第2話 発達障害

 息子は家のことは何もやらない。部屋は散らかすし、俺が家に帰ってから片付けさせるが、一人の時はゴミをゴミ箱に捨てない。つまり発達障害持ち。世話好きの女の人でも見つけない限りは、誰も彼の面倒なんか見たがらないだろう。しかも、発達障害は遺伝でもあるから、結婚は難しいと思う。


「ゴミ、片付けろ!」

 俺は怒鳴る。そして、ごみ袋を渡す。ここまでやって、初めて片付けられる。彼はそそくさとゴミをまとめる。しかし、ゴミがあるのが見えていないらしく、まだ落ちていたりする。


 食べた食器は置きっぱなし。家のことも手伝わせるけど、ほとんど意味がない。自分でやった方が早い。何か欲しい物があるというと、家じゅうに掃除機をかけて、部屋を片付けてと条件を出す。そうしないとやらない。


 食事はほとんどスーパーの総菜を買って食べている。または、カレーなんかを大量に作って、ご飯にかけるだけとか。息子が外に出たがらないから、外食もできない。普通に外に出れて、外食したり、塾に行ける子がうらやましい。


 もともと、妻に精神疾患的要素があって、息子に遺伝したんだと思う。妻は美人で大人しい人だった。付き合っている時は控えめで清楚な人だという印象だった。


「パパ。ゲームしようよ」

 俺が夕飯の準備のために、台所に立つと息子は言う。

「夕飯食ってからな」

 俺はゲームが好きで、それだけは一緒に楽しんでいる。しかし、時々泣きたくなる。ゲームだけは強くなって行く息子。しかし、プロゲーマーなんてほど遠い。ただのワンユーザーだけど、ランキングで1万位になったと喜んでいる。50万人中だから、すごいのだろうけど、せめて20位くらいじゃないと役に立たないだろうと思う。似たような人はたくさんいるだろう。


 こんな話をしていると、「療育に行け」と言われるだろうけど、引きこもりだから行きたがらない。発達障害でも、フリースクールやそういう場所に行けるなら、全然ましだ。


「連休、どっか行きたい」

 彼が言う。旅行は金がかかる。

「そうだな。どこがいい?」

「どこでもいいから」

 思春期で親にくっついてくる子はあまりいないだろう。こいつには俺しかいないからだ。俺も疲れ果ててて、家事をやらずにゴロゴロしたかった。


 毎日泣きたい気分になる。

 先の見えない毎日。

 神様はなぜ俺にこんな試練を与えたのかと思う。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る