第2話


「何を言っているんだ、おぬしは?」


「先ほど、殴られた件ですよ。」


俺がそういうと、王の額がピクリと動いた。


他にも扉にいる衛士や、王のわきにいる高官っぽい人の空気が凍ったのを感じた。


だが、だからといってここでひいては権利が失われる。


「私はあなた方に誘拐されて、そしていきなり殴られた。これに対する謝罪が欲しい。」


王の顔がゆがんでいく。空気をゆっくりと吸っているのがわかる。そして、声を上げようとするときに、隣にいる高官がそっと腕をつかんだ。


すると、お互いが目を合わせてうなずきあった。


ほう。


どうやら、相手にも理性があるようだ。ならばゴミではない。チート能力を行使しなくてよかった。


「…すまなかった」


押し殺したような声を王が発した。歯ぎしりが聞こえてくる。


「いえ、お互い不幸があったようです」


構わずそういった。


「それで、なぜ私はこの場に呼ばれたのですか?」


「それは私から説明しましょう」


隣にいた高官が話した。


「事の始まりは、10年前に遠き地のアストニアで起きた魔力災害によります」


「ああ、簡潔にお願い」


「…はい」


まとめると、魔王が発生して、それに対抗するための戦力として呼び出されたらしい。


よくある勇者召喚だな。召喚チートがある時点で何となく察していたが。


自分たちで何とかしろよとも思うが、彼らも自身の力で何とかしようとは考えているらしい。


だが、自分たちで何とかできなかった時の保険として呼んだんだとさ。自分たちで解決できないとわかってから召喚しても手遅れの可能性が高い。そんときゃ軍とか既にボロボロだろうしな。


実際、歴史によればそれで一度世界がほろびかけたらしい。


だから、魔王が出たと判断した場合は様々な国で勇者召喚が行われているという話だ。


…これ絶対魔王倒した後に勇者召喚した国同士での世界大戦始まるよな。どうするんだこれ。

まぁ、魔王によって世界が滅ぶよりかはましなのかもしれないが。


「それでは、鑑定を行います。こちらの宝玉に手をかざしてください」


そういって高官が出したのは、人の頭ほどの大きさがある水晶だ。中は虹色に輝いている。


その隣に本が並んでいる。


「手をかざして出た鑑定文字を解読して、あなたの能力を明らかにします」


鑑定文字? まぁ、古代語みたいなものか。


自分の能力はすでに分かっているが、それでもひょっとしたらまだわかっていないことが明らかになるかもしれない。


「わかりました」


素直に水晶に手をかざすと、虹の輝きがまとまって、そして何らかの絵のようなものになっていった。


それを見た高官が奇妙なものを見るような顔をして


「これはまた複雑な…」


と、つぶやいた。



「どうだ? 光剣か? それとも天魔か?」


王が高官に振り向きいった。


「少々お待ちください。解読に時間がかかりそうです」


そういって、高官は本をあちらこちらにめくった。


先ほどの王の言い方からして、能力の当たりはずれとかあるんだろうなぁ。


俺は自分の能力はかなり気に入っているが、当たりはずれは相手の基準によるしな。


…外れだと判断を下した場合、どのような扱いになるのだろうか。 まぁ、その時の反応次第では、こちらも覚悟を決めよう。


勝手に誘拐して勝手にがっかりとか、人に対する扱いとは言えないしな。


俺は鑑定を待つ間、能力の行使の準備に入った。




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異世界のゴミをリサイクルして、最強を生み出す サプライズ @Nyanta0619

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