 当時の先生から、「良かったね。小学6年生の女の子の頭に大学院生の頭脳がのっているようなもんだよ。思春期になる前に診断が下りて」と言われました。先生は高い知能指数を持った子供は、逆に思春期になると精神的な不調をきたし、二次障害になる可能性も大いにある、とおっしゃいました。

 当時は発達障害という障害なのに、なぜ、自分の知能指数が高いと言われるのか、分かりませんでした。


  その予想は残念ながら当たりました。

  私は解離性障害と複雑性PTSDを発症し、高校を転科を含めて5回、閉鎖病棟にいながら、学校を転々としました。閉鎖病棟から学校に通いました。


  私の知り合いにも発達障害と診断された、東京大学卒の方や国立大学の准教授の方もいます。東大卒の彼もまた、うつ病などの二次障害で苦しんでいます。准教授の先生は同じように、発達障害への無理解をなくすために教育学の現場で発信されています。

 その准教授の先生は、発達障害の子に教える塾を開かれていて、高校に行けなかった私は、その准教授の先生に勉強を教えてもらいました。

 発達障害の中に境界知能や軽度知的障害の方もいるのは確かですが、その反対のタイプも多く、一人として同じタイプはいないのです。

 東大や准教授といった名前だけが独り歩きしてしまうと、誤解も多くなりますが、知能指数の数値が逆に高いと、精神的な不調や身体的な不調をきたしやすいとも言われています。

 むしろ、私自身がそんな精神的な不調で苦しんできたので、知能指数の高さだけが社会的な成功の証であったり、人間性の象徴ではなく、背負うものも大きいのだ、と心から思うのです。


参考文献になるサイトはこちら。


https://www.kaien-lab.com/contribution-miyao/


 知能指数をカミングアウトすると、誤解も生まれやすいですが、発達障害の子供たちはその診断基準を呑みこんで生きていかねばならず、普通の子供たちとは違う、苦しみがあります。


 『ケーキの切れない非行少年たち』の趣旨、境界知能の子供たちにも教育を与えねばいけない、という作者の宮口先生の主張はおおむね、賛同します。


 ただ、私のようにその誤解を押し付けられ、苦しい思いをしてきました。

 私はその後、知能検査を三回測らされ、その中で言語理解がIQ35だと新米女性心理士から笑われたことがあります。さすがに後で謝罪され、お金を払わずには済んだのですが、知能検査は非常にセンシティブであり、被験者の動揺も大きいです。


 私も好きで自分の知能指数を知ったわけじゃあありません。その知能検査の不備を人一倍知っているので、そんな思想に主張に反論するのです。


 そもそも、知能検査だったり、才能だったりとは変動が激しく、特に小説や文学は選手生命が短いスポーツ選手と違い、息が長い分野です。

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